還暦祝い〜60歳の作曲家たち(カフコンス第150回)2022-06-26

Hough
Liebermann
Silvestrini
Schnyder

*曲目

アムラン「子犬のワルツ、二度で」*ピアノ
Marc-André Hamelin (1961-)
The Minute waltz, in seconds (2012)

ハフ「ブリッジウォーター(ロマンティックな牧歌)」*ファゴットとピアノ
Stephen Hough (1961-)
Bridgewater: romantic idyll for bassoon and piano (2008)

リーバーマン「音楽は、優しい声が消えても」*ソプラノとピアノ
同「勿忘草」
Lowell Liebermann (1961-)
Music, when soft voices die op.127 (2014)
Forget-me-nots op.135-5 (2019)

シルヴェストリーニ「練習曲集 六つの絵」より *オーボエ
Gilles Silvestrini (1961-)
6 tableaux (1984/97)
  5. Scène de plage - ciel d'orage 海辺の風景−嵐の空(ブーダン)
  3. Boulevard des Capucines カプシーヌ通り(モネ)

シュナイダー「フルートソナタ」*フルートとピアノ
Daniel Schnyder (1961-)
Sonata for flute and piano (1998-9)
  1. "The Manhattanite" "マンハッタナイト"
  2. à travers les ondes élastiques de l'atmosphère
    大気の弾性波を通して
  3. a brasilera ブラジレラ


*出演

川北祥子(ピアノ)
江草智子(ファゴット)
柳沢亜紀(ソプラノ)
荒木良太(オーボエ)
中村淳(フルート)


*プログラムコメント

 本日のカフコンスは1961年生まれの作曲家たちの還暦をお祝いし、これからも楽しい作品を書き続けてもらえるよう長寿をお祈りしようという企画です。(なお開催を延期してきたので現在は3人が61歳ですが、元のタイトルを残しました。)

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 アムランはフランス系カナダのピアノ奏者で、超絶技巧のピアノ曲でも知られています。

 分と秒のダジャレのような「The minute waltz, in seconds」の「Minute waltz」は英語圏でのショパンの子犬のワルツの呼び名で「小さな(マイニュート)ワルツ」の意味、そして「in seconds」は「2度で」の意味です。2度は隣り合った音なので不協和音が続きますが、「子犬のワルツ」に子犬がもう1匹乱入して2匹くっついてじゃれ合っていると想像すると、可愛らしい曲に思えてきます。(川北)

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 ハフはイギリス出身、オーストラリア在住のピアノ奏者・作曲家。エッセイや小説も書く他、絵画の個展も開いており、楽譜の表紙にも彼自身の絵が使われています。

 ピアノ編曲が有名なハフですが、思いがけずファゴットの作品を見つけることができました。題名のブリッジウォーターは産業革命を支えたイギリス最初の運河で、どんな所なのか検索してみると、緑がいっぱいで、イギリスらしいレンガのかわいい家や橋があって、鴨の親子が泳いでいる、素敵な場所でした。ハフはこの近所に長く住んでいたそうで、ときにはメロディーを考えたりしながらここを散歩したのかなぁと思いました。(江草)

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 リーバーマンはニューヨーク生まれの作曲家・指揮者・ピアノ奏者です。今日は「memory」にまつわる2つの歌曲を歌います。皆さまにも幸せな記憶を思い出していただけますように。(柳沢)

「音楽は、優しい声が消えても」(P.B.シェリー)

音楽は 優しい声が消えても
記憶の中で振動する
香りは 芳しいスミレがしおれても
呼び覚まされた感覚の中に生きる

バラの花びらは 花が枯れても
愛する人のベッドに撒かれる
だからあなたの想いは あなたが去っても
愛としてまどろみ続けるだろう

「勿忘草」(G.S.ウンターメイヤー)

私たちは庭を抜け
疲れて 日曜の足を引きずりながら
長く入り組んだ小道を通り抜けた
そして思い出した おとぎ話で思い出すような
着飾った女性たち 恋人たち ムスクの香りを
私たちが驚かせた背の高いダリアは
肩をすくめて真紅の顔をそよ風へ向けた

さらに私たちは歩き続けた 威厳をもって傾き
私たちを気にも留めない 老いた木々の下を
そして ようやく(それはまるで贈り物
過去の夢から取り出された宝物のようだった)
菩提樹に囲まれた池に出た

