カフェコンセールの歌姫vol.7(カフコンス第117回)2015-10-11

*曲目

エリック・サティ「肌着/祝日の小曲集/男やもめ(第1稿)」
Eric Satie (1866-1925)
La chemise (1909)
Petit recueil des fêtes (ca1903-4)
  1.
  2.Sorcière 魔法使い
  3.Enfant-martyre こども─殉教者
  4.Air fantôme 幻の歌
Le veuf (1899)

同「梨の形をした三つの小品」より *ピアノ連弾
3 morceaux en forme de poire (1903)
  Morceaux2 En Leve(第二の小品)

クルト・ヴァイル「愛してないわ/セーヌ哀歌/ユーカリ」
Kurt weill (1900-1950)
Je ne t'aime pas (1933)
Complainte de la Seine (1933)
Youkali (1933/35)

ウィリアム・ボルコム「優雅な幽霊のラグ」*ピアノ独奏
William Bolcom (1938-)
Graceful ghost rag (1970)

同「キャバレーソング集」より
Cabaret songs
  Love in the thirties (1984) 1930年代の愛
  Waitin'(1978) 待っている
  Amor (1979) アモール

(同「キャバレーソング集 より Places to live」)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)


*歌詞大意

「肌着」(ジュール・ドゥパキ)

よく笑う赤ちゃんの肌着は
二本のもも色のあんよと
バラを練り込んだユリのパテみたいな
かわいいおしりをくっきり見せる
まるで天使の羽の型で切り取られたようだ
でも、ああ!あたりまえのことだけれど
赤ちゃんがおむつにおしっこする
肌着さん、気を悪くしないで
このくらいの時は無理ないよ、肌着さん

「祝日の小曲集」(ヴァンサン・イスパ)

1.(ピカドールは死んだ)

ピカドールは死んだ
悲しい運命だ
ああ、どんなに彼の気の毒な母親を哀れんだことか
しかしそのマドリードの下町っ子といえば トゥララ…
立ち直ったのだ
それが唯一できることだったから

2. 魔法使い

まじない 降霊
闇の黒い霊
呪詛 呪いの言葉
不吉な力だ
公爵に呪いをかける
その勇敢な男が死なないなら
私の呪文が間違っているからだ!
大急ぎで逃げ出すぞ

4. 幻の歌

こちらが春閣下
最高の季節だ
こどもたちが大好きなのは
このすてきな時期
これほど好まれる季節は
他にはない

それはひなぎくの季節
たくさんの小花に
たくさんのヤグルマギク
ひばりや
小さな虫たち
そして頭痛の季節だ

小さい丘が見える
小川に

小鳥たちや
低い木々
そしてみみずたちも

「男やもめ」(ヴァンサン・イスパ)

彼女はまつ毛は黒くて金髪で
生き生きとした目をしていた
彼女はとても善良だったので、すべてのものを愛した
みなそう言うだろう
私は彼女の美しさに見とれて毎日を過ごし
私の目は彼女の目を捜し求めた
しかし私たちは面と向かって互いを見つめることができなかった
二人とも斜視だったから

「愛してないわ」(モーリス・マグル)

その手を退けてちょうだい 愛してないわ
お望み通り あなたはただの友達
あなたの広げた腕は 他の人たちのもの
素敵な口づけや まどろむ頭も

夜になったら話しかけないでちょうだい
優しすぎる その低い声で
あなたのハンカチだけは渡さないでちょうだい
私の好きな香りが染み込みすぎているから

あなたの愛を語ってちょうだい 愛してないわ
いつ あなたが一番夢中だったのかを あなたを愛してないわ…
そして あなたが愛されても 裏切られても…
私に話す時には 格好つけないでちょうだい あなたを愛してないわ…

私は泣いてないわ 苦しんでないわ
ただの夢 ただの戯言だったのだから
あなたの目が澄んでいるなら それだけでいいの
夜に未練や憂鬱が無いのなら

あなたの幸せを見ているだけでいいの
あなたの微笑を見ているだけでいいの
話してちょうだい どんな風に心を奪われたのか
話せないようなことも話してちょうだい…

黙るのだけはやめて お願いだから…
もう炎は消え 扉は閉まったのよ… あなたを愛してないわ
何も聞かないでちょうだい 私は泣いている それだけよ…
あなたを愛してないわ 愛してないわ ああ 大好きなあなた…

その手を退けてちょうだい 愛してないわ…
あなたを愛してないわ!

