愛の円舞曲集(カフコンス第11回) ― 2004-09-19
*曲目
ラフマニノフ編曲「眠りの森の美女のワルツ」*連弾
Sergei Rachmaninoff (1873-1943)
Valse de "La belle au bois dormant" (1890)
ラフマニノフ「ワルツ」*六手連弾
Valse (1890)
ブラームス「愛の歌(18曲のワルツ集)」*四重唱と連弾
Johannes Brahms (1833-97)
Liebeslieder op.52 (1868-9)
(シューマン「スペインの愛の歌 終曲」)
*出演
渡辺有里香(ソプラノ・六手1stピアノ)
高橋ちはる(メゾソプラノ)
初谷敬史(テノール)
藪内俊弥(バリトン)
江口久美子(四手1st・六手2ndピアノ)
川北祥子(四手2nd・六手3rdピアノ)
*プログラムコメント
本日はラフマニノフとブラームスの20曲のワルツをお聴きいただきます。
「眠りの森の美女のワルツ」は若きラフマニノフが大先輩チャイコフスキーの当時の新作をひたすら原曲に忠実に編曲したもの。チャイコフスキーは酷評して何度も書き直しをさせたそうで、もしももっとラフマニノフらしい初稿が残されているなら聴いてみたいものだ。同年の「ワルツ」は友人の三人の娘のために書かれた小品。六手作品は当初三曲が予定されたが、翌年に「ロマンス」が完成したものの三曲目は構想のみで終わった。もしも三姉妹に一曲づつ献呈するつもりだったとしたらもらえなかった一人は残念だったに違いない。
「愛の歌」は同編成のシューマンの「スペインの愛の歌」とよく比較される(ものの全く異趣の作品だという結論にいつも落ち着くのだ)が、シューマンこそブラームスを見い出し世に送り出した人物であった。しかしブラームスはシューマン夫人のクララと生涯「親密な関係」を噂されることとなり、しかも「愛の歌」作曲の頃にはクララの三女ユーリエに想いを寄せていた。ユーリエの結婚でこの愛が幕を閉じるとクララは喜びを隠さなかったといい、まもなく完成した「愛の歌」はクララとブラームスの連弾で初演された。そしてブラームスは自身の苦悩と重なる次作「アルトラプソディop.53」を「花嫁の歌」と呼んだのだった。一見素朴な民謡ふうの「愛の歌」だが、その陰には複雑な事情もあったようだ。
*歌詞大意
「愛の歌」(G.F.ダウマー「ポリドーラ」より)
1.Rede, Mädchen, allzu liebes
話しておくれ、美しい人よ、
僕の冷たい胸に、
そのまなざしで、この激しい燃える想いを
投げつけた人よ!
おまえは心を和らげようとしないのか、
敬虔すぎる人よ、
愛の喜びを知らずに憩うのか、
それとも僕に来てほしいのか?
愛の喜びを知らずに憩う−
そんなひどい目に遭うつもりはないわ。
さあ、来て、黒い瞳のあなた、
星が迎える時に。
2.Am Gesteine rauscht die Flut
岩の上を川が音を立てる
荒々しく押し流されて。
ため息をつくことも知らない人も
愛の下でそれを知る。
3.O die Frauen
おお、女は、女とは、
なんと歓びをとろかしてくれるのだろう!
僕がずっと昔から坊主になっていたら、
女など存在しなかっただろうに!
4.Wie des Abends schöne Röte
夕暮れの美しい紅のように
あわれな小娘の私は輝きたい、
たったひとりの人に気に入られるために、
ずっと喜びを撒き散らしていたい。
5.Die grüne Hopfenranke
緑のホップのつるが、
地面の上を這っている。
若い美しい娘も
とても悲しげな気持ちだ!
言っておくれ、緑のつるよ!
おまえはなぜ天へ向かって伸びないのか?
言っておくれ、美しい娘よ!
なにがおまえの心を重くするのか?
どうしてつるは伸び上がれよう?
支えの力を借りずに。
どうして娘は朗らかでいられよう?
愛する人と遠く離れて。
6.Ein kleiner, hübscher Vogel
小さくてかわいらしい小鳥が飛んでいった
実がたわわになった庭へ。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらわずに同じようにするのに。
そこで意地悪なもち竿が待ち伏せをしていた。
かわいそうな小鳥はもう逃げられなかった。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらってそんな真似はしないのに。
小鳥は美しい手にとまり、
それはこの上なく幸せなことだった。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらって、でもやっぱり同じようにするのに。
7.Wohl schön bewandt war es
結婚する前は素敵だった
私の人生と私の愛で、
壁を、たとえ十の壁を通しても、
あの人の目は私を見つけることができた。
しかし、それが今は悲しいことに、
私が冷たい人のすぐ傍に、
彼の目の前に立っても、
彼の目も心も私に気付かない。
8.Wenn so lind dein Auge mir
おまえの瞳がこんなに優しく
こんなにいとおしく僕を見つめると、
僕を灰色にしていたどんな暗がりも、
去ってしまう。
この愛の美しい情熱を
飛び散らせてはいけない!
