友情の二重唱(カフコンス第27回)2006-04-30


*曲目

ビゼー『真珠採り』より「聖なる神殿の奥に」
Georges Bizet (1838-75)
"Le pêcheurs de perles" (1863)
Au fond du temple saint

ヴェルディ『ドン・カルロ』より「我等の魂に友情と希望を」
Giuseppe Verdi (1813-1901)
"Don Carlo" (1867/84)
Dio, che nell'alma infondere, amor volesti e speme

プッチーニ「小さなワルツ」*ピアノソロ
Giacomo Puccini (1858-1924)
Piccolo Valzer (1894)

同『ボエーム』より「もう戻らないミミ」
"La Bohème" (1896)
O Mimì tu più non torni

(シャブリエ『星』より「酒の二重唱」)


*出演

高田正人(テノール)
青山貴(バリトン)
川北祥子(ピアノ)

アンコール助演:小出麗子(ミニヨン)


*プログラムコメント

 オペラでテノールとバリトンといえば恋敵のイメージが強いが、テノールの恋のためにバリトンが奔走したりもするし、二人して仲良く振られる事もある。意外に二重唱の名曲には友情の場面が多いようだ。
 『真珠採り』はかつて恋敵だった二人が再会して友情を誓う二重唱から始まるが、漁を祈る尼僧となった彼女をテノールは再び愛してしまう。バリトンは真珠採りの頭領としても悩むが最後には二人を救う。
 『ドン・カルロ』では、愛する女性が父である国王の后となり苦悩するテノールをバリトンが慰め力づける。後にバリトンは命を投げうってテノールを庇い、死の場面で思い出されるこの友情の旋律は感動的だ。
 『ボエーム』では恋人と別れてしまった二人が元の屋根裏生活に戻り、お互い傷をつつき合い、平気なふりをし、仕事に没頭して忘れようとするものの、結局その手も止まりそれぞれ数ヵ月前の恋人を想う。


*歌詞大意

『真珠採り』一幕「聖なる神殿の奥に」
(カレ/コルモン台本)

ナディール(高田):
花と黄金で飾られた聖なる神殿の奥に
一人の女性が現れた 今も目に見えるようだ

ズルガ(青山):
一人の女性が現れた 今も目に見えるようだ

ナディール:
ひれふした群集は驚いて彼女を見て 低く囁く
見よ 女神が 闇の中に立ち私達に腕を差しのべる

ズルガ:
彼女のヴェールが上がる おお!幻か夢か!
群集はひざまずく

ナディール/ズルガ:
そうだ 彼女だ もっと魅力的で美しい女神だ
そうだ 彼女だ 私達の中に舞い降りた女神だ
彼女のヴェールが上がり群集はひざまずく

ナディール:
しかし群集をわけて彼女は進む

ズルガ:
長いヴェールでもう彼女の顔は見えない

ナディール:
私の眼は ああ むなしく彼女を求める

ズルガ:
彼女は去る!

ナディール: 彼女は去る! しかし突然私の魂に
なんと不思議な熱情が燃え上がったことか

ズルガ:
なんと新しい情熱に焼き尽くされたことか

ナディール/ズルガ:
おまえの手は私の手を押しのけた

ナディール:
恋が私達の心を捕らえ 私達を敵同士に変えてしまった

ズルガ:
いや 私達を分かつものは何もない

ナディール:
そうだ 何もない!

ナディール/ズルガ:
私達は友人であり続けることを誓う
ああ!そうだ 私達は友人であり続けることを誓う!
そうだ 彼女だ この日私達を結び付けた女神だ
そして誓いに忠実に 兄弟のようにおまえをいつくしみたい!
そうだ 彼女だ この日私達を結び付けた女神だ!
そうだ 同じ運命を分かち合い
死の時まで友人として結ばれよう!

『ドン・カルロ』四幕版一幕(五幕版二幕)「我等の魂に友情と希望を」
(メリ/デュ・ロークル台本)

ロドリーゴ(青山):
彼だ! そうだ! 皇太子!

ドン・カルロ(高田):
おお 私のロドリーゴ!

ロドリーゴ:
殿下!

ドン・カルロ:
懐かしい君なのか?

ロドリーゴ:
おお私の皇子 殿下! お慕いする殿下!

ドン・カルロ:
神が私の苦悩をやわらげるために君を送って下さったのだ
慰めの天使!

ロドリーゴ:
時は来ました フランドルの民衆があなたを呼んでいます!
あなたは彼らを救い 救世主となるのです!
しかしそのご様子は! なんと青ざめ 苦しんで!
あなたの眼には苦悩の光が宿っています!
あなたは何も言わず! 溜息をつき! 心に悲しみを持って!
私のカルロ 私にお分け下さい
あなたの涙 あなたの苦悩を!

