千差万別、コーヒーの飲み方。 / カフノーツ#112004-09-19

カフノーツはコーヒーにまつわる短いお話をあれこれご紹介します。 コーヒーでも飲みながらのんびりお読みください。


 コーヒーと一言でいっても、実はその飲み方にはさまざまな種類があります。そして、それぞれに素敵な名前がついているのも楽しいところ。特にカフェの街ウィーンは、さまざまな種類のコーヒーの飲み方があります。

 たとえば「メランジェ Melange」は、生クリームとコーヒーを半々に加えたもの。名前のメランジェは、混ぜあわせたものという意味。黒と白が混ざり合っていくさまも美しいものです。「カプツィーナ Kapuziner」は、コーヒーにホイップした生クリームを加えたもの。好みでカカオの粉をふる場合もあります。カプツィーナの色は、ウィーンにあるカプチーナ教会の僧侶の服の色と似ていたために、その名前がつけられたのだとか。そのせいかどうかわかりませんが、歴代ハプスブルグ家の墓所でもあるカプチーナ教会の壁はいい感じのコーヒー色をしていて、どことなく美味しそうなコーヒーを想起させます。

 実際にその人物が愛飲したかどうか真偽のほどは定かではありませんが、有名人の名前を冠したコーヒーもいくつかあります。ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトが好んだといわれているのは、「アイスカフェ・アマデウス」。牛乳、アイスコーヒーを断層になるように注いで、バニラアイスクリーム、チョコレートクリームリキュールを入れます。「マリア・テレジア」は、コーヒーにオレンジリキュール、ホイップクリームを加えて、さらにお砂糖をたっぷり。パワフルな女帝で知られる彼女の名前を冠するだけに、レシピも濃厚です。

 ウィーンのカフェでよくいわれるのは、客が多種多様なコーヒーの飲み方をこと細かく注文するために、カフェにはコーヒーの色見本まで置いてあったという逸話です。注文する方もされる方も、コーヒーに真摯に対していたんでしょう。ウィーンの人々のコーヒーへのこだわりは、ちょっと江戸っ子の蕎麦へのこだわりに共通するものがあるかもしれませんね。毎日飲んだり食べたりするものだからこそ真剣にこだわる。そんなウィーンの人々の姿勢が、ウィーンのすばらしいカフェ文化を育んでいったにちがいありません。(カフコンス第11回「愛の円舞曲集」プログラム掲載。)

【参考文献】ニナ・バルビエ・エマニュエル・ペレ『名前が語るお菓子の歴史』(白水社)関田淳子『ハプスブルグ家の食卓』(集英社)日本コーヒー文化学会編『コーヒーの事典』(柴田書店)

西川公子 Hiroko Nishikawa
ウェブやフリペの企画・編集・ライティング。プレイステーションゲーム『L.S.D.』の原案、『東京惑星プラネトキオ』『リズムンフェイス』のシナリオなど。著作に10年分の夢日記をまとめた『Lovely SweetDream』。最近は老人映画研究家。

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