曲線を描いた土手を埋めつくす勿忘草が
向こう岸から青い宝石のように輝いていた
そして それは好きなだけ摘めたのだ!
全部集めて両腕に抱えることもできたのだ!
でも私はほんの少しだけ摘んだ
七つの青い宝を
思い出の財産とするために

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 シルヴェストリーニはフランスの作曲家・オーボエ奏者。本日は印象派の絵画のタイトルがつけられた練習曲集「6つの絵」から2曲を演奏します。

 ブーダンは「空の王者」と呼ばれており青空と白雲の表現に長けていました。どんよりとした調性が嵐の雲、そして颯爽と流れるパッセージはその雲が形を変えながら風で流れていくようなことを表しているのかなと思います。

 「カプシーヌ通り」は人が密集して歩いている中にどこかフランスのお洒落な通りの風景を感じながら吹いてみたいと思います。この曲は循環呼吸という音を出しながら息継ぎをする特殊奏法を用いて演奏します。どこで息を吸ったかバレたくはないのですが、そんなところにも注目しながらお聞きいただければと思います。(荒木)

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 シュナイダーはチューリッヒに生まれジュリアードで学んだ作曲家・サックス奏者で、現在はマンハッタンを拠点に活動しています。ジャズ奏者でもある彼の作品は、クラシックと多種多様な音楽が融合したハイブリッド音楽と呼べるでしょう。

 「フルートソナタ」はジャズやラテンのテイストを持ちながら急緩急の3楽章のソナタの形をとり、全編ジャズ色が強い第1楽章も壮大なソナタ形式で書かれています。マンハッタナイトとは生粋のマンハッタンっ子を指すそうです。

 第2楽章の「大気の弾性波」はおそらく「音」を表すのでしょう。四分音(半音の半分の音程)やうねる音形、グリッサンドによって、音波の浮遊感を感じさせます。

 ロンド形式風の終楽章は「ブラジレラ(ブラジルの女性)」のタイトル通り、南米のリズムで楽しく一気に駆け抜けます。(中村)


*ブログ

2022-06-28 ご来場ありがとうございました
2022-06-26 還暦祝い〜60歳の作曲家たち(カフコンス第150回)
2022-06-24 20年前のシュナイダー
2022-06-22 オーボエ独奏のための絵
2022-06-20 恒例の朝の超高音
2022-06-18 ブリッジウォーター運河
2022-06-16 2匹目の子犬の乱入
2022-06-12 60歳の作曲家たち
2022-06-04 HAPPY BIRTHDAY ジル!
2022-06-01 還暦祝い!

