ケックランと女優たち(カフコンス第30回)2006-09-24

*曲目

シャルル・ケックラン「リリアンのアルバム 第1集」
Charles Koechlin (1867-1950)
L'album de Lilian première série op.139 (1934)
  1.Keep that school girl complexion
   女学生の肌を保ちましょう(ソプラノ・ピアノ)
  2.Fugue sans protocole
   礼儀のないフーガ(ピアノ)
  3.Valse de la réconciliation
   和解のワルツ(ピアノ)
  4.Les yeux clairs
   澄んだ目(フルート・ピアノ)
  5.Joie de plein air
   戸外の喜び(ピアノ)
  6.Skating-smiling
   スケーティング・スマイリング(ソプラノ・フルート・ピアノ)
  7.En route vers le bonheur
   幸せへ向かって(ソプラノ・フルート・ピアノ)
  8.Pleurs
   涙(フルート・ピアノ)
  9.Tout va bien
   大丈夫だよ(ソプラノ・ピアノ)

同「ジーン・ハーロウの墓碑」
(フルート、サクソフォン、ピアノのためのロマンス)
Épitaphe de Jean Harlow op.164 (1937)
Romance pour flûte,saxophone et piano


*出演

渡邊玲奈(フルート)
伊藤あさぎ(サクソフォン)
渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 多彩なケックラン作品の中でも特にユニークな「映画」を題材とする作品は、7人の映画スターを描いた「セブンスターズシンフォニー」(33年)から始まり、翌年その中でも特別にお気に入りの女優リリアン・ハーヴェイの「アルバム第1集」が生まれた。第1、9曲は詞も作曲者が手がけ、「大丈夫だよ」は一日に二度もリリアンの映画を見に行ったケックランがその晩一気に書き上げたもの、第2~8曲は映画のシーンから着想したものだそうだ。その後「リリアンのアルバム第2集」(フルート、ピアノ、オンドマルトノ、クラヴサン)、歌曲「グラディス(リリアンの演じた役)の7つの歌」、彼自身とリリアンが共演する架空の映画の音楽だという「デイジー・ハミルトンの肖像」(2台ピアノ)も書かれた。
 「ジーン・ハーロウの墓碑」も当初リリアンからインスパイアされ、「ロマンス」としてハーロウの生前に構想されたが、後に「旋律線が彼女(ハーロウ)に相応しい」と感じた作曲者は、自身の歌曲「Epiphanie」(1900年頃、ドリール詩)のモティーフを途中に使用するとともに、その詩の一節「風が彼女のブロンドの髪にふれ、えもいわれぬ余情がその肩に漂う」を引用して書き添え、「墓碑」として彼女に捧げた。サクソフォンについてはその音色が「スターとカリフォルニアの輝きを表す」と説明している。


*女優について

リリアン・ハーヴェイ
Lilian Harvey (1906-68)
イギリスに生まれ渡独、バレエダンサーを経て多くのサイレント映画に出演し、トーキー時代になると演技、ダンス、語学力を活かし、『会議は踊る』(31年)等、ドイツのオペレッタ映画全盛期のヒロインとして国際的に活躍したが、第二次大戦でドイツと映画界から離れた。

ジーン・ハーロウ
Jean Harlow (1911-37)
19才で『地獄の天使』(30年)の悪女役に抜擢され、セックス・シンボルとして一躍大スターとなるが、その後演技力の評価も高まる中、26才の若さで病に倒れた。飲酒、3回の結婚、夫の自殺などスキャンダラスな生涯が伝記や伝記映画によって語り継がれる伝説の女優。


*歌詞大意

「女学生の肌を保ちましょう」

若い娘の肌をごらんなさい
パルムオリーブ石鹸があなたの肌を維持してくれます
若い娘の肌をごらんなさい

パルムオリーブ石鹸は
 パルム油とオリーブオイル油をベースにしています
これらの油はサラダにも使えますが
それより御婦人方の肌に効くのです
ビロードのようにやさしく 肌をさらに柔らかくします

若い娘の肌をごらんなさい

「大丈夫だよ」

大丈夫だよ 愛の苦しみは一時しか続かないから
 おおマルティーニ!*
大丈夫だよ 愛の喜びは一生続くから
 おお幻想の王女よ
大丈夫だよ スターは幸せで
 いつも最高の結末を迎えるから

ああ!この非現実の世界で
 映像の中の君の幸せが私達を照らす
ワルツが君を
 永遠の愛の歓喜に誘うとき

大丈夫だよ 君の青い瞳の中に
 再び澄んだ太陽が輝くから
ああ!大丈夫だよリリアン
 君の愛の幸せはずっと続くから

*注:マルティーニ(1741-1816)作曲「愛の喜びは」に「愛の喜びは一時しか続かず、愛の苦しみは一生続く」という有名な歌詞がある。