ソプラノ/クラリネット/ピアノによる羊飼いの歌(カフコンス第1回)2003-01-26

*曲目

マイアベーア「羊飼いの歌」
Giacomo Meyerbeer (1791-1864)
Hirtenlied - Des Schäfers Lied (1842)

クック「3つの無垢の歌」
Arnold Cooke (1907-1971)
Three songs of innocence (1957)
  1.Piping down the valleys wild 笛を吹き谷を下る
  2.The shepherd 羊飼い
  3.The echoing green 緑萌える野原

シューベルト「岩上の羊飼い」
Franz Schubert (1797-1828)
Der Hirt auf dem Felsen (1828)

(トマ「ミニヨン より 君よ知るや南の国」)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
大成雅志(クラリネット)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 ソプラノ、クラリネット、ピアノによる三重奏と言えば何といってもシューベルトの「岩上の羊飼い」が有名。そこで本日は羊年にもちなみ、この編成による羊飼いの歌を集めてみた。
 歌曲王と呼ばれるシューベルトに対し、ほぼ同時代のドイツのマイアベーアはグランドオペラの確立者で、「羊飼いの歌」もオペラ風だ。詩もまた対照的で、マイアベーアのものは山の上を現実から離れた居心地の良い場所としているのに対し、シューベルトのものは春の訪れを心待ちにして人里離れた山を下りるのを喜んでいる。
 クックは20世紀イギリスの作曲家。「3つの無垢の歌」の「無垢」とは「経験(を持つ大人)」に相対するものを指し、「無垢である子供」を主人公として初めて詩に登場させた18世紀の詩人ブレイクの詩による。この3曲ではクラリネットが「私」の吹く笛、聞こえてくる羊飼いの笛、野原の情景描写、と役割を異にしているのも面白い。
 ちなみにマイアベーアの詩に登場するシャルマイはオーボエに似た楽器である。「羊飼いの笛」を表わす楽器としてはオーボエやフルートが一般的に思うが、歌曲でこのようにクラリネットが集中して使われるのはやはりシューベルトの影響と言えよう。


*歌詞大意

「羊飼いの歌」(レルシュタープ)

空の青から流れ出た
ここ、人気のない高み
私はざわめく空気の吹き溜まりを離れ
花の咲き乱れる草地で憩う
緑の中子羊たちをまわりに休ませて
シャルマイの音が響く
太陽の光に導かれて
渡り鳥が列をなして通りすぎる

鳥たちは遠くへ飛んで行く
はるか果てしない世界へ
私はこの高みにずっといたい
青い天幕の近くに!
下界の人々から離れ
不安や怒り、不満や苦痛から離れて
幸せな自由で満たされる
ここでは心は安らかだ

そして幸せな日々は過ぎ
人生はしずかに流れる
嵐のように目まぐるしい波は
この高みまでは打ちつけてはこない
銀色に輝く群は柔順に草を食む
緑の地、花の咲き乱れた地で
大地の混乱した苦しみは
神聖な岸辺には近づきはしない

「3つの無垢の歌」(ブレイク)

1.笛を吹き谷を下る

笛を吹き谷を下る
楽しい歌を吹きながら
雲の上に子供がいた
彼は笑いながら私に言った

「羊の歌を吹いて!」
私は楽しく吹いた
「その歌をもう一度吹いて」
私が吹くと彼は泣いた

「笛を置いて
その幸せな歌を歌って」
私は同じしらべを歌った
彼はそれを聞き喜び泣いた

「座って書いて
みんなが読めるよう本に」
そして彼は私の目から消えた
私は葦を折った

そしてペンを作り
きれいな水にひたして
幸せな歌を書いた
すべての子供たちが聞いて喜ぶように

2.羊飼い

何とすばらしい羊飼いの仕事
朝から晩まで気ままに歩き
一日じゅう羊を追い
いつも神を讃え

子羊の無垢な声と
やさしく応える母羊の声を聞き
羊たちに心くばる
羊飼いがそばにいると羊たちは安らぐから

3.緑萌える野原

太陽がのぼり 空は喜ぶ
楽しい鐘の音が 春を歓迎する
ひばりやつぐみ 茂みの鳥たちが
高らかに歌う 鐘にも負けず
子供たちは遊ぶ 緑萌える野原で

白髪の老ジョン 何でも笑い飛ばす
オークの木陰に座り 昔からの仲間と
子供たちの遊びに目を細め 口々に言う
同じように楽しかった 自分たちも
昔を見ているようだ 緑萌える野原に

子供たちが疲れ もう動けなくなると
太陽は沈み 遊びは終わる
母親の膝のまわりに 兄弟たちが集まり
巣の中の鳥たちのように すぐにも眠ってしまいそう
もう誰も遊んでいない 暮れていく緑の野原では

「岩上の羊飼い」(ミュラー/シェジー)

岩の頂に立って
深い谷を臨んで歌うと
はるか暗い谷の深みから
こだまが舞い上がってくる

私の声が遠くへ響けば響くほど
さらに下方から澄んで返ってくる
私の愛する人ははるか彼方にいる
だから私は遠い彼女に激しく思い焦がれる

深い悲しみの中私は憔悴する
喜びは去り、
この世で希望は消え失せた
私はここでひとりきりだ

そして思い焦がれながら
歌は森に響き、
夜に響き、
不思議な力で天へと心を導く

春がそこまで来ている、春が、私の友が
今や旅立ちの支度をしよう
私の声が遠くへ響けば響くほど
さらに下方から澄んで返ってくる


*カフノーツ

#01 山羊が見つけたコーヒー豆

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