フルート奏者の本音2024-07-01

シン・金魚坂でのカフコンス初回は7月20日(土)の「鳥たちのカフェ」。記念すべき1曲目はデーヴィス(1957-)「鳥の歌(2009出版)」です。

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フルート・ソプラノ・ピアノによる鳥の歌というと「春だ!鳥と一緒に歌おう!」といった曲を想像されるかもしれませんが、この「鳥の歌」はなんと、鳥の曲を吹かされるフルート奏者のボヤキを曲にしたもの! フルート奏者でもあるデーヴィス自身が書いた歌詞は「なぜフルート奏者はいつも鳥にならなければいけないのか?」と始まって、「動物の謝肉祭」や「ピーターと狼」の鳥の音型なども交えながら、これらがどんなに難しいかを語り、いつも胃が痛くなることや、オーボエ奏者への不満まで、本音が炸裂します。

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なお2曲目には、そんな名人芸的「鳥」作品の典型といえるドップラー(1821-83)の「森の小鳥(1865頃)」を選びました。ホルン4本の森(今回はピアノで演奏)にフルートの鳥の声が響く美しい曲ですが、その裏にあるフルート奏者の本音も思い出しながらお聴きください。


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今月の演奏メニュー

2024年7月20日(土) 10時30分開演 (10時10分開場 11時30分終演予定)
於:本郷・金魚坂 (新店舗) / コーヒーまたは中国茶つき 1,800円

cafconc第164回
鳥たちのカフェ

デーヴィス「鳥の歌」 ソプラノ・フルート・ピアノ
ドップラー「森の小鳥」 フルート・ピアノ
グノー「ツグミ」 ソプラノ・ピアノ
アーン「ナイチンゲールがリラの花から」 ソプラノ・ピアノ
シャミナード「マドリガル」 ソプラノ・ピアノ
エマニュエル「ソナチネ ”田園”」 ピアノ
ヴィエネル「カッコウ/リンゴの花/フクロウ」 ソプラノ・ピアノ
コスマ「コロラドの鳥」 ソプラノ・ピアノ
ルーセル「ロンサールの二つの詩」 ソプラノ・フルート
メシアン「クロツグミ」 フルート・ピアノ

石橋美時(フルート)
渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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さえずりではない鳥の歌2024-07-04

7月20日(土)のカフコンスは2月の「魚たちのカフェ」の3人による「鳥たちのカフェ」。今回も歌曲は前半にアーン、後半にデスノスの詩による作品を入れています。まず前半、フルートの「森の小鳥」に続いては、森の中で小鳥に出会う「ツグミ」など3曲です。

グノー(1818-93)の「ツグミ(1839)」は、男の子が森の中で小鳥をみつけ、女の子へプレゼントしようと思いつくものの、小鳥は逃げてしまい… という可愛らしい物語。アーン(1874-1947)の「ナイチンゲールがリラの花から(1896初版)」は、夏の訪れを告げるナイチンゲールの声を聞きながら、春の日の失った恋に想いを馳せる歌。一転してシャミナード(1857-1944)の「マドリガル(1886初版)」は、君の優しいキスは気まぐれな鳥のようだ!と幸せいっぱいに歌います。

いずれもシューマンのリートを思わせるような19世紀のフランス歌曲です。曲探しの前には、デーヴィス的に言えば「鳥の歌曲はなぜコロラトゥーラ向けばかりなのだろう? なぜ鳥の声を模倣してばかりなのだろう?」と思っていましたが、さえずりとはまた違った素敵な鳥の歌が見つかりました。前後に演奏する、さえずりで構成されたフルート曲・ピアノ曲との対比もお楽しみください。


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今月の演奏メニュー

2024年7月20日(土) 10時30分開演 (10時10分開場 11時30分終演予定)
於:本郷・金魚坂 (新店舗) / コーヒーまたは中国茶つき 1,800円

cafconc第164回
鳥たちのカフェ

デーヴィス「鳥の歌」 ソプラノ・フルート・ピアノ
ドップラー「森の小鳥」 フルート・ピアノ
グノー「ツグミ」 ソプラノ・ピアノ
アーン「ナイチンゲールがリラの花から」 ソプラノ・ピアノ
シャミナード「マドリガル」 ソプラノ・ピアノ
エマニュエル「ソナチネ ”田園”」 ピアノ
ヴィエネル「カッコウ/リンゴの花/フクロウ」 ソプラノ・ピアノ
コスマ「コロラドの鳥」 ソプラノ・ピアノ
ルーセル「ロンサールの二つの詩」 ソプラノ・フルート
メシアン「クロツグミ」 フルート・ピアノ

石橋美時(フルート)
渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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ベートーヴェンとエマニュエルの「田園」2024-07-10

2楽章の最後(どっちの?)
7月20日(土)のカフコンスは「鳥たちのカフェ」。ピアノ曲はエマニュエル(1862-1938)の「ソナチネ ”田園”(1897)」を演奏します。全3楽章「ウズラ」「ナイチンゲール」「カッコウ」はそれぞれの鳴き声の音型を用いて書かれており、「田園 pastorale」というタイトル通り、ずばりベートーヴェンの交響曲「田園」を元ネタにした作品です。

といっても、この曲を初めて聞くと、1楽章は近代フランスらしい旋法的な響きの「牧歌 pastorale」的ソナチネに感じられるかもしれません。2楽章は変ロ長調、8分の12拍子で、ベートーヴェンの2楽章を連想する方も出てくるでしょう。そして2楽章の最後に、ベートーヴェンの2楽章最後のウズラ・ナイチンゲール・カッコウのかけ合いがそっくりそのまま引用されると、エマニュエルの2楽章も「小川のほとりの風景」だったことが決定的になり、各楽章がこの3羽の鳥だったことにも気づかされます。そうすると3楽章では「田舎の人々の楽しい集い」らしいフレーズが聞こえてきたり、嵐は来ないまでも陽が陰ったかなと自分から想像したりします。さらによく考えてみれば(こじつけとも言う)、1楽章にはベートーヴェンの1楽章「田舎に到着したときに目覚める晴々とした気分」の音型が用いられていたことがわかり、エマニュエルがベートーヴェンの「田園」を1曲まるごと踏襲していたことに驚かされます。(思えばベートーヴェンも伝統的な田園交響曲にのっとった上で独創的な「田園」を作曲したのでした。)

御託を並べましたが、単に全編に鳥の声が響く「牧歌的ソナチネ」として聞いても楽しめる、オススメの1曲です!


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今月の演奏メニュー

2024年7月20日(土) 10時30分開演 (10時10分開場 11時30分終演予定)
於:本郷・金魚坂 (新店舗) / コーヒーまたは中国茶つき 1,800円

cafconc第164回
鳥たちのカフェ

デーヴィス「鳥の歌」 ソプラノ・フルート・ピアノ
ドップラー「森の小鳥」 フルート・ピアノ
グノー「ツグミ」 ソプラノ・ピアノ
アーン「ナイチンゲールがリラの花から」 ソプラノ・ピアノ
シャミナード「マドリガル」 ソプラノ・ピアノ
エマニュエル「ソナチネ ”田園”」 ピアノ
ヴィエネル「カッコウ/リンゴの花/フクロウ」 ソプラノ・ピアノ
コスマ「コロラドの鳥」 ソプラノ・ピアノ
ルーセル「ロンサールの二つの詩」 ソプラノ・フルート
メシアン「クロツグミ」 フルート・ピアノ

石橋美時(フルート)
渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

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