終了したカフコンス・目次2022-05-22

*カテゴリ「終了したカフコンス」の目次です。

第150回 2022/06/26 還暦祝い〜60歳の作曲家たち
第149回 2022/05/22 民謡紀行〜バスクからスペインへ
第148回 2022/01/16 モーツァルトとシュタードラーvol.8
第147回 2021/11/07 サンサーンス没後100年に寄せて
第146回 2020/10/25 Go To カフコンス
第145回 2020/08/02 スポーツカフェ・2020TOKYO
第144回 2020/06/28 デュオのひととき〜composers offscreen
第143回 2019/12/15 アンドレ・プレヴィン・メモリアル
第142回 2019/11/17 こどものうたvol.2〜イマジネーションの世界
第141回 2019/09/15 ブラス・カフェ〜ホルンとトロンボーンの競演
第140回 2019/08/12 デュオのひととき〜真夏の夜のファゴット
第139回 2019/07/14 デュオのひととき〜初夏のクラリネット
第138回 2019/05/26 ファゴットとピアノで綴るR・E・I・W・A
第137回 2019/04/07 outside my window〜フルートとソプラノの競演
第136回 2019/02/10 こどものうたvol.1
第135回 2019/01/27 デュオのひととき~クラリネットとピアノによる東欧作品
第134回 2018/12/02 アドベント・カフェ〜クリスマスの贈り物
第133回 2018/10/07 ヴォカリーズ集vol.5〜歌詞のない歌
第132回 2018/05/27 ホルンとファゴットの競演〜イタリアの協奏曲集
第131回 2018/02/18 花のカタログ
第130回 2017/11/26 トリオのひととき〜感傷的な散歩道
第129回 2017/10/29 アコーディオンの世界〜the classical accordion in Japan
第128回 2017/08/20 ホーンテッド・カフェ〜19世紀のホラー
第127回 2017/07/09 デュオのひととき~クラリネットとピアノによる近代フランス音楽
第126回 2017/05/21 オーヴェルニュの山にて
第125回 2017/03/26 デンマークのクラリネット〜ゲーゼ生誕200年記念
第124回 2017/02/11 デュオのひととき〜春を待ちながら
第123回 2017/01/22 コンラディン・クロイツァー室内楽作品集
第122回 2016/11/27 秋の日のファゴットの溜息の...
第121回 2016/06/26 ベッリニアーナ・カフェ
第120回 2016/04/24 クラリネット・ファゴットによる二重奏vol.2
第119回 2016/02/14 チョコレートとキス
第118回 2015/11/08 フルートとファゴットの競演vol.3〜モダン編
第117回 2015/10/11 カフェコンセールの歌姫vol.7
第116回 2015/07/26 ドニゼッティアーナ・カフェ
第115回 2015/06/14 旅への誘いvol.2〜ヴァカンス
第114回 2015/04/19 フルートとファゴットの競演vol.2
第113回 2015/01/25 12周年・二度目の未年に寄せて
第112回 2014/11/23 フルートとクラリネットの競演
第111回 2014/09/21 子守歌
第110回 2014/08/10 ファゴットカフェ
第109回 2014/06/22 雨の日のカフェ~カフェコンセールの歌姫vol.6
第108回 2014/05/18 フルートカフェvol.2
第107回 2014/02/23 樹木のカタログ
第106回 2013/12/08 フルートとファゴットの競演〜ヴェルディ生誕200年記念
第105回 2013/10/20 弦楽三重奏のひととき~Les violons de l'automne
第104回 2013/09/22 デュオの楽しみ〜メンデルスゾーン兄弟の二重奏
第103回 2013/08/11 ヴォカリーズ集vol.4〜組曲とブルース
第102回 2013/06/16 ホルンとサックスの響き
第101回 2013/04/28 虫のカタログ
第100回 2013/03/20 フルート・オーボエ・クラリネット・ピアノによる四重奏
第99回 2013/02/17 ブラームスとミュールフェルト
第98回 2012/12/23 冬のトリオダンシュ
第97回 2012/11/18 物語~イベール没後50年・フランセ生誕100年記念
第96回 2012/09/09 ベートーヴェン変奏曲集
第95回 2012/08/26 ヴォカリーズ集vol.3〜ソナタと協奏曲
第94回 2012/07/15 クラリネット・ファゴット・ピアノによる18~21世紀の三重奏
第93回 2012/05/13 イギリスの三重奏
第92回 2012/04/22 花蝶風月~記念イヤーの作曲家による作品集
第91回 2012/03/25 クラリネットカフェvol.4
第90回 2012/02/19 フルートカフェ
第89回 2011/12/25 クラリネットデュオ~2つの小協奏曲
第88回 2011/11/20 「オーヴェルニュの歌」選集
第87回 2011/10/09 duo passionate〜北欧の叙情と情熱
第86回 2011/09/11 クラリネット・ファゴット・ピアノによる三重奏
第85回 2011/08/07 音で演じる「ブレーメンの音楽隊」
第84回 2011/07/10 カフェコンセールの歌姫vol.5
第83回 2011/06/19 木管五重奏のひととき〜管弦楽名曲集
第82回 2011/05/15 旅への誘い
第81回 2011/04/24 クラリネットカフェvol.3
第80回 2011/03/27 春のトリオダンシュ
第79回 2011/02/13 クラリネット・ファゴットによる二重奏~美女と野獣の対話
第78回 2011/01/23 ヴァイオリン・クラリネット・ピアノによるロシアの三重奏
第77回 2010/12/05 クラリネット・ホルン・ピアノによる三重奏~ライネッケ没後100年記念
第76回 2010/11/07 ポール・ボウルズの音楽~生誕100年記念
第75回 2010/10/10 モーツァルトとシュタードラーvol.7
