南米担当 E2011-05-08

今回、旅をテーマにしたプログラムの中で、わたくしは南米を担当、ミニョーネの「ファゴットのためのワルツ」をブラジル・サンパウロの街角よりお送りしたいと思います。まずは作曲者のミニョーネについて。あまり耳馴染みのない作曲家かもしれませんので経歴を少し詳しく書かせていただきます。

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フランシスコ・ミニョーネ(Francisco Mignone 1897~1986年)はイタリアから移住した両親のもとにサンパウロで生まれ、オーケストラのフルート奏者であった父親の手ほどきで音楽の勉強を始め、サンパウロ音楽院やミラノのヴェルディ音楽院にて研鑽を積んだ。60年間にわたって多くの作品を生み出し、作曲活動は大きく5つの時期に分けられる。

まず、シコ・ボロロ(Chico Bororo)の名でポピュラー音楽やダンス曲を作曲していた1910~20年頃は、音楽を楽しむ人々で賑わうサンパウロの夜更けの街で、仲間たちと集まっては即興演奏をしていた。そして、自身の名で発表したオペラや交響詩が成功、ヨーロッパへ遊学し活躍していた1920~30年頃には、ドイツ、スペインなど各地を訪れ、影響を受けた。

1930~60年頃はナショナリズムの時期。当時のブラジルでもっとも著名な音楽学者で、ミニョーネの若い頃からの師でもあったマリオ・デ・アンデラーデ(Mario de Andrade)の「イタリアっぽすぎる、ブラジルらしくない」(超訳、すみません)という言葉を真摯に受け止めたミニョーネは、ブラジル特有のリズムやメロディーを生かし民族的なテーマを追求した。

そして1960~70年頃は、民族色に頼らない様々な技法や様式を試した実験期間(と勝手に名付けさせていただき)、1970年頃~亡くなるまでは再びナショナリズムに回帰しブラジル音楽の素材を好んで多用した。


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「ファゴットのための16のワルツ(16 valsas para fagote solo)」はこの最後の時期(1979〜81年)に作曲され、ブラジルのファゴット奏者ノエル・デヴォス(Noel Devos)に捧げられています。ヨーロッパの伝統的なワルツとの大きな違いは、これらが踊るためではなく、夕暮れの街中で恋人たち ー 正式な恋人、隠れた恋人、夢見る恋人(作曲者談) ー のためにセレナーデの様式で奏されていたこと。個々のワルツには題名がつけられており、ブラジルの文化や音楽様式への尊敬を表したものや、師・アンデラーデに捧げたもの、深い親交のあったヴィラ=ロボスへ捧げた「ヴィラが書かなかったModinha(ポルトガルとブラジルの愛歌)」、また「繊細なワルツ」「ノエル(上述ファゴット奏者)へ、ハッピー・イースター!」「未亡人」「Got you, my little bassoon」など、作曲者のユーモアが感じられるタイトルが並んでいます。

今回はこの16のワルツから、「街角のワルツ」と「即興のワルツ」を演奏いたします。この2つを選んだ理由については長くなりすぎたので割愛させていただきまして、最後にミニョーネの言葉を引用していったん締めさせていただきます。

 ― 「どうして街角に?」と聞かれますが、私たちはそこに立ち、決して消えることのない夢を弾いていたからです。 ―

ステキですね。ちなみにシャブリエの「旅への誘い」の編成に関して「どうしてファゴットに?」という疑問をKさんから投げかけられて少し焦っているのですが、ミニョーネがギター、ピアノのためのワルツ群を作曲したあとに「どうしてファゴットに」こんなにワルツを書いてくれたのかは資料集めしてたら答えがありました(゜▽゜)。でも当日の演奏時間に反比例してだいぶ長くなってしまいましたので、この辺で失礼いたします。


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今月の演奏メニュー

5月15日(日)11時〜 於:笹塚Blue-T(中国茶つき1,500円)
旅への誘い

シャブリエ「旅への誘い」sop.fg.pf.
ゴダール「旅への誘い」sop.pf.
タンスマン「ミニアチュア世界一周」より pf.
ミニョーネ「街角のワルツ」「即興のワルツ」 fg.
ミヨー「夏の旅」より sop.pf.

渡辺有里香(ソプラノ)
江草智子(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)

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