他の誰も、僕のように誠実に
おまえを愛することは決してない。
9.Am Donaustrande
ドナウの岸に一軒の家があり、
ばら色の娘が見える。
娘は大切に育てられ、
戸には十本もの鉄のかんぬきがかかっている。
鉄のかんぬき十本、冗談じゃない。
僕がそれをただのガラスみたいにぶち壊してやる。
ドナウの岸に一軒の家があり、
ばら色の娘が見える。
10.O wie sanft die Quelle
ああ、なんと穏やかに泉が
草地に湧き流れていることか。
ああ、なんとすてきなことだろう、
愛が愛と出会うのは!
11.Nein, es ist nicht auszukommen
いいや、僕は世間のやつらと
うまく付き合えない。
やつらは何もかも
悪くとるのだ!
僕が朗らかにしていると
浮ついていると思われ、
おとなしくしていると
恋で気が狂ったとささやかれるのだ。
12.Schlosser auf, und mache Schlösser
錠前屋よ、起きてくれ!錠前を作ってくれ!
無数の錠前を!
そして僕はなまいきなことを言う口を
ひとつ残らずふさいでやりたいんだ!
13.Vögelein durchrauscht die Luft
小鳥が空を飛び、
大きな枝を探している。
そして心も探し求めている、
幸せに憩えるところを。
14.Sieh, wie ist die Welle klar
見てごらん、なんて波が明るく輝いているのだろう、
月が見下ろしているのだ!
いとしい人よ、
再び僕を愛しておくれ!
15.Nachtigall, sie singt so schön
ナイチンゲールがとても美しく鳴き、
星はまたたいている、
僕を愛しておくれ、いとしい心よ、
暗闇の中でくちづけしておくれ!
16.Ein dunkeler Schacht ist Liebe
愛は暗い穴だ、
あまりにも危険な井戸だ。
あわれな僕はそこに落ちて、
聞くことも見ることもできない、
ただ僕の喜びを想うばかり、
ただ僕の悲しみにうめくばかり。
17.Nicht wandle, mein Licht
私の光よ、歩きまわらないでないでおくれ、
あの野っぱらなんかを、
きみのほっそりした足が、
びしょびしょで弱々しくなってしまう。
そこは水があふれかえる
道にも小橋にも。
僕の目があんなにたくさん
涙を流したのだから。
18.Es bebet das Gesträuche
やぶがざわめき、
一羽の小鳥がすばやく飛び立った
同じように僕の心も
おまえのことを考えると
ふるえ揺さぶられる
愛と喜びと苦しみに。
*カフノーツ
#11 千差万別、コーヒーの飲み方。
ラフマニノフ編曲「眠りの森の美女のワルツ」*連弾
Sergei Rachmaninoff (1873-1943)
Valse de "La belle au bois dormant" (1890)
ラフマニノフ「ワルツ」*六手連弾
Valse (1890)
ブラームス「愛の歌(18曲のワルツ集)」*四重唱と連弾
Johannes Brahms (1833-97)
Liebeslieder op.52 (1868-9)
(シューマン「スペインの愛の歌 終曲」)
*出演
渡辺有里香(ソプラノ・六手1stピアノ)
高橋ちはる(メゾソプラノ)
初谷敬史(テノール)
藪内俊弥(バリトン)
江口久美子(四手1st・六手2ndピアノ)
川北祥子(四手2nd・六手3rdピアノ)
*プログラムコメント
本日はラフマニノフとブラームスの20曲のワルツをお聴きいただきます。
「眠りの森の美女のワルツ」は若きラフマニノフが大先輩チャイコフスキーの当時の新作をひたすら原曲に忠実に編曲したもの。チャイコフスキーは酷評して何度も書き直しをさせたそうで、もしももっとラフマニノフらしい初稿が残されているなら聴いてみたいものだ。同年の「ワルツ」は友人の三人の娘のために書かれた小品。六手作品は当初三曲が予定されたが、翌年に「ロマンス」が完成したものの三曲目は構想のみで終わった。もしも三姉妹に一曲づつ献呈するつもりだったとしたらもらえなかった一人は残念だったに違いない。
「愛の歌」は同編成のシューマンの「スペインの愛の歌」とよく比較される(ものの全く異趣の作品だという結論にいつも落ち着くのだ)が、シューマンこそブラームスを見い出し世に送り出した人物であった。しかしブラームスはシューマン夫人のクララと生涯「親密な関係」を噂されることとなり、しかも「愛の歌」作曲の頃にはクララの三女ユーリエに想いを寄せていた。ユーリエの結婚でこの愛が幕を閉じるとクララは喜びを隠さなかったといい、まもなく完成した「愛の歌」はクララとブラームスの連弾で初演された。そしてブラームスは自身の苦悩と重なる次作「アルトラプソディop.53」を「花嫁の歌」と呼んだのだった。一見素朴な民謡ふうの「愛の歌」だが、その陰には複雑な事情もあったようだ。
*歌詞大意
「愛の歌」(G.F.ダウマー「ポリドーラ」より)
1.Rede, Mädchen, allzu liebes
話しておくれ、美しい人よ、
僕の冷たい胸に、
そのまなざしで、この激しい燃える想いを
投げつけた人よ!