第74回 2010/09/26 ナポリ楽派の音楽~A.スカルラッティ生誕350年/ペルゴレージ生誕300年記念
第73回 2010/08/22 2つの幻想小曲集~シューマン生誕200年記念
第72回 2010/06/27 カフェコンセールの歌姫vol.4
第71回 2010/04/25 ヴァイオリン・クラリネット・ピアノによるフランスの三重奏
第70回 2010/03/14 モーツァルトとシュタードラーvol.6
第69回 2010/02/28 ベートーヴェン初期作品を訪ねて
第68回 2010/01/24 カフェコンセールの歌姫vol.3
第67回 2009/11/22 ボジョレヌーボー解禁・乾杯コンサート(第20回荻窪音楽祭参加)
第66回 2009/10/12 印象派への扉
第65回 2009/09/27 歌留多カフェ~小倉百人一首による歌曲集
第64回 2009/08/09 「アメリカ」異郷の夏~アンコールシリーズvol.1
第63回 2009/07/12 クラリネット/ヴィオラ/ピアノによるブルッフ
第62回 2009/06/14 ブラームス~亡き母に寄せる三重奏
第61回 2009/05/17 オペラカフェvol.1「ラ・ボエーム」(第19回荻窪音楽祭参加)
第60回 2009/04/12 春日和~邦楽の香り
第59回 2009/03/08 チェコの三重奏~リクエストシリーズvol.1
第58回 2009/02/08 クラリネットカフェvol.2
第57回 2009/01/25 シュポアの「魔王」~没後150年記念
第56回 2008/11/24 国際カエル年記念・18世紀のカエルたち
第55回 2008/10/05 シューマン夫妻の三重奏
第54回 2008/08/17 水上の夏の夜を歌わん~ヴォカリーズ集vol.2
第53回 2008/07/20 一衣帯水~中国名歌集
第52回 2008/06/29 画家と絵画に寄せてvol.2
第51回 2008/05/18 メンデルスゾーン姉弟の三重奏(第17回荻窪音楽祭参加)
第50回 2008/04/20 サックスカフェvol.2(カフコンス50回記念)
第49回 2008/04/06 スプリングコンサート~木管五重奏のひととき
第48回 2008/03/09 音楽なんて嫌い!~ バーンスタイン声楽作品集
第47回 2008/02/17 木管五重奏meetsピアノ!
第46回 2008/01/27 ラ・ボンヌ・キュイジーヌ~お料理の音楽(カフコンス5周年記念)
第45回 2007/12/16 クリスマスコンサート~キャロルでつづる降誕物語
第44回 2007/11/25 カントルーブとオーヴェルニュの歌~カントルーブ没後50年記念(協賛:キリンMCダノンウォーターズ株式会社)
第43回 2007/10/28 女心と秋の空
第42回 2007/09/23 動物愛護週間・哀悼コンサート
第41回 2007/08/19 ブラームスの風にのせて
第40回 2007/07/29 うぐいすと薔薇~ヴォカリーズ集
第39回 2007/06/03 スペインの三重奏
第38回 2007/05/20 クロカンブッシュ~お菓子の音楽(第15回荻窪音楽祭参加)
第37回 2007/04/22 カフェコンセールの歌姫vol.2
第36回 2007/03/25 J.S.バッハカフェ
第35回 2007/02/25 ギリシャとオーヴェルニュの歌(協賛:キリンMCダノンウォーターズ株式会社)
第34回 2007/01/28 サックスカフェ
第33回 2006/12/03 ゆく年くる年~ショスタコーヴィチ生誕100年/グリーグ没後100年
第32回 2006/11/19 モーツァルトとロイトゲープvol.2(第14回荻窪音楽祭参加)
第31回 2006/10/22 モーツァルトとロイトゲープvol.1/モーツァルトとシュタードラーvol.5
第30回 2006/09/24 ケックランと女優たち
第29回 2006/08/06 「アメリカ」~異郷の夏
第28回 2006/06/18 カフェコンセールの歌姫
第27回 2006/04/30 友情の二重唱
第26回 2006/03/19 猫の音楽史
第25回 2006/02/26 ソプラノ/ホルン/ピアノによる三重奏
第24回 2006/01/29 画家と絵画に寄せて
第23回 2005/12/11 クラリネットカフェ
第22回 2005/11/20 ヴィオラカフェ(第12回荻窪の音楽祭参加)
第21回 2005/10/30 バリトンカフェ
第20回 2005/09/25 アメリカとオーヴェルニュの歌(協賛:キリンMCダノンウォーターズ株式会社)
第19回 2005/07/03 モーツァルトとシュタードラーvol.4
第18回 2005/06/05 モーツァルトとシュタードラーvol.3
第17回 2005/05/22 ダブルリードでドニゼッティ(第11回荻窪の音楽祭参加)
第16回 2005/04/24 モーツァルトとシュタードラーvol.2
第15回 2005/03/27 わが愛しのナイチンゲール
第14回 2005/02/27 モーツァルトとシュタードラーvol.1
第13回 2005/01/16 新春~箏と三絃の饗宴
第12回 2004/11/21 アイルランドとオーヴェルニュの歌(協賛:キリンMCダノンウォーターズ株式会社/第10回荻窪の音楽祭参加)
第11回 2004/09/19 愛の円舞曲集
第10回 2004/07/18 カフェのある街並み
第9回 2004/05/16 イングランドとオーヴェルニュの歌(第9回荻窪の音楽祭参加)
第8回 2004/03/07 花と昆虫に寄せて
第7回 2004/01/11 木管五重奏によるウィンナワルツとポルカ(カフコンス1周年記念ニューイヤーコンサート)
第6回 2003/11/16 仏蘭西喜歌劇二重唱(第8回荻窪の音楽祭参加)
第5回 2003/09/21 オーボエ/ファゴット/ピアノによる三重奏vol.2
第4回 2003/07/06 オーボエ/ファゴット/ピアノによる三重奏
第3回 2003/05/18 仏蘭西浪漫派二重唱(第7回荻窪の音楽祭参加)
第2回 2003/03/02 フルート/オーボエ/クラリネット/ピアノによる四重奏
第1回 2003/01/26 ソプラノ/クラリネット/ピアノによる羊飼いの歌
※第1~67回は荻窪・名曲喫茶ミニヨンにて、第68~85回は笹塚・Blue-Tにて開催。
第86回より本郷・金魚坂にて開催中。

