マデリーン・ドリング〜生誕100年に先駆けて(カフコンス第153回)2022-12-11

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vo
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encore

*曲目

ドリング「フルート・オーボエ・ピアノのためのトリオ」
Madeleine Dring (1923-77)
Trio for flute, oboe and piano (1968)
  1.Allegro con brio
  2.Andante semplice
  3.Allegro giocoso

同「シェイクスピアによる歌曲」より
Madeleine Dring
Shakespeare songs
  Willow song (1960頃) 柳の歌 *作曲者不詳・ドリング編曲
  Blow, blow thou winter wind (1944) 吹け 冬の風よ
  Come away, death (1944) 来たれ 死よ
  The cuckoo (1960頃) カッコウ
  It was a lover (1944頃) それは恋する男

同「オーボエ・ファゴット・ピアノのためのトリオ」
Madeleine Dring
Trio for oboe, bassoon and keyboard (1971)
  1.Drammatico - alla baroque - Allegro moderato e deciso
  2.Dialogues 対話
  3.Allegro con brio

(同「カッコウ」bis)


*出演

中村淳(フルート)
荒木良太(オーボエ)
江草智子(ファゴット)
柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)


*歌詞大意

「柳の歌」

哀れな女が鈴懸の木の下に座り 嘆いていた
おお柳よ 手を胸にあて 額を膝にのせて
*おお 柳が私の冠になるでしょう
歌っておくれ 青い柳よ
ああ 青い柳が私の冠になるでしょう

女は嘆いていた 歌い 泣きながら
おお柳よ もう何の希望もない
  真の愛が去ってしまったから
*おお 柳が〜

柳の冠をつけましょう 愛が消えてしまったから
おお柳よ 捨てられた恋人に相応しい冠を
*おお 柳が〜

「吹け 冬の風よ」

吹け 冬の風よ
お前はそれほど冷たくない
人間の不義理ほどには

お前の歯はそれほど痛くない
なぜならお前の姿は目に見えないから
たとえお前の息が荒くとも

*ヘイ ホー 歌え 緑の柊に
友情はどれも作り物 愛はどれも愚か
そして ヘイ ホー 柊よ
この暮らしこそ喜びだ

凍れ 冷たい空よ
お前はそれほど噛み付いて来ない
忘れられた恩ほどには

お前は水を歪ませるが
お前の刃はそれほど鋭くない
思い出されることのない友ほどには

*ヘイ ホー〜

「来たれ 死よ」

来たれ 死よ
そして 悲しい糸杉の中に私を横たえておくれ
消え去れ 息よ
私は心無い娘に殺されたのだ

白い装束に イチイを刺して
用意しておくれ
私の死は 誰とも
分かち合えないのだ

芳しい花の一輪さえも
私の黒い棺に投げ入れないでおくれ
友人の一人にさえも 哀れな私の亡骸を
見送らせないでおくれ

何千もの溜息を抑えて
私を横たえておくれ おお
恋人が決して私の墓を見つけず
決してそこで泣くことがない所へ

「カッコウ」

まだらなヒナギク 青いスミレ
銀白のタネツケバナ
黄色のキンポウゲが
喜ばしく野を彩るとき

*木々にとまったカッコウが
女房持ちをからかって歌う こんな風に─
クックー クックー クックー
おお 恐ろしい言葉 女房持ちには耳障り※

羊飼いが麦の笛を吹き
陽気なヒバリが農夫を起こし
鳩やカラス 小鳥が番い
娘たちが夏服を洗うとき

*木々にとまったカッコウが〜

※cuckold(寝取られた男)と聞こえるため耳障りなのだが
この言葉も語源はカッコウである

「それは恋する男」

それは恋する男とその恋人
ヘイ ホー ヘイ ノニノ と
緑のとうもろこし畑を通って行ったのは
*春に 素敵な愛の季節に
鳥たちがヘイ ディンディンと鳴く時に─
恋人たちは春が好きだ

広いライ麦畑に
かわいい恋人たちが寝ころがって

この歌を歌い始めたのだ
人生は花のようにはかないものだ と

だから この時を大事にしよう
ヘイ ホー ヘイ ノニノ
愛が一番なのだから
*春に〜


*ブログ

2022-12-14 ご来場ありがとうございました
2022-12-11 マデリーン・ドリング〜生誕100年に先駆けて(カフコンス第153回)
2022-12-10 明日開催です!
2022-12-06 オーボエ・ファゴット・ピアノのためのトリオ
2022-12-02 シェイクスピアによる歌曲
2022-11-27 フルート・オーボエ・ピアノのためのトリオ
2022-11-22 ロジャー・ロード
2022-11-16 マデリーン・ドリング
2022-11-01 生誕100年に先駆けて

