クロカンブッシュ~お菓子の音楽(カフコンス第38回) ― 2007-05-20
第15回荻窪音楽祭(主催:「クラシック音楽を楽しむ街・荻窪」の会
後援:杉並区/杉並区教育委員会 21世紀の荻窪を考える会
杉並区文化協会 社団法人荻窪法人会)参加公演
*曲目
<ピアノ>
サティ「食欲をそそらないコラール」
Erik Satie (1866-1925)
Choral inappétissant (1914)
同「アーモンドチョコレートのワルツ」(*朗読つき)
Valse du chocolat aux amandes (1913)
サンサーンス「ウェディングケーキ」
Camille Saint-Saëns (1835-1921)
Wedding-cake (caprice-valse) op.76 (1886)
<ソプラノ>
ケックラン「紅茶」
Charles kœchlin (1867-1950)
Le thé (1890-94)
オッフェンバック「タルトアラクレーム」
Jacques Offenbach (1819-80)
La tarte à la crème (1875)
オネゲル「スペインのチョコレート」
Arthur Honegger (1892-1955)
Le chocolat espagnol (1929-30)
<サクソフォン>
デルヴァンクール「クロカンブッシュ」
Claude Delvincourt (1888-1954)
Croquembouches (1926)
1.Plumpudding プラムプディング
2.Puits d'amour ピュイダムール
3.Linzer tart リンツァータルト
4.Nègre en chemise ネグルアンシュミーズ
5.Rahat Loukhoum ラハトロクム
6.Grenadine グレナデン
(ミヨー「カラメルムー(柔らかいキャラメル)」)
*出演
伊藤あさぎ(サクソフォン)
渡辺有里香(ソプラノ/*朗読)
川北祥子(ピアノ)
*歌詞大意/プログラムコメント
クロカンブッシュとは小さなシューや糖菓を円錐型に積み上げて作るフランスのお祝いのお菓子。本日はそんなクロカンブッシュのように、お菓子にまつわるフランスの小曲を集めて演奏します。
<ピアノ>
*食欲をそそらないコラール/アーモンドチョコレートのワルツ
奇抜な題名や奇妙な書き込みで知られるサティの、「倦怠というものについての私の知っているすべてを盛りこんで」「からっぽの胃袋で作曲」したという前奏曲と、次のような「お話」が楽譜のあちらこちらに書き込まれたワルツ(本日は朗読つきで演奏)。
坊やにも少しあげましょう
チョコレート、好きでしょう?
お口の中でとかしてごらん
ママ、骨があるよ!
いいえ、坊や、それはアーモンドよ
坊やは箱の中のチョコレートを全部欲しがる
なんという食いしん坊!
ママはやさしくたしなめる
いけませんよ、お腹をこわしちゃいますよ
大変だ、坊やは駄々をこねて
足をバタバタばたつかせる
*ウェディングケーキ
サンサーンスが友人で弟子のピアニスト、カロリーヌ・ド・セレスの婚礼のお祝いとして作曲し、ウィーンでの彼女の披露宴で初演した「奇想的円舞曲」で、オリジナルは弦楽オーケストラとのピアノ協奏曲、または弦五部とピアノの六重奏。
<ソプラノ>
*紅茶〜テオドール・ド・バンヴィル詩
エレンさん、お茶を注いでください
美しい中国のお椀に
そこでは金色の魚が
おびえたバラ色の化け物にけんかをしかけている
私はこの気違いじみた残酷さが好きだ
人が手なずけた空想の残酷さが
エレンさん、お茶を注いでください
美しい中国のお椀に
あの、赤く刺激的な空の下で
ひとりの高慢で腹黒い女が
トルコ石色の切れ長な目に
恍惚と無邪気さを浮かばせている
*タルトアラクレーム
タルト・ア・ラ・クレーム
ああ愛しいあなた
砂糖菓子もリキュールも
あなたの甘さにはかなわない
愛に満ちた甘い言葉も
甘いソネットや甘いポエムも
王冠の輝きでさえ
あなたほど私を幸せにしてはくれない
素敵な若い男性に
愛してるとささやかれても
なにも迷うことなく
ほほえんで答えるでしょう
タルト・ア・ラ・クレーム
私が愛するのはあなた!
*スペインのチョコレート〜オペレッタ「ポゾル王の冒険」より
それがスペインのチョコレート、
カップでもボールでも飲める
水ではなくてミルクでかき混ぜて溶いた
純粋なカカオのこと!
