ミツバチ(ゴダール)/セミ(ショーソン)2013-04-23

欧米人は虫の声を「雑音」と感じる人が多いと言われますが、芸術歌曲に様々な虫が登場して魅力的な「音」を聞かせてくれるのは、詩人や作曲家が雑音さえも詩的、音楽的に捉える人種だからなのでしょうか。

「虫のカタログ」の選曲段階で一番多く見つかったのは意外にもセミの作品でした。セミといえば欧米人には特に「うるさいだけ」と言われてしまう虫。日本と違って単調に鳴くものしかいないのも「雑音」とされる原因のようで、たとえば鳥の声を楽譜上にリアルに再現しているメシアンでさえセミの声は単純な雑音と捉えているように感じられます。シャブリエの歌曲「セミ」ではセミを音楽家として好意的に扱うものの声の描写はやはり単調、サンサーンスら何人もが曲をつけている「アリとセミ」(ラフォンテーヌの「アリとキリギリス」の物語)ではアリに「夏に歌っていたのなら冬には踊れば?」と言われる始末です。

そんな中で異色だったのは「生きるのに疲れ、しかし歌い続けた事に誇りを持って眠りにつく」という詩が印象的なマスネの「セミの死」と、「ゼウスに不死を授けられ神々のように生きる」と高らかに歌うショーソン(1855-99)の「セミ(1885-7頃)」で、今回は生き続けるほうを選びました(笑)。哲学的な詩と旋法的な書法が相まって風格ある歌曲となっていますが、果たしてセミはそれほどまでに神々しいものなのでしょうか…?
※4/24追記:ショーソンの詩はアナクレオンのオードのド・リールによる翻訳で、古代ギリシャでは地中から生まれるセミ=復活・不死のシンボルだったようです(セミさん疑ってごめんね)!
セミ

ミツバチも春の詩によく登場しますが、花や鳥とセットで、脇役に回る事が多いのではないでしょうか。やはりセミのようなドラマティックな生涯でないと主役は張れないのかもしれません。ゴダール(1849-95)の「ミツバチ(1878頃)」は、詩は庭の花の上を飛ぶだけですが、曲はまさにメロディメーカーの面目躍如といった何とも愛らしい歌。綺麗さでは今回イチオシです!
ミツバチ


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今週末の演奏メニュー

2013年4月28日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第101回
虫のカタログ

アルカン(生誕200年)「コオロギ」pf.
ゴダール「ミツバチ」/シャブリエ「セミ」sop.
フランセ「ムカデ/甲虫」pf.
ヴィエネル「カタツムリ/アリ/蝶/ホタル」sop.
ランゴー「シバンムシ/大蚊/蚊」pf.
ブリテン(生誕100年)「バッタ/スズメバチ」ob.
ファイン(生誕100年)「蜘蛛」fl.
マヌーキアン「ハエ」sop.
リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」fl.&sop.
サンサーンス「テントウムシ/トンボ」sop.
ほか予定

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:
山本葵(フルート)
若木麻有(オーボエ)

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