おまえは心を和らげようとしないのか、
敬虔すぎる人よ、
愛の喜びを知らずに憩うのか、
それとも僕に来てほしいのか?
愛の喜びを知らずに憩う−
そんなひどい目に遭うつもりはないわ。
さあ、来て、黒い瞳のあなた、
星が迎える時に。
2.Am Gesteine rauscht die Flut
岩の上を川が音を立てる
荒々しく押し流されて。
ため息をつくことも知らない人も
愛の下でそれを知る。
3.O die Frauen
おお、女は、女とは、
なんと歓びをとろかしてくれるのだろう!
僕がずっと昔から坊主になっていたら、
女など存在しなかっただろうに!
4.Wie des Abends schöne Röte
夕暮れの美しい紅のように
あわれな小娘の私は輝きたい、
たったひとりの人に気に入られるために、
ずっと喜びを撒き散らしていたい。
5.Die grüne Hopfenranke
緑のホップのつるが、
地面の上を這っている。
若い美しい娘も
とても悲しげな気持ちだ!
言っておくれ、緑のつるよ!
おまえはなぜ天へ向かって伸びないのか?
言っておくれ、美しい娘よ!
なにがおまえの心を重くするのか?
どうしてつるは伸び上がれよう?
支えの力を借りずに。
どうして娘は朗らかでいられよう?
愛する人と遠く離れて。
6.Ein kleiner, hübscher Vogel
小さくてかわいらしい小鳥が飛んでいった
実がたわわになった庭へ。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらわずに同じようにするのに。
そこで意地悪なもち竿が待ち伏せをしていた。
かわいそうな小鳥はもう逃げられなかった。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらってそんな真似はしないのに。
小鳥は美しい手にとまり、
それはこの上なく幸せなことだった。
もし私がかわいらしい小鳥だったら、
ためらって、でもやっぱり同じようにするのに。
7.Wohl schön bewandt war es
結婚する前は素敵だった
私の人生と私の愛で、
壁を、たとえ十の壁を通しても、
あの人の目は私を見つけることができた。
しかし、それが今は悲しいことに、
私が冷たい人のすぐ傍に、
彼の目の前に立っても、
彼の目も心も私に気付かない。
8.Wenn so lind dein Auge mir
おまえの瞳がこんなに優しく
こんなにいとおしく僕を見つめると、
僕を灰色にしていたどんな暗がりも、
去ってしまう。
この愛の美しい情熱を
飛び散らせてはいけない!
他の誰も、僕のように誠実に
おまえを愛することは決してない。
9.Am Donaustrande
ドナウの岸に一軒の家があり、
ばら色の娘が見える。
娘は大切に育てられ、
戸には十本もの鉄のかんぬきがかかっている。
鉄のかんぬき十本、冗談じゃない。
僕がそれをただのガラスみたいにぶち壊してやる。
ドナウの岸に一軒の家があり、
ばら色の娘が見える。
10.O wie sanft die Quelle
ああ、なんと穏やかに泉が
草地に湧き流れていることか。
ああ、なんとすてきなことだろう、
愛が愛と出会うのは!
11.Nein, es ist nicht auszukommen
いいや、僕は世間のやつらと
うまく付き合えない。
やつらは何もかも
悪くとるのだ!
僕が朗らかにしていると
浮ついていると思われ、
おとなしくしていると
恋で気が狂ったとささやかれるのだ。
12.Schlosser auf, und mache Schlösser
錠前屋よ、起きてくれ!錠前を作ってくれ!
無数の錠前を!
そして僕はなまいきなことを言う口を
ひとつ残らずふさいでやりたいんだ!
13.Vögelein durchrauscht die Luft
小鳥が空を飛び、
大きな枝を探している。
そして心も探し求めている、
幸せに憩えるところを。
14.Sieh, wie ist die Welle klar
見てごらん、なんて波が明るく輝いているのだろう、
月が見下ろしているのだ!
いとしい人よ、
再び僕を愛しておくれ!
15.Nachtigall, sie singt so schön
ナイチンゲールがとても美しく鳴き、
星はまたたいている、
僕を愛しておくれ、いとしい心よ、
暗闇の中でくちづけしておくれ!
16.Ein dunkeler Schacht ist Liebe
愛は暗い穴だ、
あまりにも危険な井戸だ。
あわれな僕はそこに落ちて、
聞くことも見ることもできない、
ただ僕の喜びを想うばかり、
ただ僕の悲しみにうめくばかり。
17.Nicht wandle, mein Licht
私の光よ、歩きまわらないでないでおくれ、
あの野っぱらなんかを、
きみのほっそりした足が、
びしょびしょで弱々しくなってしまう。
そこは水があふれかえる
道にも小橋にも。
僕の目があんなにたくさん
涙を流したのだから。
18.Es bebet das Gesträuche
やぶがざわめき、
一羽の小鳥がすばやく飛び立った
同じように僕の心も
おまえのことを考えると
ふるえ揺さぶられる
愛と喜びと苦しみに。
*カフノーツ
#11 千差万別、コーヒーの飲み方。
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