「セーヌ哀歌」(モーリス・マグル)

* セーヌの底には 黄金がある
錆びた船が 宝石が 凶器が…
セーヌの底には 死がある…
セーヌの底には 涙がある…

セーヌの底には 花々がある
泥で育った花々が…
セーヌの底には 心がある
人生に苦しみすぎた心が…

そして 砂利 灰色の生き物…
下水溝の魂 吐き出された毒…
認められず捨てられた指輪
スクリューで胴から切り離された足…

不毛な子宮の忌わしい果実
愛されず堕された無垢…
大都会の吐瀉物…
セーヌの底には そんなものがある…

おお 慈悲深いセーヌ 亡骸の行きつく所
おお 泥土が敷かれた寝台
灯台も港もない 廃物の流れ
子守唄の歌い手 死体安置所と橋よ

貧者を迎え 女を迎え
酔払いを迎え 狂人を迎え
彼らのすすり泣きを お前の波音に交ぜて
彼らの心を 砂利の中へ導け…

* セーヌの底には〜

「ユーカリ」(ロジェ・フェルネ)

そこは世界のほぼ果て 私の放浪の小舟は
波に任せてさまよい ある日 たどり着いた
その島はとても小さかったが そこに住む妖精は
優しく私たちを島に誘った

* ユーカリ それは私たちの憧れの国
ユーカリ それは幸せ それは喜び
ユーカリ それは悩みのない世界
闇に射す光のように私たちを導く星 それがユーカリ

** ユーカリ それは交わされた誓いへの敬意
ユーカリ それは分かち合われた美しい愛の国
それは人々がみな心に持つ希望
私たちがみな明日に待ち望む救い

*** ユーカリ それは私たちの憧れの国
ユーカリ それは幸せ それは喜び
しかし それはただの夢 ただの戯言
ユーカリなど どこにもない

人生は私たちを弄び 日々 疲れさせる
しかし 人の哀れな魂は 忘却を探し求め
この世界から逃れるために 神秘を見い出して
そこに夢を隠す どこかのユーカリのような地で…

* ** *** ユーカリ〜

「1930年代の愛」(アーノルド・ワインスタイン)

お父さん、エレベーターのあるビルに住めるの?
坊や、運がよければね
でも1階に住みたいもんだ

お父さん、なんで共産主義者じゃないの?
坊や、そんな余裕がないからさ

お父さん、非常階段に悪魔がいたよ
長くてとがった猫の耳みたいな
どんな悪魔なのかい、坊や?
尻尾も角もないよ
お母さんとお父さんと一緒に
ベットに潜り込もう

お父さん、天国ってあるの?
あるよ、坊や、まさにここだよ
天国にいる人は死ぬ程この場所に来たいのさ!

お父さん、死の願望って何?
死の願望ね、
『死んでたらよかったのになあ』っていう気持ちのことだよ

お父さん、僕って誰?
いい質問だね、坊や、そのうち教えてあげるよ
わかるようになるさ
お父さん、どうやったらわかるの?
『銀色に輝く心の光のもとで』わかるよ
科学の話をしているんだよ、坊や

お父さん、魂って何?
ウィンクしながらつくため息みたいな、
そんなようなものだよ
(なんて答えだ)
うわぁ お父さん、何でも知ってるんだね

お父さん、僕はお父さんにいつでも会える?
ラベルの裏とか、テーブル下で
おまえはお父さんを見つけるし
お父さんもおまえを見つけるよ
まだ科学の話をしているんだよ ブブッパドゥ

「待っている」(アーノルド・ワインスタイン)

待っている 私はずっと待っている
生まれた時からずっと待っている

あの光は私から隠れ続けているが
いつか私のまなざしを祝福してくれることを

待っている
待っている

「アモール」(アーノルド・ワインスタイン)

それは警官のせいではない
往来の騒音の中で
止まれと叫ぶ代わりに
私を見てアモールと叫んだのは

アイスクリームの売り子でさえ
(たくさんの無料アイスクリームをくれて)
バターピーカンと叫ぶ代わりに
私を見てアモールと叫んだのだから

街はどこもそんな調子
誰もが休暇を取った
哲学者でさえも美がいかに善いものか気づいた
だって私がこんなに美しいから

貧者は節約をやめて
金持ちは欲張るのをやめた
いいえかはいか叫ぶのでなく
どちらも私を見てアモールと叫んだ

私は街にいるのを遮られ
法廷に引っ張り出された
裁判官が私が秩序を乱したと言うと
陪審員は異議を唱えた!

裁判官は片手を挙げ
停止通告をするかと思えば
証人席へ来て私の手を取り
アモールとささやいた

夜が明けてきて
一人で歩き始めた
もうこんな街には二度と来ないだろう
教会の扉を通りすぎる時
聖歌隊はアーメンではなく
アモールと歌っていた


*ブログ

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