ヴォカリーズ集vol.6〜イタリア編(カフコンス第152回)2022-09-18


*曲目

イタリア・リコルディ社
『新しいスタイルのヴォカリーズ集』より
Vocalizzi nello stile moderno (1929)

チレア「主題と三つの変奏」(高声用)
Francesco Cilea (1866-1950)
Tema con tre variazioni
  主題 moderato
  変奏1 Poco più mosso
  変奏2 Andante
  変奏3 Moderato

ポッツォーリ「ハバネラ風に」(中声用)
Ettore Pozzoli (1873-1957)
A guisa di Habanera

ジョルダーノ「半音の練習」(中声用)
同「音階の練習」(高声用)
Umberto Giordano (1867-1948)
Esercizio di semitoni
Esercizio di scale
 *ゲスト演奏

カステルヌォーヴォ=テデスコ「九月の空」
Mario Castelnuovo-Tedesco (1895-1968)
Cielo di settembre op.1 (1910)
 *ピアノソロ

同「ヴォカリーズ練習曲(ヘブライの歌)」
Mario Castelnuovo-Tedesco
Vocalise-ètude op.53 (1928)
 *フランス版ヴォカリーズ練習曲集より

同「パンとエコー」(高声用)
同「船乗りの弔歌のように」(低声用)
同「フォックス・トロットのテンポで」(中声用)
Mario Castelnuovo-Tedesco
Tre vocalizzi op.55 (1928)
  Pan ed Eco
  Come una nenia marinaresca
  Tempo di fox-trot

(ジョルダーノ「音階の練習」)


*出演

柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:宮本芽衣(ソプラノ)


*プログラムコメント

 ヴォカリーズといえばラフマニノフの「ヴォカリーズ」やラヴェルの「ハバネラ形式のヴォカリーズ」がまず思い浮かびますが、後者はフランスのパリ音楽院が1906年から約30年にわたって国内外の作曲家に委嘱した150曲以上に及ぶ曲集「ヴォカリーズ練習曲の新しいレパートリー」に収められています。本日のカフコンスはそのイタリア版と言えるリコルディ社の「新しいスタイルのヴォカリーズ集」の特集です。

 「新しいスタイルのヴォカリーズ集」はイタリアの著名な作曲家16人が三曲ずつ(高声用、中声用、低声用)を一斉に作曲して出版されました。今回は、当時の大御所でこの曲集の中心人物だったであろう年長者三人と、最年少の新鋭を取り上げます。

 オペラ「アドリアーナ・ルクヴルール」等で有名な最年長チレアの高声用は、声楽では珍しい変奏曲。ピアノやソルフェージュの教本も書いているポッツォーリの中声用はハバネラで、フランス版ヴォカリーズ集への意識(対抗心?オマージュ?)も感じられます。

 「アンドレア・シェニエ」等のオペラで激情派とも呼ばれるジョルダーノの三曲は(意外にも?)学習者に寄り添った内容の練習曲です。本日は10代の若いゲストの演奏で二曲をお聴きいただきます。

 大先輩達から30歳若いカステルヌオーヴォ=テデスコは、既に海外にも進出し、フランスのヴォカリーズ集にも参加していました。フランス版は「ヘブライの歌」とも呼ばれ、彼のルーツであるユダヤの嘆きの歌を思わせます。(彼はスペイン系ユダヤ・セファルディの家系で、その後1939年にイタリアを脱出、アメリカへ渡ってハリウッドで活躍しました。)

 イタリア版の三曲は、それぞれ発想標語に加えて、イメージが膨らむような引用が楽譜の余白に書き添えられているのが特徴。「アンダンテ、牧歌風に」〈パンとエコー〉は、声が表すパンの笛をエコー役のピアノが模倣します。「とても静かに憂鬱に、船乗りの弔歌のように」にはペレアスとメリザンドからの台詞〈港を出ていくのは大きな帆の外国船〉、「フォックス・トロットのテンポで、風刺的に鋭く」にはカフェコンセールの人気歌手マイヨールの歌〈ああ、アメリカの音楽!〉が引用されています。

 ピアノ曲「九月の空」は、正式な作曲の勉強を始める前に15歳で書いた(とは思えない)作品で、ミュッセによる〈しかし九月の空は何と美しいのだろう…〉という一節が引用されています。


*ブログ

2022-09-19 ご来場ありがとうございました
2022-09-18 ヴォカリーズ集vol.6〜イタリア編(カフコンス第152回)
2022-09-17 明日開催です!
2022-09-14 カステルヌォーヴォ=テデスコの性格的小品
2022-09-06 ポッツォーリのハバネラ
2022-08-28 ジョルダーノの練習曲
2022-08-20 チレアの変奏曲
2022-08-09 イタリア編
2022-08-01 ヴォカリーズ集vol.6
2022-07-23 HAPPY BIRTHDAY チレア&ポッツォーリ!

