熊蜂の飛行(リムスキーコルサコフ)2013-04-21

ハエが呼んだら蜂が来た、ということで(?)、フルートでもう1曲演奏するのは有名な「熊蜂の飛行」です。

「熊蜂の飛行」は超絶技巧の小品としてソロ楽器で演奏される事が多いですが、元はリムスキーコルサコフ(1844-1908)のオペラ「サルタン王(1900)」3幕1場の「策略によって遠い島に流されてしまった王子が、白鳥の魔法で蜂※註に姿を変え、故郷へ飛んで行く」という場面の音楽。今回はオペラバージョンで演奏しますので、おなじみの曲に絡む白鳥の「王子よ、海の上を飛んで行け!」という短い歌も併せてお愉しみいただけたらと思います。

この歌が入ると一気に「ワルキューレの騎行」的になる気がしますが(題名も似てますし/笑)、実際、1890年代以降のリムスキーコルサコフのオペラにはワーグナー研究が反映されており、「熊蜂の飛行」も王子の2つのライトモティーフでできています(だって王子の変身した姿ですからね)。

16分音符モティーフの元ネタ(2段目から):
16分音符モティーフの元ネタ

8分音符モティーフの元ネタ(3小節目から):
8分音符モティーフの元ネタ

が、曲は1分ちょっとで終わってしまいますので、こんな分析よりも超高速のフルートに注目していただくのが吉かと(笑)

※註プーシキンの原作とオペラ原語では「マルハナバチ」(大型のミツバチ)。マルハナバチの大型のものが「クマバチ」で、方言(訛り)の「クマンバチ」が指す「スズメバチ」のような獰猛な蜂ではないそうです。また、オペラの3幕2場では故郷へ飛んでいった蜂(王子)が自分を陥れた人々を懲らしめますが、復讐というより大騒動を起こさせるといったコミカルな雰囲気で、やはり獰猛な蜂を想定したものではなさそうです。


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来週の演奏メニュー

2013年4月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第101回
虫のカタログ

アルカン(生誕200年)「コオロギ」pf.
ゴダール「ミツバチ」/シャブリエ「セミ」sop.
フランセ「ムカデ/甲虫」pf.
ヴィエネル「カタツムリ/アリ/蝶/ホタル」sop.
ランゴー「シバンムシ/大蚊/蚊」pf.
ブリテン(生誕100年)「バッタ/スズメバチ」ob.
ファイン(生誕100年)「蜘蛛」fl.
マヌーキアン「ハエ」sop.
リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」fl.&sop.※追加(4/20)
サンサーンス「テントウムシ/トンボ」sop.
ほか予定

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:
山本葵(フルート)
若木麻有(オーボエ)

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ミツバチ(ゴダール)/セミ(ショーソン)2013-04-23

欧米人は虫の声を「雑音」と感じる人が多いと言われますが、芸術歌曲に様々な虫が登場して魅力的な「音」を聞かせてくれるのは、詩人や作曲家が雑音さえも詩的、音楽的に捉える人種だからなのでしょうか。

「虫のカタログ」の選曲段階で一番多く見つかったのは意外にもセミの作品でした。セミといえば欧米人には特に「うるさいだけ」と言われてしまう虫。日本と違って単調に鳴くものしかいないのも「雑音」とされる原因のようで、たとえば鳥の声を楽譜上にリアルに再現しているメシアンでさえセミの声は単純な雑音と捉えているように感じられます。シャブリエの歌曲「セミ」ではセミを音楽家として好意的に扱うものの声の描写はやはり単調、サンサーンスら何人もが曲をつけている「アリとセミ」(ラフォンテーヌの「アリとキリギリス」の物語)ではアリに「夏に歌っていたのなら冬には踊れば?」と言われる始末です。

