カフェコンセールの歌姫vol.8(カフコンス第159回)2023-09-10

カフェコンセールの歌姫vol.8
*曲目

ドリング『色の組曲』より「ブルーエア」*ピアノソロ
Madeleine Dring (1923-77)
"Colour suite" (1963)
  Blue air
同『ベッジュマンの5つの歌』より「ナイトクラブの女主人の歌」
"Five Betjeman songs" (1976)
  Song of a nightclub proprietress

イベール『青ひげ』より「メルポメーヌの二つの歌」
  1.(恋人は口笛が上手)
  2.(尊大な男と結婚したと思っていた)
Jacques Ibert (1890-1962)
"Barbe Bleue" ~ Deux chansons de Melpomène (1943)
  1. Mon bien aimé siffle si bien
  2. Je pensais épouser un fier-à-bras
同『鉄の騎士』より「ガリアーヌの子守唄/フロランドの嘆き」
"Le cavalier de fer" (1951)
  Berceuse de Galiane
  Complainte de Florinde

カウエル「富士山の白雪/エオリアンハープ/バンシー」*ピアノソロ
Henry Cowell (1897-1965)
The snows of Fuji-yama (1924)
The Aeolian harp (1923)
The Banshee (1925)
同『三つのアンチモダニストの歌』
  1. ナチュラルを期待する所にはシャープを
  2. 聞け! ピットから聞こえる恐るべき音が
  3. 誰がこの凶悪な「春の祭典」を書いたのか?
"Three anti-modernist songs" (1936)
  1. A sharp where you'd expect a natural
  2. Hark! from the pit a fearsome sound
  3, Who wrote this fiendish 'Rite of Spring'?

(イベール「Le chandelier」より フォルトゥニオの歌)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)


*歌詞大意

「ナイトクラブの女主人の歌」(J.ベッジュマン)

私は昼前にナイトクラブへ足を踏み入れた
ドアのハンドルはべとべとに汚れ
灰皿は空にされていなく
掃除しようとした形跡もなく
トマトのサンドイッチが床で潰れていた

私は赤紫の厚いカーテンを開けた
リージェンシースタイルの古風なカーテンを
すると たくさんの小さなクモが
競争した サイダーを横切って
ビールの隣のミネラルウォーターの箱まで

ああ 太陽が夏への道を照らす
何もかもが海へ急ぐ道を
そして私は考え込む
大型トラックの音が鳴り響くこの場所で
太陽は私にも降り注ぐのかと

ボリスが車で迎えに来てくれた頃
テディが邸宅に招いてくれた頃
私の鼻が情熱をかき立て
私の服がファッショナブルで
私が遅れても決して恋人が怒らなかった頃には

ビーチでくつろぐのに十分な太陽があった
夜遅くまで十分な楽しみがあった
でも今 私はもう死にかけ落ちぶれている
あの楽しみが一体何になったというの?
私は病み 老いて 怯え 飲んだくれている

『青ひげ』より メルポメーヌの2つの歌(W.アゲ)
1.

私の恋人は口笛を吹くのが上手
パパはいつも信じてる
帰ってきたツグミが歌っていると
晴れた日に戻ってきたことを

春にはとても便利
カッコウ、と彼は真似をする
だから彼に会える
縫いものをしているとパパが信じてる間

秋には、器用な彼は
カア、とカラスだと思わせる
パパは疑わずに
現場をおさえようともしない

冬は鳥がいなくて
ランデブーには不都合
それでお屋敷の恋人は
夫になった

お嬢さんたち いつも
勇敢で賢い男性を手に入れなさい
彼はあなた方を窮地に立たせても
決して危険な目に会わせない

2.

私は尊大な男と結婚したと思っていた
奇妙な男爵と
彼は私をひどくおびえさせる
紋章を楯に
ええ、そうよ! だから何だというの?

* 彼は無謀なところのない紳士よ
今は私の夫 優しい夫
本当に優しい人なのよ

驚くべき青いひげを見るために私は言う
「私が愛してるのはあなたよ」
彼は本当に神秘的
考えれば考えるほど
ええ、そうよ! だから何だというの?

* 彼は無謀なところのない紳士よ〜

他のことはどうでもいい
彼が私のことを愛してさえいれば
私が7番目の妻でも
前の女たちのことは気にならない
恐ろしい夫? いいでしょう? だから何だというの?