民謡紀行〜バスクからスペインへ(カフコンス第149回)2022-05-22

バスクからスペインへ!

*曲目

ラヴェル「スペインの歌」
Maurice Ravel (1875-1937)
Canción Española (1910)

カントルーブ「バスク地方の歌」
Joseph Canteloube (1879-1957)
Chants des pays Basques (1949)
  Chorietan buruzagi 一番素晴らしい鳥
  Nik badut maiteñobat 僕には愛する人がいる
  Chori erresiñoula 美しいうぐいすよ
  Lurraren pian 墓に
  Egun batean ある日

トゥリーナ「ゲルニカの木」*ピアノソロ
Joaquín Turina (1882-1949)
El arbol de Guernica op.41-2 (1927)

カステルヌオーヴォ=テデスコ「セファルディの三つの歌」
Mario Castelnuovo-Tedesco (1895-1968)
Three Sephardic songs (1949)
  Montañas altas 高い山々
  Ven y veràs 会いに来て
  Una noche ある夜

オブラドルス「スペインの古い歌」より
Fernando Obradors (1897-1945)
Canciones clásicas Españolas (1921-41)
  Trova 吟遊詩人風に
  Al amor 恋人に
  ¡Oh, que buen amor! ああ何て素敵な愛
  La guitarra sin prima 第一弦のないギター
  El tumba y lé 倒れて起きて

(ベートーヴェン「Una paloma blanca」)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

曲目について(川北)

 本日は民謡編曲特集の第8回です。これまでカントルーブの「オーヴェルニュの歌」を全曲演奏してきましたが、今回は同じカントルーブの「バスク地方の歌」と、スペイン民謡の編曲作品を集めてプログラムを組みました。主役はもちろん「歌」ですが、歌は元の民謡の通りでもありますので、それぞれの作曲家の編曲について少しお話しできたらと思います。

 ラヴェルはバスク出身の母の歌うバスク民謡を聞いて育ったそうで、スペインを題材とした名曲だけでなくピアノ三重奏曲の3+2+3拍子等にもその影響が窺えます。民謡編曲コンクール入賞作「スペインの歌」もスペインのギターを彷彿させる伴奏が印象的です。

 カントルーブの「バスク地方の歌」はバスクのフランス側の3地方の民謡を編曲したもので、「自然や大地の伴奏を音楽に書き表した」というオーヴェルニュの歌と手法は同じでも、第1曲の前奏からまさに異国の趣です。第2曲の5拍子、第3曲の3+2+3拍子はバスクの特徴的なリズムで、第4曲には海の表現もあり、終曲はバスクの太鼓を思わせます。

