ベルギー料理店シャンドゥソレイユ「シャンドゥソレイユ9周年記念特別コンサートランチ」2003-07-05

*曲目

フランシス・プーランク
「三重奏曲(1926)」より
  第1楽章 Lento - Presto

ヨセフ・ヨンゲン
「子守歌(1936)」*ファゴットとピアノ

レオン・ヨンゲン
「ユーモレスク(1952)」*オーボエとピアノ

マイケル・ヘッド
「三重奏曲(1935)」
  第1楽章 Allegro crisp & lively
  第2楽章 Andante quasi Allegretto
  第3楽章 Allegro vivace

(モーツァルト「奥様お手をどうぞ」)


*出演

福井貴子(オーボエ)
井上直哉(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 オーボエ奏者・茂木大輔氏の「オーケストラ楽器別人間学(新潮文庫)」によれば、オーボエは「情緒的で鮮やかな音色の楽器。奏者も感情過多で個性的。しかし楽器の操作性がギネスブックに載ったほど悪いため、ストレスに苦しみくよくよ細かい性格となる。」ファゴットは「広く変化に富む音色の楽器。奏者も多様な側面をもった厚みのある人間で、オーケストラでの縁の下の力持ち的な役割に喜びを見い出す愛すべき正義派。」なのだそうです。ちなみに同書にピアノの項はありませんが、さしずめ「どうせ見なれたピアノには誰も関心を抱いてくれない、という被害妄想が、奏者のひねくれた性格をさらに助長している。」といったところでしょうか。本日はそんな(?)三人による三重奏と、ベルギーの作曲家兄弟によるオーボエとファゴットの独奏曲をお楽しみ下さい。

コーヒーと紅茶の人体実験 / カフノーツ#042003-07-06

カフノーツはコーヒーにまつわる短いお話をあれこれご紹介します。 コーヒーでも飲みながらのんびりお読みください。


 コーヒーと紅茶、あなたはどちらが好き? いぬ派ねこ派というように、このふたつ、わりとはっきりと二分されがちな気がします。

 朝、コーヒーか紅茶が飲めないと、なんとなく落ち着かない気分になります。どうしてこのふたつの飲み物がこんなにも欠かせないものになったのでしょう? 昔の人々が紅茶やコーヒーは体に毒だと信じて疑わなかったのも、この麻薬のような常習性を恐れたせいかもしれません。そして有名な紅茶とコーヒーどちらが毒なのか人体実験をしたという、うそかほんとうかわからないお話が生まれました。少しずつ細部は異なるけれども、数々の文献に登場する有名なお話のようです。

 バルザックが『風俗研究』で紹介したのは、イギリスで死刑囚三人に、チョコレート、コーヒー、紅茶のいずれかひとつだけを与えてどれくらい生きられるかを試したという実験です。チョコレートだけで生きた死刑囚は八ヶ月後に死に、コーヒーで生きた男は二年間、紅茶で生きた男は三年後に死んだのだとか。やはり、紅茶の国イギリスを舞台にした実験だけに、紅茶が一番という結果になったようです。バルザックいわく、さてはインドの紅茶会社が商売のためにこんな実験をさせたのか? さもありなんですね。

 トゥーサン=サマの『世界食物百科』やその他の書物には、この実験はどこか北欧の国でコーヒーと紅茶のみで行われたとあります。これもやはり死刑囚を使って、それぞれに紅茶だけ、コーヒーだけを与え続けます。ところがこの実験では、囚人たちはどちらも長生きし、実験をしようとした王や医師の方が先に死んでしまうほど。結局紅茶を飲み続けた男の方が七十九か七十三あたりで死に、もう片方はさらに長生きして九十まで生きたというのがこちらの実験結果。どちらかの優位性を都合よく説明するためのちょっとしたエピソードだから、結果はいろいろ。さらにこのお話には、実験の正当性を証明するために双子の死刑囚に実験させたとか、囚人はこの飲み物を気に入ってもっと飲ませてくれといいだしたとかという飾り話まで出てきて、よくわからない実験話をよりおかしくしています。

 コーヒーか紅茶が欠かせず飲めるのはいいけれど、実験として強要されて飲みたくはないもの。かわいそうな実験をされた囚人たちには悪いけれど、私たちはコーヒーも紅茶もどちらでも好きなだけ飲める自由さを満喫しながらいただきましょうか。(カフコンス第4回「オーボエ/ファゴット/ピアノによる三重奏」プログラム掲載。)

【参考文献】バルザック『風俗研究』(藤原書店)マグロンヌ・トゥーサン=サマ『世界食物百科』(原書房)日本コーヒー文化学会編『コーヒー事典』(柴田書店)

西川公子 Hiroko Nishikawa
ウェブやフリペの企画・編集・ライティング。プレイステーションゲーム『L.S.D.』の原案、『東京惑星プラネトキオ』『リズムンフェイス』のシナリオなど。著作に10年分の夢日記をまとめた『Lovely SweetDream』。最近は老人映画研究家。

オーボエ/ファゴット/ピアノによる三重奏(カフコンス第4回)2003-07-06

*曲目

プーランク「三重奏曲」
Francis Poulenc (1899-1963)
Trio pour piano, hautbois et basson (1926)
  1.Lento - Presto
  2.Andante con moto
  3.Rondo très vif

ヘッド「三重奏曲」
Michael Head (1900-1976)
Trio for oboe, bassoon & piano (1935)
  1.Allegro crisp & lively
  2.Andante quasi Allegretto
  3.Allegro vivace

(モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ より 奥様お手をどうぞ」)


*出演

福井貴子(オーボエ)
井上直哉(ファゴット)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 皆さんはオーボエとファゴットにどんな印象をお持ちだろうか。どちらもその優雅な音色でバロックの時代から活躍する歴史の古い楽器である。モーツァルトの素晴しい協奏曲もあるし、「白鳥の湖」や「人知れぬ涙」のようにオーケストラでも切なく美しいソロを聴かせてくれる。しかし近代になってクローズアップされたのは意外な側面だ。「ピーターと狼」でオーボエはアヒル、ファゴットはおじいさんを演じ、まるで大女優がコメディに転身して新たな魅力を放つように芸域を広げてしまった。そんな時代に書かれた本日の二曲、プーランク(仏)とヘッド(英)の三重奏も、それぞれ全く違った意味合いだが「近代的でどこかユーモラス」と言えるのではないだろうか。ちなみに次回9月のカフコンスでは、20世紀末に書かれたフランセとプレヴィンによる三重奏を演奏するので、こちらも是非お聴き比べいただきたいと思う。


*カフノーツ

#04 コーヒーと紅茶の人体実験