ただひとつ、フランスのホテルで飲む
チョコレートとの違いは
スペインのチョコレートの方がずっと濃いこと
スペインのチョコレートにするには
カカオに砂糖とシナモンをたっぷりと混ぜるのだ
<サクソフォン>
*クロカンブッシュ
アルトサクソフォンのために書かれた6つのお菓子の小曲集「クロカンブッシュ」は、ネーミングがお洒落なだけでなく、各々のお菓子の特徴が音楽的にも表される。ピアノ版(全12曲)、オーケストラ版(全9曲)も出版されている。
1.プラムプディング
プラムプディングはイギリスのクリスマスのお菓子で、プラムなど各種ドライフルーツの洋酒漬けやスパイスの入った蒸し菓子。クリスマスにはラム酒をかけて点火し青い炎を楽しむ事もある。曲は「とてもイギリス流なユーモアを持って」いる。
2.ピュイダムール
ピュイダムールは「愛の井戸」の意で、その名の通り丸い井戸型に焼いたパイにカスタードクリームを詰めてグラニュー糖をまぶし、表面を焼いてカラメルに仕上げたもの。パリで流行したバルフ作曲の同名のオペレッタから名付けられたともいわれる。
3.リンツァータルト
リンツァータルトはアーモンド粉やシナモンが入った生地のタルトで、中にラズベリージャムを詰め、生地を細い帯にして格子状に乗せて焼くのが特徴。リンツに由来するオーストリアのお菓子ということで、曲は「ラ・ヴァルス」を思わせるウィンナワルツ風。
4.ネグルアンシュミーズ
チョコレート入りパンプディングに温かいチョコレートソースと白い生クリームをかけたオーストリアのデザート「シャツを着たムーア人」をフランスでは「シュミーズを着たニグロ」と呼ぶ。曲はアメリカのダンス音楽「シミー」(「シュミーズ」の訛り)風。
5.ラハトロクム
トルコに古くからあるお菓子ロクムは、コーンスターチと砂糖で作るぎゅうひに似た生地に香料やナッツを加え砂糖をまぶしたもの。「ラハトロクム」とは「喉を柔らげる」という意味で、昔は苦いトルココーヒーに添えられた。曲はオリエンタルな雰囲気。
6. グレナデン
グレナデンはザクロから作るシロップで赤い色が美しく、シャーベットやゼラチン菓子、カクテル等によく使われる。ザクロはスペインの古都グラナダ(グラナダはスペイン語でザクロの意)のシンボルでもあり、曲はハバネラのリズムでスペイン風。
※お菓子については「百菓辞典(東京堂出版)」「洋菓子事典(主婦の友社)」などを参考にさせていただきました。
後援:杉並区/杉並区教育委員会 21世紀の荻窪を考える会
杉並区文化協会 社団法人荻窪法人会)参加公演

*曲目
<ピアノ>
サティ「食欲をそそらないコラール」
Erik Satie (1866-1925)
Choral inappétissant (1914)
同「アーモンドチョコレートのワルツ」(*朗読つき)
Valse du chocolat aux amandes (1913)
サンサーンス「ウェディングケーキ」
Camille Saint-Saëns (1835-1921)
Wedding-cake (caprice-valse) op.76 (1886)
<ソプラノ>
ケックラン「紅茶」
Charles kœchlin (1867-1950)
Le thé (1890-94)
オッフェンバック「タルトアラクレーム」
Jacques Offenbach (1819-80)
La tarte à la crème (1875)
オネゲル「スペインのチョコレート」
Arthur Honegger (1892-1955)
Le chocolat espagnol (1929-30)
<サクソフォン>
デルヴァンクール「クロカンブッシュ」
Claude Delvincourt (1888-1954)
Croquembouches (1926)
1.Plumpudding プラムプディング
2.Puits d'amour ピュイダムール
3.Linzer tart リンツァータルト
4.Nègre en chemise ネグルアンシュミーズ
5.Rahat Loukhoum ラハトロクム
6.Grenadine グレナデン
(ミヨー「カラメルムー(柔らかいキャラメル)」)
*出演
伊藤あさぎ(サクソフォン)
渡辺有里香(ソプラノ/*朗読)
川北祥子(ピアノ)
*歌詞大意/プログラムコメント
クロカンブッシュとは小さなシューや糖菓を円錐型に積み上げて作るフランスのお祝いのお菓子。本日はそんなクロカンブッシュのように、お菓子にまつわるフランスの小曲を集めて演奏します。
<ピアノ>
*食欲をそそらないコラール/アーモンドチョコレートのワルツ
奇抜な題名や奇妙な書き込みで知られるサティの、「倦怠というものについての私の知っているすべてを盛りこんで」「からっぽの胃袋で作曲」したという前奏曲と、次のような「お話」が楽譜のあちらこちらに書き込まれたワルツ(本日は朗読つきで演奏)。
坊やにも少しあげましょう
チョコレート、好きでしょう?