* 彼は無謀なところのない紳士よ〜

『鉄の騎士』より(A.アルヌー)
「ガリアーヌの子守唄」

夜明けの道を
改宗者が馬で行く
彼は7回イスラム教徒に
同じだけキリス教徒になった

彼はボバレアスと呼ばれ
私の恥と善のために
山で7回キリスト教徒に
7回イスラム教徒になった

私はオリーブの木のもとで
長い髪を梳る
固い地面には
旋回する鷹の影

鷹の影が
7つ目の輪を描いたあと
私は櫛を落として
目を閉じた…

空を舞う鷹の影が
7つの輪の影で私を縛り
私の魂を7つの刻印で
地面に閉じ込めました

神々がなしえなかったことを
一人の女がなしえたのです
何度も裏切るような男が
今やあなたには忠実です

そんな風に彼は話した
その時小川のせせらぎは響き
魂の奥底が
ことばの表に浮かんだ

ああ、重ねた唇を
あなたの腕が隠す時
14回改宗した男の口づけを
信じてよいのだろうか

「フロランドの嘆き」

私はおぞましい火曜日に生まれた
 ああ、私は災いだ!
月と反対にある火星
私は勝ち取らなければならない
楽園の私の分け前を

お前の歩みは止まらない
 ああ、私は災いだ!
赤く目立たぬ星よ
敗北の血のような
愛の唇のような

お前はどこに行くのか?
私は絶望の星の望むままに行く

「3つのアンチモダニストの歌」
1.(「ワーグナーの序曲の作曲法」と題した詩 アメリカの新聞に掲載 1884年頃)

ナチュラルを期待する所にはシャープを
シャープを期待する所にはナチュラルを
ルールは守らず 例外を
そうしたら(最初の名案!)ハープを入れよう!

どの小節も その前の小節の反復とせず
どの小節も 次に来るものへの前奏とせず
何が何に続くかは 全く気にせず
しかし(2つ目の名案!)ドラムを入れよう!

和声は 乱暴な不協和音を受け渡し
調性は酷くめちゃくちゃな調性と混ぜ合わせ
そして(最後の名案!)金管を入れよう!
それから ガチャガチャ ガチャガチャ!

2.(シュトラウス「サロメ」のアメリカ初演に際してのニューヨークワールド紙の無記名記事 1909年2月)

聞け! ピットから聞こえる恐るべき音が
血を凍らせる
交響的な台風が駆けめぐる
そして最悪の事態はこれからだ

今 彼らは戦争の犬たちを解き放つ
野生のサルソフォン
Eフラットのコントラバスが吠える
死人の骨を噛み砕きながら

ミュートされたチューバの悲痛なうめき声が
暗闇から湧き上がると
ヘッケルフォンが答え
破滅を示唆する

ああママ! ここは地震ゾーンなの?
何か下から上がってくるよ!
それともサンダーマシンで
雷の真似をしているだけなの?

わが子よ この荘厳な馬鹿騒ぎを
怖がることはないわ
これは現代オペラなのよ
巨匠リヒャルト・シュトラウスの流儀による

歌手たち? 彼らはほとんど聞こえも見えもせず
あなたの後ろの座席に座っている
歌の日は過ぎ去ったのだと私は思う
オーケストラの時代なのだ

3.(ストラヴィンスキー「春の祭典」のアメリカ初演に際してのボストンヘラルド紙の無記名記事 1924年2月)

誰がこの凶悪な「春の祭典」を書いたのか?
そいつはこんな物を書く権利を持っていたのか?
我々の無力な耳に
ガチャガチャ バンバンと音を打ち付け

それを「春の」祭典と呼ぶ権利を!
春は 喜びの翼に乗せて
鳥たちがメロディアスなキャロルを歌い
あらゆるものがハーモニーを持つ季節なのに!

こんな「春の祭典」を書くようなやつは
私が本当に正しければ 絞首刑にされるべきだ!


*ブログ

2023-09-15 ご来場ありがとうございました
2023-09-10 カフェコンセールの歌姫vol.8(カフコンス第159回)
2023-09-09 明日開催です!
2023-09-07 イベールの物語と台詞と総括
2023-09-05 ドリングの十八番
2023-09-03 カウエルの酷評
2023-09-01 カウエルのクラスターと内部奏法
2023-08-28 残暑お見舞い申し上げます

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