ジョン・ウィリアムズ2020-06-23

ジョン・ウィリアムズ(1932-)の「五つの聖なる木」(1992年、ニューヨークフィル創立150年委嘱作)は、アイルランド神話(ウィリアムズはアイルランド系アメリカ人)の五つの聖なる木を題材とする5楽章構成のファゴット協奏曲で、本人は「何千年も昔の祖先は木を伐採する前に霊に祈っていた」事が「それ自体が木であるファゴットのために木の音楽を書く」きっかけになったと語っています。

カフコンスではこれまでに1楽章「Eó mugna」(来世の木、オーク)、2楽章「Tortan」(魔女の木、エルダー)3楽章「Eó Rossa」(死と再生の木、ユー)を演奏、今回とりあげる5楽章「Dathi」は神託とミューズの木、オルダー(ハンノキ?)を指します。

江草:ジュラシックパークがウィリアムズの曲の中だけでなく、全映画音楽の中で一番好きです。ハリー・ポッターも名曲揃いですね。

川北:スターウォーズが好きです。一番好きな曲は「Here they come」。「五つの聖なる木」の2楽章は格納庫でのバトルの気分でした。今回の「Dathi」は終楽章ということもあり古代の森の惑星へライトセーバーを埋めに行く気分? ちなみにジョン・ウィリアムズもプレヴィンと同じくカステルヌオーヴォテデスコの弟子ですが、グリーティングカードは貰っていないようです。


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今週末の演奏メニュー

2020年6月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第144回
デュオのひととき〜composers offscreen

ニーノ・ロータ「トッカータ」
ジョン・ウィリアムズ「5つの聖なる木」より「Dathi」
エンニオ・モリコーネ(ピアノ曲)
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ「ソナチネ」(全3楽章)
予定

江草智子(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)

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エンニオ・モリコーネ2020-06-25

「映画音楽は趣味に過ぎない」というロータと同じく、500本もの映画音楽で知られるエンニオ・モリコーネ(1928-)も、自分は「作曲家」だが「映画音楽を書くときにも実験をやめないし映画音楽も創造性や方向性を広げてくれる」と語っており、「経済的理由で」映画音楽ばかりを書く時期もあったが、「経済的に落ち着いた」80年代からはオフスクリーンの作曲活動も再開し、90歳で映画音楽から引退した後も書き続けているそうです。あまり演奏されていない印象ですが、作品は150を超えるとの事です。

新古典的で簡潔なロータ作品に対して、ポスト・ウェーベルンを自負するモリコーネは実験的で、今回とりあげる「ピアノのための4つのスタディ(1983/89)」第1曲も、6つの音(鍵盤)のみを使用、強弱はpppppとfffffのみ、曲の始めから終わりまでペダルを踏み続けたり、音型は鏡像にしてみたり音符の数を規則的に並べてみたり、といった実験的要素が詰め込まれています。

江草:過度な暴力描写が嫌いだそうで、共感しています。激しい映画が多いので、自分が音楽を作っていても、通して見れないものが多いのでは…。最近の作品だと、ヘイトフルエイトの「白い地獄」という曲でファゴットが良い不気味さを出しててかっこ良かったです。

川北:ピアノ曲は「クラシックも書いているのが意外」な作曲家を選びました。モリコーネは残虐なシーンが嫌いな上にチョコホリックだそうで、私も親近感を抱いています。「新・夕陽のガンマン」と「ニュー・シネマ・パラダイス」と「ヘイトフルエイト」が同じ作曲者だとは驚きですが、「ピアノのためのスタディ」はヘイトフルエイト系で、夜に弾いているとちょっと怖いです…


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今週末の演奏メニュー

2020年6月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第144回
デュオのひととき〜composers offscreen

ニーノ・ロータ「トッカータ」
ジョン・ウィリアムズ「5つの聖なる木」より「Dathi」
エンニオ・モリコーネ「四つのスタディ」より 第1曲(ピアノソロ)
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ「ソナチネ」(全3楽章)

江草智子(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)

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マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ2020-06-26

ここまでの3人が「クラシック作品も手がけていた映画音楽の大御所たち」なら、カステルヌオーヴォテデスコ(1895-1968)は「多くの映画音楽も手がけたクラシックの作曲家」。作品数はクラシックも映画音楽も200以上とされます(映画音楽は音楽ライブラリー用ストックミュージックを含む)。

カフコンスで演奏した曲で辿ると、初期の「子守歌(1914,21)」はピツェッテイに師事していた頃の近代イタリア歌曲、パリ音楽院企画に参加した「ヴォカリーズ(1928)」はカゼッラにより諸外国へ紹介された時期の作で、反ユダヤ主義が高まる中で自らのルーツも表現しています。39年にアメリカへ逃れるとハリウッドで映画音楽を手がけ、門下からはヘンリー・マンシーニ、ジェリー・ゴールドスミス、ジョン・ウィリアムズら著名な映画音楽作曲家を輩出、「タンゴ(1953)」も弟子アンドレ・プレヴィンへ贈った作品でした。

ファゴットとピアノのための「ソナチネ(1946)」はハリウッド時代の作。本人は映画音楽からの自作への影響を否定していたそうですが(そもそも映画界側がフルオーケストラやライトモティーフを扱えるクラシック作曲家を求めていた)、少ないモティーフを巧みに展開させる手法は映画音楽でさらに研ぎ澄まされたと言えるかもしれません。

江草:テデスコが音楽を書いた「そして誰もいなくなった」(1945年)は、登場人物達が船に乗って島に向かう場面から始まりますが、後ろに流れる木管楽器同士の絡みが、本当に船酔いしてくるような不安をあおる感じで、でもおどけてもいるという…。人が殺されていく映画なので、緊迫しているかと思ったら、役者さんたちに余裕があって、顔芸や皮肉のきいたセリフで楽しませてくれます。1946年作曲のソナチネもそんな独特な味わいがあるかもしれません。

川北:今回は多作な人ばかりな気がします。速筆多作でないと映画音楽作曲家は務まらないのでしょうか。「そして誰もいなくなった」にはMusical Directorという肩書でチャールズ・プレヴィン(アンドレ・プレヴィンの親戚)の名前もありました!


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今週末の演奏メニュー

2020年6月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第144回
デュオのひととき〜composers offscreen

ニーノ・ロータ「トッカータ」
ジョン・ウィリアムズ「5つの聖なる木」より「Dathi」
エンニオ・モリコーネ「四つのスタディ」より 第1曲(ピアノソロ)
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ「ソナチネ」(全3楽章)

江草智子(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)

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