お口の中でとかしてごらん
ママ、骨があるよ!
いいえ、坊や、それはアーモンドよ
坊やは箱の中のチョコレートを全部欲しがる
なんという食いしん坊!
ママはやさしくたしなめる
いけませんよ、お腹をこわしちゃいますよ
大変だ、坊やは駄々をこねて
足をバタバタばたつかせる
*ウェディングケーキ
サンサーンスが友人で弟子のピアニスト、カロリーヌ・ド・セレスの婚礼のお祝いとして作曲し、ウィーンでの彼女の披露宴で初演した「奇想的円舞曲」で、オリジナルは弦楽オーケストラとのピアノ協奏曲、または弦五部とピアノの六重奏。
<ソプラノ>
*紅茶〜テオドール・ド・バンヴィル詩
エレンさん、お茶を注いでください
美しい中国のお椀に
そこでは金色の魚が
おびえたバラ色の化け物にけんかをしかけている
私はこの気違いじみた残酷さが好きだ
人が手なずけた空想の残酷さが
エレンさん、お茶を注いでください
美しい中国のお椀に
あの、赤く刺激的な空の下で
ひとりの高慢で腹黒い女が
トルコ石色の切れ長な目に
恍惚と無邪気さを浮かばせている
*タルトアラクレーム
タルト・ア・ラ・クレーム
ああ愛しいあなた
砂糖菓子もリキュールも
あなたの甘さにはかなわない
愛に満ちた甘い言葉も
甘いソネットや甘いポエムも
王冠の輝きでさえ
あなたほど私を幸せにしてはくれない
素敵な若い男性に
愛してるとささやかれても
なにも迷うことなく
ほほえんで答えるでしょう
タルト・ア・ラ・クレーム
私が愛するのはあなた!
*スペインのチョコレート〜オペレッタ「ポゾル王の冒険」より
それがスペインのチョコレート、
カップでもボールでも飲める
水ではなくてミルクでかき混ぜて溶いた
純粋なカカオのこと!
ただひとつ、フランスのホテルで飲む
チョコレートとの違いは
スペインのチョコレートの方がずっと濃いこと
スペインのチョコレートにするには
カカオに砂糖とシナモンをたっぷりと混ぜるのだ
<サクソフォン>
*クロカンブッシュ
アルトサクソフォンのために書かれた6つのお菓子の小曲集「クロカンブッシュ」は、ネーミングがお洒落なだけでなく、各々のお菓子の特徴が音楽的にも表される。ピアノ版(全12曲)、オーケストラ版(全9曲)も出版されている。
1.プラムプディング
プラムプディングはイギリスのクリスマスのお菓子で、プラムなど各種ドライフルーツの洋酒漬けやスパイスの入った蒸し菓子。クリスマスにはラム酒をかけて点火し青い炎を楽しむ事もある。曲は「とてもイギリス流なユーモアを持って」いる。
2.ピュイダムール
ピュイダムールは「愛の井戸」の意で、その名の通り丸い井戸型に焼いたパイにカスタードクリームを詰めてグラニュー糖をまぶし、表面を焼いてカラメルに仕上げたもの。パリで流行したバルフ作曲の同名のオペレッタから名付けられたともいわれる。
3.リンツァータルト
リンツァータルトはアーモンド粉やシナモンが入った生地のタルトで、中にラズベリージャムを詰め、生地を細い帯にして格子状に乗せて焼くのが特徴。リンツに由来するオーストリアのお菓子ということで、曲は「ラ・ヴァルス」を思わせるウィンナワルツ風。
4.ネグルアンシュミーズ
チョコレート入りパンプディングに温かいチョコレートソースと白い生クリームをかけたオーストリアのデザート「シャツを着たムーア人」をフランスでは「シュミーズを着たニグロ」と呼ぶ。曲はアメリカのダンス音楽「シミー」(「シュミーズ」の訛り)風。
5.ラハトロクム
トルコに古くからあるお菓子ロクムは、コーンスターチと砂糖で作るぎゅうひに似た生地に香料やナッツを加え砂糖をまぶしたもの。「ラハトロクム」とは「喉を柔らげる」という意味で、昔は苦いトルココーヒーに添えられた。曲はオリエンタルな雰囲気。
6. グレナデン
グレナデンはザクロから作るシロップで赤い色が美しく、シャーベットやゼラチン菓子、カクテル等によく使われる。ザクロはスペインの古都グラナダ(グラナダはスペイン語でザクロの意)のシンボルでもあり、曲はハバネラのリズムでスペイン風。
※お菓子については「百菓辞典(東京堂出版)」「洋菓子事典(主婦の友社)」などを参考にさせていただきました。
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