モーツァルト「ホルン協奏曲第3番K.447」より2013-06-10

モーツァルトのホルン協奏曲の作曲順は2番、4番、3番、1番と言われます。4曲はケッヘル番号(K.)順に1番〜4番と呼ばれ、ケッヘル番号は19世紀の音楽学者ケッヘルがモーツァルトの全作品を作曲順に整理してつけたものですが、20世紀の研究で作曲年が大きく検証し直されたため、作曲順と番号に食い違いが生じています。

4曲中で最高傑作とされる3番は、作曲順でも3曲目をキープしつつ、作曲年は(ケッヘルの考えた83年から)87年に改められました。この4年の差は大きく、ウィーンでモーツァルトが名声を確立したのが84年とされ、87年までにはフィガロとドンジョヴァンニ、交響曲36〜38番、ピアノ協奏曲14〜24番等が書かれている事から、もともとの高評価に「さらに円熟した時期の作」というお墨付きも加わりました。

作曲年の見直しからは、ホルンの技術面で2,4番に対し3,1番が易しく書かれているのがロイトゲープ(5重奏の記事も参照)の衰えをカバーするためだという説も成立しました(彼は1番の翌年に演奏の場から引退)。が、2,4番はロイトゲープを困らせて楽しむためにモーツァルトがわざと難しく作曲したという見方もあるようです。

なお3番にはロイトゲープへのいたずら書きがないため、この曲だけはシュティヒ(別名プント、同時代のホルンの名手)の為に書かれたのではという憶測もあったようです。なんだか研究者もロイトゲープイジリに参加して楽しんでいる気が...

「円熟期、無理なく自然、正統派」というのは、同年に書かれた「アイネクライネナハトムジーク」にも通じ、この3番の人気も頷けます。今回はピアノ伴奏による1楽章のみの演奏ですが(本来はクラリネットの使われたオーケストレーションも魅力)、傑作の一端を味わっていただけたらと思います。


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今週末の演奏メニュー

2013年6月16日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第102回
ホルンとサックスの響き

モーツァルト「ホルン協奏曲第3番K.447」より 第1楽章 hr.pf.
ノイリンク「バガテル」hr.pf.
バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」より sax.
モーツァルト「ホルン五重奏曲K.407による三重奏曲」hr.sax.pf.

笠間芙美(ホルン)
伊藤あさぎ(サクソフォン)
川北祥子(ピアノ)

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