オーヴェルニュとバスクの犬2022-04-17

カントルーブとの出会いは17〜8年前、渡辺さんから「オーヴェルニュの歌」をカフコンスで全曲演奏しようと言われたのがきっかけでした。私はその中の「バイレロ」が有名ということくらいしか知らなかったし、正直、全曲なんて…とも思いましたが、蓋を開けてみたら魅力的な曲ばかりで、全曲演奏し終わってからも何度も取り上げるくらいお気に入りの曲になりました。

こんな曲集に目をつけるのもすごいのですが、渡辺さんのさらにすごいところは「オーヴェルニュの歌」はオック語、「バスク地方の歌」はバスク語で歌うというこだわり。フランス語版もありますが、やはり原語だと語感やフレーズも全然違います。少しでもその文化に近づこうという挑戦を見習って、私もオーヴェルニュはボルヴィックを飲み、バスクはチーズケーキを食べたりしながら歌の風景を想像していますが…

さて、おなじみのカントルーブながら初めてのバスクは、1小節目からこれぞ異国という前奏で始まり、聞き慣れぬ言語で歌われるのですが、第3曲には懐かしい声(音)も出てきました。オーヴェルニュの「行け!犬よ行け!(譜例はこちら)」にもあった犬の声です!

吠える犬@バスク
鳴き続ける犬@バスク

写真の1段目からは「彼女の家に着くと犬が吠え始めた。僕は慌てて隠れ、ナイチンゲールは逃げて木の上にとまった。」という様子が伴奏の音でも表されます。4段目で「誰が来たのかしら?」と出てきた女の子に視点が移ると、まだ鳴き続けている犬の声が今度は少し距離感を持って聞こえてきます。

「バスク地方の歌」はこの他に、ナイチンゲールを讃えまくる歌、呑んだくれのマダムの歌など全5曲。異文化の謎解きを楽しみながら練習していきたいと思います。(川北)


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来月の演奏メニュー

2022年5月22日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第149回
民謡紀行〜バスクからスペインへ

ラヴェル「スペインの歌」
カントルーブ「バスク地方の歌(全5曲)」
トゥリーナ「ゲルニカの木」(ピアノソロ)
カステルヌオーヴォ=テデスコ「3つのセファルディの歌」
オブラドルス「スペインの古い歌」より
  Trova / Al amor / Oh, que buen amor /
  La guitarra sin prima / El tumba y lé

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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所感―セファルディの歌と口承2022-04-23

スペインの歌を歌った経験は少ないですが、今回のプログラムの中でもラヴェル、カステルヌオーヴォ-テデスコ、オブラドルスの曲を練習していると、曲を通して刻まれ流れるリズムに身をゆだねながら歌うことがとても大切に感じられます。今回のプログラムは民謡ベースの曲目で揃っているのでますますそう感じるのかもしれません。どんな曲でもそうなのですが、本場出身の歌手の録音などを聞くと、ああ、そうか、と自分には体得しきれない何かを知ることはよくあります。今回もまさにそうで、特に装飾音の感じや拍の表し方が難しいな、と思います。

そんな中、今回演奏するセファルディの民謡の原曲のひとつと思われる歌を歌っているおじいさん・おばあさんの録音を聞くことができました。楽譜とはもちろん異なりますが、大筋ではほぼ同じ曲もあります。採譜のすごさも感じますし、私にとってはこんなに難しい曲をよく口伝えで歌い継いで来たなあ、とも思いました。日本の民謡も八木節などのように比較的音程とリズムがしっかりしているものでないとなかなか歌うことができません。歌えるといっても、独特な歌いまわしは日本人である自分でさえ非常に難しいです。楽譜から音を拾うのでなく、口承だからこそのワザなのだろうと思います。

ところで、口承というと思い出すのは、私の中学の体育祭です。体育祭の前に応援団の先輩から応援歌を口伝えで教わるのです。しかし教わった歌は、歌詞とリズムは大体わかるものの、音程は高いか低いかのどちらかでほぼ叫び、といったものでした。のちのちその歌はロシアの収穫の歌だったと判明するのですが(全くの偶然に“世界の歌曲集”のような楽譜の中で見つけた)、音程は崩壊していたものの歌詞とリズムはほぼ原曲と同じでした。口承は例年成功していたのだと思いますが、応援団のエール風な歌い方ゆえに段々とメロディが変化し、私たちの頃にはほぼ叫びとなって伝わってきたのだろうと想像します。(渡辺)


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来月の演奏メニュー

2022年5月22日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第149回
民謡紀行〜バスクからスペインへ

ラヴェル「スペインの歌」
カントルーブ「バスク地方の歌(全5曲)」
トゥリーナ「ゲルニカの木」(ピアノソロ)
カステルヌオーヴォ=テデスコ「3つのセファルディの歌」
オブラドルス「スペインの古い歌」より
  Trova / Al amor / Oh, que buen amor /
  La guitarra sin prima / El tumba y lé

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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セファルディの愛の歌2022-04-28

カステルヌオーヴォテデスコの「セファルディの歌」のリクエストをいただき、楽譜を見てびっくりしたのは、宗教的歌詞でなく愛の歌だったことです。

セファルディやヘブライなどのタイトルを見ると、どうしても宗教的な内容を想像しがちですが、「セファルディの歌」で神に祈るのは、夜に恋人の部屋に忍び込もうとする男性が「どうか彼女の母親がぐっすり寝ていますように」という祈りだったりして、そう思うと異国の不思議な旋律も急に妖しいロマンティックな歌に感じられます。

伴奏は、カントルーブが周りの雰囲気を表すのに対して、こちらは伴奏型に徹しています。一番ごとに変化しますが、情景が変わるというより音型が細かくなっていく感じです。ハープの為に書かれているので、弾き語り(竪琴?民族楽器?)風にも思えます。

ところで、歌曲は歌手の声に合わせて移調する(高さを変える)ことがあり、普通は(今回のラヴェルも)元の楽譜を見て演奏できるのですが、「セファルディの歌」は移調譜を作成しました。偶然にも4年前のカステルヌオーヴォテデスコの「ヘブライの歌」以来です。「ヘブライの歌」や今回の3曲目の部分的に半音ズレるような独特の節回しは脳内移調の妨げになる気がします。でも覚えてしまえば頭から離れないキャッチーな歌なので、意外に口承もいけるかもしれません。(川北)


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来月の演奏メニュー

2022年5月22日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第149回
民謡紀行〜バスクからスペインへ

ラヴェル「スペインの歌」
カントルーブ「バスク地方の歌(全5曲)」
トゥリーナ「ゲルニカの木」(ピアノソロ)
カステルヌオーヴォ=テデスコ「3つのセファルディの歌」
オブラドルス「スペインの古い歌」より
  Trova / Al amor / Oh, que buen amor /
  La guitarra sin prima / El tumba y lé

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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