 「ゲルニカの木」はバスク第2の国歌と言われる5拍子の民謡で、同じバスク民謡でもスペインのトゥリーナによる編曲はスペイン寄りの雰囲気を感じさせ、また歌のないピアノ曲のため、旋律にも手を加えてさらに自由に構成されています。

 カステルヌオーヴォ=テデスコはセファルディ(スペイン系ユダヤ)の家系のイタリア人作曲家です。本日の曲目の中で「セファルディの歌」、特に第3曲はアラブ的旋律が異色で、他と同じ西洋音楽の楽譜でこのような歌を歌えるのも編曲作品ならではと言えます。伴奏は伴奏型に徹していて、伴奏で風景を描くというより、民族楽器の弾き語りのようでもあります。

 「スペインの古い歌」は、カタルーニャ出身の作曲家オブラドルスがスペインの民謡や中世の歌を編曲してまとめた曲集(全4巻23曲)です。編曲はカントルーブ的に風景を描く事に加えて、演奏会用を意識していたと思われる華やかなものです。

 なお「バスク地方の歌」はバスク語、他はスペイン語で演奏いたします。


*歌詞大意

「スペインの歌」

さようなら、夫よ
あなたは戦に行ってしまう
忘れないで
この地に残る人のことを
 ララララ...

カスティーリャのカスティーリャ人よ
ガリシア人に良くしてください
行く時は薔薇色
帰る時は奴隷のよう
 ララララ...

「バスク地方の歌」
*一番素晴らしい鳥

一番素晴らしい鳥は夜鳴きうぐいすだ
早朝の光に明るく輝く
ああ、美しい空気が彼を歌わせるのだ

夜鳴きうぐいすは鳥の王だ
私は起きて窓辺へ行き
彼の甘い声に心を奪われる

「私は若くて陽気
心は満たされ、幸せで明るく、苦しみはなく
皆を愛し、誰にも捕われることはない」

*僕には愛する人がいる

僕には愛する人がいる、どんなかって?
背は低くも高くもなく中くらい
美しい瞳が愛に輝き
僕の心をとらえて離さない

愛の苦しみ、ああ大きな苦しみ!
今、僕は知った、愛はこんなに苦しいのだと
君が僕を愛していないのに
僕が君を愛しているなんて言えるものか

君は星をいくつ持っているのだろう?
君の二つの瞳は僕の目に映っていない
君と別れるのは辛い、愛する人よ
僕にとっては、たとえ一時間でも

僕は何をしているのだろう?
気にする必要はない
僕たちのことを人が何と言おうと
愛する人、君は僕を笑わせてくれる

*美しいうぐいすよ

美しいうぐいすよ、僕と一緒に来ておくれ
愛する人のところまでついて来ておくれ
そして、甘い声で伝えておくれ
あなたの忠実な恋人が来ました、と

愛する人の戸口へ着くと
犬が来て吠え始めた
僕は急いで身を隠し
うぐいすは木の上に止まった

「あら、うぐいすだわ、どこから来たのかしら」
「ごめんください、僕には家がなく
 とても喉が渇いてここへ来たんです
 泉で水を飲ませてもらえませんか」

「喉が渇くのも当たり前ね
 今日は一日中暑かったもの
 でも水は汲みに行くから
 ここに泉は無いのよ」

*墓に

愛する人よ、私は墓に苦悩を埋める
あなたとの結婚の願望が頭を巡る
閉ざされた部屋で、ずっと泣きながら
抑えられない気持ちと悲しみに包まれる...
間違いなくあなたは、
 私を苦悩で死なせる運命にあったのだ

星々の中の星よ、私にとって
あなたは唯一の人
私はあなたに何度も求婚した
でも間違いなくあなたは、
 私があなたにふさわしくないと思い
神はあなたを私より良い人に出会わせた

船乗りは船に引き寄せられて海へ向かう
愛する人よ、私は決してあなたを諦めない
一緒に生きる運命ではなかったが
私はあなたに愛を捧げた、返すことはできない
あなたは永遠にそれを持ち続けるのだ

*ある日

ある日、私は仕事中に
妻はいったいどこにいるんだ? と訊ねた
すると言われた、奥さんは飲んだくれていますよ
でも心配いりません!
 *マダレン夫人は大酒飲みで泣き上戸
 このご夫人はツケで飲んで、支払いは夫です!