そんな中で異色だったのは「生きるのに疲れ、しかし歌い続けた事に誇りを持って眠りにつく」という詩が印象的なマスネの「セミの死」と、「ゼウスに不死を授けられ神々のように生きる」と高らかに歌うショーソン(1855-99)の「セミ(1885-7頃)」で、今回は生き続けるほうを選びました(笑)。哲学的な詩と旋法的な書法が相まって風格ある歌曲となっていますが、果たしてセミはそれほどまでに神々しいものなのでしょうか…?
※4/24追記:ショーソンの詩はアナクレオンのオードのド・リールによる翻訳で、古代ギリシャでは地中から生まれるセミ=復活・不死のシンボルだったようです(セミさん疑ってごめんね)!
セミ

ミツバチも春の詩によく登場しますが、花や鳥とセットで、脇役に回る事が多いのではないでしょうか。やはりセミのようなドラマティックな生涯でないと主役は張れないのかもしれません。ゴダール(1849-95)の「ミツバチ(1878頃)」は、詩は庭の花の上を飛ぶだけですが、曲はまさにメロディメーカーの面目躍如といった何とも愛らしい歌。綺麗さでは今回イチオシです!
ミツバチ


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今週末の演奏メニュー

2013年4月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第101回
虫のカタログ

アルカン(生誕200年)「コオロギ」pf.
ゴダール「ミツバチ」/シャブリエ「セミ」sop.
フランセ「ムカデ/甲虫」pf.
ヴィエネル「カタツムリ/アリ/蝶/ホタル」sop.
ランゴー「シバンムシ/大蚊/蚊」pf.
ブリテン(生誕100年)「バッタ/スズメバチ」ob.
ファイン(生誕100年)「蜘蛛」fl.
マヌーキアン「ハエ」sop.
リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」fl.&sop.
サンサーンス「テントウムシ/トンボ」sop.
ほか予定

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:
山本葵(フルート)
若木麻有(オーボエ)

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カタツムリ/アリ/蝶/ホタル(ヴィエネル)2013-04-25

「虫のカタログ」全曲目が決定しました(詳細は記事の最後に記載)。今週末28日には20匹のかわいい奴らに是非会いにいらしてください!

今回はルトスラフスキ(生誕100年)の「お花の歌とお話の歌」も演奏したかったのですが、オリジナルがオーケストラ伴奏で、虫も蝶とバッタしか登場しないので、同じデスノスの詩を持つヴィエネル(1896-1982)の「お話の歌(1954-5)」を取り上げることにしました。

chantefables
デスノスの「お話の歌」は様々な動物が登場するユーモアたっぷりの詩集、ヴィエネルといえばかのドゥーセの相棒、となれば楽しい歌曲集でないはずがありません。楽譜は仲間うちで演奏するためのラフな書き方にも思えますが、詩集の30篇全てに作曲され、全曲まとめて出版されている事にも感謝。

さて大嫌いな「虫」もこうして集中的にふれていると少しは「かわいい」と思える気持ちが芽生えてきましたが、まだまだそれは五感のうちの聴覚だけの話で、「18メートルのアリ」「3億匹の蝶」「ホタルの(たくさん集まって光る)月」なんてお伽噺だとしてもリアルには想像したくありません。ましてカタツムリを「食べちゃうわよ」なんて…(泣)


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今週末の演奏メニュー

2013年4月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第101回
虫のカタログ

アルカン(生誕200年)「コオロギ」pf.
ゴダール「ミツバチ」/シャブリエ「セミ」sop.
フランセ「甲虫/ムカデ」pf.
ヴィエネル「カタツムリ/アリ/蝶/ホタル」sop.
ランゴー「大蚊/ヤスデ*/シバンムシ/蚊」pf. *4/25追加
ブリテン(生誕100年)「バッタ/スズメバチ」ob.
ファイン(生誕100年)「蜘蛛」fl.
マヌーキアン「ハエ」sop.
リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」fl.&sop.
サンサーンス「テントウムシ/トンボ」sop.

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:
山本葵(フルート)
若木麻有(オーボエ)

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