イベール「ドンキホーテの4つの歌」2012-11-07

ドンキホーテの歌曲というと、ラヴェルの「ドゥルシネア姫に寄せるドンキホーテ」と、「シャリアピンの映画のために書かれたが採用されず、映画ではイベール作品が使われた」というエピソードが思い浮かぶのではないでしょうか。

(ラヴェルは訴訟も起こしており、映画製作者がコンペと知らせずに複数の作曲家に依頼していたとも伝えられますが、実際には「製作者が何人かの作曲家を検討した後、ラヴェルに依頼したが、曲の完成が撮影に間に合わず、急遽イベールに依頼し直した」という説が有力のようです。また、この時期のラヴェルは手が思うように動かない症状が進行し、記譜に支障をきたしていました。)

今回は、そのイベール作品のほうを演奏するので、映画を見てみることにしました。シャリアピン主演、パブスト監督の「ドンキホーテ」(1933年)です。さっそく分かった事と感想を箇条書きにて。

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・イベールに期待して見ていると、最初に歌われるのは全然知らない曲でビックリします。クレジットによればダルゴムイシスキーの「シェラネバダ」(写真↑)。シャリアピンがゴリ押ししたとも言われますが、曲ができていなくて既製曲の歌詞を差し替えて間に合わせた可能性も考えられそうです。

・その後イベールの1〜3曲が歌われるシーンは、ラヴェルの3曲に置き換えもできそうですが、やはりラヴェルよりイベールのほうが映画には沿っている印象。クレジットにはScénario de Paul MORAND(ラヴェルの詞)、Dialogue d'Alexandre ARNOUX(イベール2〜4曲の詞*)とあり、イベールには(製作が進んだ時期だった為)より具体的なリクエストがなされたとも考えられそうです。(*1曲目の詞はロンサール偽作。)

・芸術歌曲としてはちょっとクサくも感じる終曲(私だけ?)の、映画へのマッチングは凄く、その場で書き上げたような気軽さの「サンチョの歌」も楽しいです。ラヴェルがこの2つも書いていたらどんな曲になったのか聴いてみたかった所です。

・シャリアピン△

・ビバ映画。製作者は音楽の他にも色々とトラブルを起こして行方をくらましてしまったようですが、こんな名作を後世に残してくれただけで感謝するべきかも。

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ラヴェルのエピソードのせいで「ラヴェルは芸術的すぎて、一般受けするイベールが選ばれたのでは?」などと過小評価もされてしまうイベールの「ドンキホーテ」ですが、こちらはこちらでまた繊細な名曲です。今回は字幕付きの演奏で、映画気分も盛り上げてみたいと思います。


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今月の演奏メニュー

2012年11月18日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第97回
物語 ~ イベール没後50年・フランセ生誕100年記念

イベール「物語」より sax/pf
  金の亀を操る女
  小さな白いロバ
  テーブルの下で
同「ドン・キホーテの4つの歌」bar/pf ※字幕付き仏語演奏
  出発の歌
  ドゥルシネアへの歌
  公爵の歌
  ドンキホーテの死の歌
フランセ「5つの異国のダンス」sax/pf
同「9つの小話」bar/sax/pf ※字幕付き仏語演奏

伊藤あさぎ(サクソフォン)
藪内俊弥(バリトン)
川北祥子(ピアノ)

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フランセ「5つの異国のダンス」2012-11-13

楽譜もまるで模様のようです
プログラム後半は評論家ロスタンに「イベールの息子」とも呼ばれたフランセです。

「5つの異国のダンス」は、題名通りラテンのダンスのリズムで書かれた5曲「パンビッシュ(ドミニカ)」「バヤオ(ブラジル)」「マンボ(キューバ)」「遅いサンバ(ブラジル)」「メレンゲ(ドミニカ)」から成る小品集です。

「物語」「ドンキホーテ」のような"異国情緒"とは違い、リズムパターンのみで(楽譜もまるで模様のよう)、あっという間に終わってしまいますが、一瞬のエキゾティックな気分を楽しんでいただけたらと思います。

なお「異国のダンス」のオリジナルは1957年の2台ピアノ版(8曲)で、娘との共演用に書かれたはずですが、61年にサックスとピアノ版、81年に管打楽器アンサンブル版(8曲)にも編曲されました。娘さんが機嫌を損ねなかったかちょっと心配です...


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今月の演奏メニュー

2012年11月18日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第97回
物語 ~ イベール没後50年・フランセ生誕100年記念

イベール「物語」より sax/pf
  金の亀を操る女
  小さな白いロバ
  テーブルの下で
同「ドン・キホーテの4つの歌」bar/pf ※字幕付き仏語演奏
  出発の歌
  ドゥルシネアへの歌
  公爵の歌
  ドンキホーテの死の歌
フランセ「5つの異国のダンス」sax/pf
  パンビッシュ
  バヤオ
  マンボ
  遅いサンバ
  メレンゲ
同「9つの小話」bar/sax/pf ※字幕付き仏語演奏

伊藤あさぎ(サクソフォン)
藪内俊弥(バリトン)
川北祥子(ピアノ)

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フランセ「9つの小話」2012-11-14

ロバ字幕準備中
イベールとフランセの軽妙洒脱合戦プログラム、メインは「バリトン、テナーサックス、ピアノ」という珍しい編成の「9つの小話」です。フランセの最後の作にあたり、1997年の作曲ですが、そこは分かり易くて安心のフランセ作品、サックスであんな音やこんな音を表したり、名曲のパロディ、”現代音楽への皮肉"まで登場する、楽しい歌となっています。

テキストは17世紀に書かれたジェデオン・タルマン・デ・レオーの「逸話集」。古今東西の有名無名な人物の逸話を集めた1000ページを超える文献とのことで、フランセの選んだ9編の主人公も「アンリ4世」から「ある女」まで様々です(ので曲名Histoirettesも「小話」と訳してみました)。フランス人の笑いのツボがよくわからない話もありますが、字幕つきの演奏でオチもリアルタイムに味わっていただけたらと思います!


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今月の演奏メニュー

2012年11月18日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第97回
物語 ~ イベール没後50年・フランセ生誕100年記念

イベール「物語」より sax/pf
  金の亀を操る女
  小さな白いロバ
  テーブルの下で
同「ドン・キホーテの4つの歌」bar/pf ※字幕付き仏語演奏
  出発の歌
  ドゥルシネアへの歌
  公爵の歌
  ドンキホーテの死の歌
フランセ「5つの異国のダンス」sax/pf
  パンビッシュ
  バヤオ
  マンボ
  遅いサンバ
  メレンゲ
同「9つの小話」bar/sax/pf ※字幕付き仏語演奏
  アンリ王と村長とロバ
  アンリ王と農夫
  醜い老女
  昏睡状態の女
  ドカーズ氏
  コンパン夫人
  ブラグロンヌ侯
  ドゥ・ラ・フォンテーヌ氏と夫人とシスター
  つけボクロ

伊藤あさぎ(サクソフォン)
藪内俊弥(バリトン)
川北祥子(ピアノ)

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