モーツァルトとシュタードラーvol.9(カフコンス第151回)2022-07-17

Mozart!

*曲目

モーツァルト「夕べの想い」
Wolfgang Amadeus Mozart (1756-91)
Abendempfindung K523 (1787)

シュタードラー「二重奏曲」
Anton Stadler (1753-1812)
Duo für 2 Klarinetten
  1.Moderato
  2.Romanze Adagio ma non troppo
  3.Menuetto
  4.Rondo Allegro molto

ドヴィエンヌ「三重奏曲」より
François Devienne (1759-1803)
Trio pour 2 clarinettes et basson op.75-1 (1801-2?)
  2.Rondo Allegretto

ベートーヴェン「モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より〈お手をどうぞ〉の主題による変奏曲」
Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Variationen über das Thema "Là ci darem la mano" aus Mozarts "Don Giovanni" WoO28 (1795)
  主題 Thema Andante
  変奏1 Allegretto
  2 Allegretto
  3 Andante
  4 Allegro moderato
  5 Moderato
  6 Lento espressivo
  7 Alegretto scherzando
  8 Allegretto giocoso
  コーダ Coda Vivace - Andante

(モーツァルト「Non più andrai」)


*出演

大橋裕子(クラリネット)
飯田真弓(クラリネット)
吉田早織(ファゴット)


*プログラムコメント

 本日は第151回カフコンスへお越しいただきありがとうございます。
 「モーツァルトとシュタードラー」第9回となりました。モーツァルトのクラリネット作品の多くが、A・シュタードラーのために作曲されているということから名付けたこのシリーズです。本日は周辺の様々な室内楽曲と共に、クラリネットとファゴットのアンサンブルを愉しんでいただけたらと思います。

 「夕べの想い」はモーツァルトの歌曲の中でも有名な曲の一つ。父レオポルトの死後に書かれたとされていて、哀愁もありながら深く美しいメロディーが紡がれていきます。もう夕暮れだ、日が沈んでゆく、から始まる美しいドイツ語の詩も素晴らしいので原曲も聴いていただきたい。『ドン・ジョヴァンニ』が初演された年に書かれた歌曲。

 シュタードラー兄弟はクラリネット・バセットホルンの優れた演奏家、二人ともウィーンの宮廷楽団に雇われていました。兄のアントンは当時のクラリネットのさらに幅広い響きを持つ低音域拡張を考案し、モーツァルトがコンチェルトや五重奏曲を作曲したのはこの楽器の為でもありました。アントン自身もソロやデュオなどを何曲か作曲しており、いずれも緩急のあるいくつかの短い楽章から成り立つ気軽で楽しい楽曲です。本日は二人の奏者のメロディが交互に入れ変わるキャラクターの違いなどにも注目してお聴きください。

 ドヴィエンヌは18世紀フランスの作曲家でパリ音楽院の初代フルート科教授、宮廷楽団のバスーン奏者でした。管楽器ではフルート、ファゴットの楽曲などが知られています。3年違いで生まれたモーツァルトと同時期に活躍していたことからもフランスのモーツァルトともよばれています。

 モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』、ドン・ジョヴァンニが結婚間近の村娘ツェルリーナを誘惑する場での2重唱曲「お手をどうぞ」の旋律が主題になっています。有名なフレーズ、聴いたことがあるかもしれません。1797年にオーストリアのブルク劇場で演奏されたという記録が残っています。オリジナルは2本のオーボエとコーラングレという編成ですが本日はクラリネットとファゴットで演奏します。クラリネットはB管なので音を1音あげて(ドをレと読む)楽譜をよんでいるので聴こえる調は同じなのですが、金魚坂でどんな響きになるのか私たちも楽しみです。
 プログラム全体で30年程の間の曲を選曲しましたが、それぞれの古典的なアプローチを再考することもまた新鮮でした。


*ブログ

2022-07-18 ご来場ありがとうございました
2022-07-17 モーツァルトとシュタードラーvol.9(カフコンス第151回)
2022-07-16 明日はモーツァルト!
2022-07-14 シュタードラーも!
2022-07-12 週末はモーツァルト!
2022-07-09 メインはベートーヴェン!
2022-07-01 今月はモーツァルト!