ドン・カルロ:
私の救世主 私の兄弟 私の親友よ
君の胸で泣かせておくれ!

ロドリーゴ:
あなたのひどい苦しみを明かして下さい
あなたの心のうちを私には閉ざさずに! お話し下さい!

ドン・カルロ:
君はそれを望むのか? 聞いてくれ私の悲運を
そしてなんと恐ろしい苦しみが私の心に突き刺さったかを!
私は愛している…罪深い愛…エリザベッタ!

ロドリーゴ:
あなたの母上を! なんということだ!

ドン・カルロ:
なんと青ざめた顔! 伏せられたまなざし!
私は悲しい! 君までもが
私のロドリーゴ 私から遠ざかるのか?

ロドリーゴ:
いいえ ロドリーゴはまだあなたをお慕いしています!
誓います あなたは苦しんでいるのですか?
それなら私にとって世界は無意味です 私の殿下!

ドン・カルロ:
おお 私のロドリーゴ!

ロドリーゴ:
この秘密は国王にはまだ気付かれていないのですか?

ドン・カルロ:
いやまだ!

ロドリーゴ:
では彼からフランドルへ出発する許可を得るのです
心は明かさずに あなたにふさわしい仕事です
今こそ圧迫された民衆の国王となるべきです!

ドン・カルロ:
君に従おう 兄弟よ

ロドリーゴ:
お聞きなさい! 聖堂の門が開き
フィリッポ王と王妃がここに来られます

ドン・カルロ:
エリザベッタ!

ロドリーゴ:
私のそばで 揺れる魂に勇気を取り戻しなさい!
あなたの星はもう一度大空に輝くのです
勇気を求めて天に祈りなさい!

ドン・カルロ/ロドリーゴ:
我等の魂に友情と希望をあふれさせた神よ
心に自由への望みを燃え上がらせて下さい!
我等はともに生き ともに死ぬことを誓います
天上でも 地上でも 我々を結び付けて下さい
ああ! 我等の魂に友情と希望をあふれさせた神よ
心に自由への望みを燃え上がらせて下さい!

ロドリーゴ:
彼等が来ます

ドン・カルロ:
おお! 恐ろしい! 彼女を見るだけで震える!

ロドリーゴ:
勇気を出して!

ドン・カルロ/ロドリーゴ:
ともに生き ともに死のう!
最後の息で叫ぶだろう 自由!と
ともに生き ともに死のう!
最後の叫びは 自由!

『ボエーム』四幕「もう戻らないミミ」
(ジャコーザ/イッリカ台本)

マルチェッロ(青山):
馬車の中に?

ロドルフォ(高田):
二頭立てで従者つきさ 笑いながら僕に挨拶した
やあ!ムゼッタ! 僕は彼女に言った それで心臓は?
「打っていないわ それとも感じないのか
 包んでいるビロードのおかげで」

マルチェッロ:
そりゃいい まったく!

ロドルフォ:
(嘘つきめ! 悩みながら笑って!)

マルチェッロ:
打っていないって? いいね! 僕も会った…

ロドルフォ:
ムゼッタに?

マルチェッロ:
ミミさ

ロドルフォ:
彼女に会った? ああ そうか!

マルチェッロ:
馬車に乗っていた 女王のように着飾って

ロドルフォ:
よかった! それなら満足だ

マルチェッロ:
(嘘つきめ 恋に苦しんでいるくせに!)

ロドルフォ/マルチェッロ:
仕事をしよう

ロドルフォ:
なんてひどいペンだ!

マルチェッロ:
なんてひどい絵筆だ!

ロドルフォ/マルチェッロ:
(おおミミ 君はもう戻らない おお美しい日々
 小さな手 かぐわしい髪 雪のようなうなじ!
 ああ!ミミ 僕のはかない青春!
 そして軽いボンネットよ
 彼女が枕の下に隠していったお前は
 僕達の幸せを全部知っている
 僕の心に来ておくれ 僕の死んだ心に!
 ああ僕の心に来ておくれ 愛が死んでしまったから!)

(僕はどうしてかわからない 僕の絵筆が動いて
 絵の具をまぜる 僕の意志に逆らって
 僕が空や大地や冬や春を描きたくても
 描かされてしまう 二つの黒い眼や 生意気な口を
 またムゼッタの顔が現れる 愛嬌と偽りでいっぱいの顔が
 その間にもムゼッタは遊び戯れ
 惨めな僕の心は彼女を呼び
 そして待っている 惨めな僕の心は!)

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