ピアソラ「3つのタンゴ」2012-03-09

前回・前々回はハンガリー、フランス、とヨーロッパの作曲家のお話をしましたが、今回は海をこえて遠く南米アルゼンチンの作曲家、アストル・ピアソラです。

アルゼンチンタンゴを見たことはあるでしょうか??正装した男女が大人の色香をムンムン香らせながら、どこか駆け引きをしているような激しい足さばきで踊っているダンスです。(これは私の感想ですが…)スポットライトの中で熱く踊っているその影で、ヴァイオリンやコントラバス、そしてさらにその横でタンゴに欠かせないバンドネオンが演奏されているのがタンゴの特徴のひとつです。

アルゼンチン出身のピアソラは元々はこのバンドネオン奏者でした。最初は父親のレストランで演奏していたそうですが、当時最先端だったトロイト楽団にも参加し、バンドネオン奏者として徐々に頭角を表わすようになります。脱退後は自ら先鋭的なタンゴを目指しますが、ほどなくしてタンゴの限界を感じ、クラシック作曲家になろうと渡仏します。しかし留学先の先生に、「タンゴこそ君の原点だ」と言われ、ピアソラは目覚めました。帰国後発表したエレキギターを取り入れたタンゴ、クラシックやジャズの要素を取り入れたタンゴは当初保守派の袋叩きにあいますが、その後紆余曲折を経て世界的に認められ、見事にタンゴの壁を打ち破ったのでした。

ちなみにこのバンドネオン、一見するとアコーディオンに似ていますが鍵盤はついていません。左側に33個、右側に38個のボタンがあり、蛇腹を押すときと引くときで別の音が出るようになっており、さらには音階配置がほぼ不規則といった独特の構造を持つ極めて習得の難しい楽器で、そのため「悪魔の楽器」ともよばれるそうです。演奏しているおじさん達はみんな簡単そうに弾いていますが実はとても難しい事をしているので、タンゴを観る時はスポットライトの奥にいる彼らにも注目してみてはいかがでしょうか。

今回は数あるピアソラのタンゴの中から3曲をクラリネット4重奏版で演奏させていただきます。バンドネオンやヴァイオリンとはまた違った、クラリネット独特の深みのある音でのタンゴをお楽しみいただければと思います。(荒木)


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今月の演奏メニュー

3月25日(日)10時40分~ 於:本郷・金魚坂
コーヒーつき 1,500円

クラリネットカフェvol.4

トマジ「3つのディヴェルティメント」
ピアソラ「3つのタンゴ」
ファルカシュ「17世紀の古いハンガリー舞曲」
ほか

クラリネット四重奏:
山口真由 伊藤めぐみ 櫻田はるか 荒木こずえ

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