この女性は裁縫が得意で
アイロンもとても得意
でも彼女が何より愛するのは
スープに入れる白ワイン!
 *マダレン夫人は〜

ある日彼女は、夫を家に残して出かけ
急な坂を登ろうとしたが
酔っていたので力が入らず
道の真ん中で転がった!
 *マダレン夫人は〜

「セファルディの三つの歌」
*高い山々

海沿いの高い山々よ
導いてください、愛しい人の所へ
導いてください、大切な人の所へ
愛する人の所へ
 *愛してください、私が愛するように
 ああ、私は死んでしまうでしょう
 時はただ過ぎていきます
 ああ、私はあなたのせいで死んでしまうでしょう

私が歩くこの道で
あなたは見ないでしょう
泣いて、苦しんでいる私の影を
この痛みはどこから来るのでしょう
 *愛してください〜

*会いに来て

会いに来てちょうだい、一緒に
私たち二人の愛を楽しみましょう

木は雨を、山は空気を求めて泣く
愛しい恋人、私の目があなたを求めて泣くように

雨が降って、通りや中庭を濡らす
私の目が濡らしたのだと、
 愛する人に伝えてちょうだい

*ある夜

ある夜、僕は勇気をふり絞ってあなたの寝室へ向かう
ドアは開け放し、ろうそくは消しておいておくれ
 タララ...

あなたは僕を欲しい、僕はあなたが欲しい
 でもあなたの母親は僕達が一緒になって欲しくない
今夜、僕は神様に祈る
 あなたの母親がぐっすり寝ていますように、と
 タララ...

僕は白くも黒くもなく、誉められる事は何もない
それでもあなたは、私の心に入ってきてくれた
 タララ...

「スペインの古い歌」より
*吟遊詩人風に

投げておくれ、可愛いお嬢さん
涙をハンカチに落として

それをグラナダへ持って行って
銀職人に細工してもらうんだ

それで飾りたいんだ
ペンダントの周りを

聖木曜日に、僕のお嬢さん
ナザレンはそれで着飾るんだ

涙をハンカチに...

*恋人に

キスして、恋人よ、数えきれないくらい
私の髪にふれながら
それから千と百回
それからまた千と百回
その後に...
何千回と三回!

そして、誰も気づいていないから
始めから数え直して
それから...
今度は逆に数えましょう

*ああ何て素敵な愛

ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら
タンボラの叩き方が分かったら
タンボラのランラタプランが分かったら!

ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら
タンボラの叩き方が分かったら
タンボラのランラタプラン
クラリネットのクラカタクラ
ギターのラウラウラウ
バイオリンのリンリンリンが分かったら
ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら!

ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら
サンポーニャの吹き方が分かったら
サンポーニャのララライラが分かったら!

ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら
サンポーニャの吹き方が分かったら
サンポーニャのララライラ
柔らかい音のシターンとヴィオラ
タンバリンのタカタタカ
トランペットとラッパの
 ティンティンティンティンが分かったら
ああ何て素敵な愛、遊び方が分かったら!

*第一弦のないギター

第一弦のないギターは、文句のような音を出す
まるで僕がお前に悪い事でもしているかのように
 ああ、畜生
僕がお前に悪い事でもしているかのように
 それで?

僕の弾くギターには第一弦がない
でも良質の銀の低音弦はある
 ああ、畜生
でも低音弦はある
 それで?

*倒れて起きて

私はまだ小さい女の子だけど、夫を見つけたら
毎年二人か三人の子供を作るわ
 *倒れて起きて、私も一緒に行くわ
 倒れて起きて、私も後で行くわ
 倒れて起きて、粉屋へ行くのよ
 倒れて起きて、粉を挽きに

私は一頭の畜牛しか持っていないけど
六頭以上の子牛を作るわ
 *倒れて起きて〜

男の子たちは、闘牛に襲われるのを怖がって
私に赤い服を脱げと言うのよ
 *倒れて起きて〜

でも、よく言われるでしょう?
角が刺さったら後は悪魔を恐れるだけだ、って
 *倒れて起きて〜


*ブログ

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2022-04-17 オーヴェルニュとバスクの犬
2022-04-13 初めてのバスク
2022-04-09 民謡紀行
2022-04-01 バスクからスペインへ