シェイクスピアによる歌曲2022-12-02

マデリーン・ドリングは舞台やテレビ、レビューなどの作品の印象から(やはり僅かな皮肉を込めて)「イギリスのガーシュイン」とも呼ばれますが、生涯にわたって芸術歌曲も作曲しました。イギリスのテノール歌手ロバート・ティアーはマデリーンを「最高で知られざるイギリス歌曲作曲家の1人」と評しています。

生前に出版された歌曲はたった4曲でしたが(マデリーンは4曲目の歌曲の出版の際にポピュラー音楽のように曲を簡略化されてしまって失望し、出版に興味を示さなくなったそうです)、1980〜99年にマデリーンの夫ロジャー・ロードが7冊の歌曲集を出版、さらに未出版だった数十曲(キャバレーソング等が中心)も近年になって刊行されました。シェイクスピア関連では、1944年に王立音楽大学でバリトン歌手Ifor Evansとマデリーンのピアノにより初演された「Blow, blow thou winter wind / Come away, death / Under the greenwood tree」の3曲組が1949年に出版され、ロジャーは4曲を追加して「ドリング歌曲集第1巻・7つのシェイクスピア歌曲」として1992年に出版、現在ではその他に3曲と、「Willow song」(オテロ、作曲者不詳)の編曲も入手できます。

songs

ロジャー版で追加された4曲は、初演の3曲と同時期に書かれた「It was a lover」と、「The Cuckoo」など1960年代頃の3曲です。「It was a lover」は最後を飾るにふさわしい曲なので、初演の際は同じ位置付けの「Under the greenwood tree」とどちらか1曲しか入れられなかったのかもしれません。20歳の意欲作に比べると後年の3曲はシンプルながら、それぞれ特徴的で曲集を彩っています。

ロジャーは宝の山(遺された膨大な楽譜)からシェイクスピア作品を探し出し、年代の違う曲も出版済の曲も1冊にまとめて私たちの手に届けてくれました。私たちもこの曲集の素晴らしさを皆様にお伝えできたらと思います(とますます自分にプレッシャーを…)。


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今月の演奏メニュー

2022年12月11日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第153回
マデリーン・ドリング〜生誕100年に先駆けて

ドリング「フルート・オーボエ・ピアノのための三重奏曲」
同「シェイクスピアによる歌曲集」より
  Willow song / Blow, blow thou winter wind /
  Come away, death / The cuckoo / It was a lover
同「オーボエ・ファゴット・ピアノのための三重奏曲」

中村淳(フルート)
荒木良太(オーボエ)
江草智子(ファゴット)
柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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フルート・オーボエ・ピアノのためのトリオ2022-11-27

マデリーン・ドリング特集の1曲目は「フルート・オーボエ・ピアノのためのトリオ(1968)」です。マデリーンの夫ロジャー・ロードは「マデリーン自身は歌曲やピアノ作品、そして私のために書いたオーボエ作品で記憶されたいと望んでいたと思う」と語っていましたが、現在マデリーンはまさにこのトリオの2楽章の美しいオーボエソロで知られていると言ってよいでしょう。

この曲はロジャーが所属していた室内楽グループ「ムジカ・ダ・カメラ」の演奏会のために書かれ、1968年の同演奏会で初演された後、同年の(おそらくロンドン響のフロリダツアーに際して)デイトナ国際室内楽フェスティバルで、ロジャーとロンドン響フルート奏者ピーター・ロイド、当時の首席指揮者アンドレ・プレヴィンのピアノでアメリカ初演され、楽譜も1970年に出版されました。
(12/2追記:初演のフルートはロイヤルオペラハウスオーケストラのHarold Clarke、ピアノはHubert Dawkes)

夫妻の友人でロンドン響にも所属したフルート奏者ウィリアム・ベネットはこの曲を「この編成の最高傑作の一つ」と評しましたが、一方で当時は「批評家たちは無調を敬う作品でなければ却下した(中略)彼女が愛したのは高度に洗練された調性音楽だった」(ロジャー談)という状況でもありました。「イギリスのプーランク」という呼び名にも僅かながら皮肉が感じられます。

しかし50年経った今では、この20世紀の魅力的な作品がいつ書かれたのかはもう問題でなくなってきています。「お洒落」レベルではなく「高度に洗練されている(highly sophisticated)」ことを分かっていただけるような演奏を目指したいと思います (と自分にプレッシャーを…)。


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来月の演奏メニュー

2022年12月11日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第153回
マデリーン・ドリング〜生誕100年に先駆けて

ドリング「フルート・オーボエ・ピアノのための三重奏曲」
同「シェイクスピアによる歌曲集」より
  Willow song / Blow, blow thou winter wind /
  Come away, death / The cuckoo / It was a lover
同「オーボエ・ファゴット・ピアノのための三重奏曲」

中村淳(フルート)
荒木良太(オーボエ)
江草智子(ファゴット)
柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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ロジャー・ロード2022-11-22

今日11/22は6月の還暦祝いで取り上げたスティーヴン・ハフさんの61歳のお誕生日です。HAPPY BIRTHDAY!

12/11のカフコンスではその1年遅れの還暦祝いの演奏メンバーが再集結して、今度は1年前倒しの生誕100年を祝います。6月はそれぞれのソロでしたが今回はアンサンブル。前回あっという間だったオーボエもたっぷりお聴きいただけますので、ぜひまたご来場ください!


さて、マデリーン・ドリングの死後、彼女の作品を広めようと奔走したのが夫のオーボエ奏者ロジャー・ロード(1924-2014)です。ロジャーは1942-43年と46-47年に王立音楽大学で学び(マデリーンとは学内で43年に出会い47年に結婚し)ました。途中の空白期間には空軍の軍楽隊に所属(兵役?)、その後いくつかのオーケストラを経て1953–86年にはロンドン交響楽団の首席を務めました。

彼は演奏活動の傍ら、マデリーンの遺した未出版の作品を整理して出版し(今回の曲目も半分は彼によって出版されたもの)、作品を演奏する人や研究する人への協力や支援も惜しみませんでした。かのニューグローブ音楽事典にマデリーンの名前が載ったのも彼の働きかけによるものだそうです。妻への愛情だけでなく、すぐれた音楽を後世に残そうという使命感が彼をつき動かしていたのではと思います。

…と、まるで映画のようなストーリーなので生誕100年記念に映画化はどうでしょう? それは冗談としても、来年の生誕100年をきっかけとして1つでも多くの作品が出版・再版されることに期待しています。


ところでロジャーさんの録音には室内楽や協奏曲もありますが、ロンドン交響楽団といえばスターウォーズ。在籍年からして彼もきっと演奏していたのでは? 今度観る時はオーボエもじっくり聴いてみようと思います!


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来月の演奏メニュー

2022年12月11日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第153回
マデリーン・ドリング〜生誕100年に先駆けて

ドリング「フルート・オーボエ・ピアノのための三重奏曲」
同「シェイクスピアによる歌曲集」より
  Willow song / Blow, blow thou winter wind /
  Come away, death / The cuckoo / It was a lover
同「オーボエ・ファゴット・ピアノのための三重奏曲」

中村淳(フルート)
荒木良太(オーボエ)
江草智子(ファゴット)
柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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