山羊が見つけたコーヒー豆 / カフノーツ#012003-01-26

カフノーツはコーヒーにまつわる短いお話をあれこれご紹介します。 コーヒーでも飲みながらのんびりお読みください。


 コーヒーの起源には諸説さまざまなパターンがあります。わりとよく知られているのは、エチオピアの山羊飼いが初めて見つけたという言い伝えです。山羊たちが、牧場である木の実を食べたあと、一晩中眠らないでぴょんぴょん飛び跳ねている。不思議に思った山羊飼いが、イスラームの修道士に、山羊が食べた木の実について尋ねてみました。修道士は、かつてカッファから来たシバ人たちがこの地で栽培していたものではないかと考え、煮たり、潰したり、生で食べたりと、さまざまに木の実を試してみました。そして最後に、火の中に入れてみると、すばらしい芳香が漂ってきました。焦げた実は、まるで山羊の糞そっくり。それを石で潰して煮てみると、どろどろの泥のような液体となりました。これが最初のコーヒー。泥のような色をした、苦い液体を飲もうという気持にさせたのは、やはりコーヒー本来のあの薫りのせいなのかもしれません。修道士がその黒い液体を飲んでみると、胸がどきどきして、目が冴えわたり、頭が隅々まで活発に働くような気分になりました。真夜中の祈祷の時間でさえ、ちっとも眠気も疲れも感じません。そこで修道士たちは、その飲み物にカーワーという名前をつけて珍重したということです。カーワーには、アビシニアのカッファから伝わったという意味と、興奮させるもの、飛翔させるものという意味が重ねられています。これはヨーロッパに広く伝わっている言い伝え。ご本家イスラームでは、山羊の糞からコーヒーの木が生えてきたという話があるのみです。言い伝えはさておき、飲むと眠れなくなるコーヒーは、その効力のおかげで厳しい修行を行うイスラームの僧たちによって伝えられてきました。「目覚めよ、生を無駄に過ぎ去ることのないように」とのイスラームの唄も、コーヒーの存在を考えるととても実感のあるものに思えてきます。起源の真偽はともかく、山羊がコーヒーを見つけたというお話は、なかなかキュートじゃないですか?(カフコンス第1回「ソプラノ/クラリネット/ピアノによる羊飼いの歌」プログラム掲載。)

西川公子 Hiroko Nishikawa
ウェブやフリペの企画・編集・ライティング。プレイステーションゲーム『L.S.D.』の原案、『東京惑星プラネトキオ』『リズムンフェイス』のシナリオなど。著作に10年分の夢日記をまとめた『Lovely SweetDream』。最近は老人映画研究家。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログのタイトルにもなっているカフェコンサートの名前は?(カタカナ5文字でお答えください。)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://cafconc.asablo.jp/blog/2003/01/26/5682655/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。