カフコンス成人の日・20周年ガラコンサート(カフコンス第154回)2023-01-08

*曲目

<フルート 中村>
ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」
Claude Debussy (1862-1918)
Prélude à l'après-midi d'un faune (1892-4)
Prélude à l'après-midi d'un faune

<ソプラノ 渡辺>
ドビュッシー「星の夜」
Claude Debussy
Nuit d'étoiles (ca.1878-80)
プーランク「リボンの飾り」
Francis Poulenc (1899-1963)
Cocardes (1919)
  1.Miel de Narbonne ナルボンヌの蜂蜜
  2.Bonne d'enfant 子守りさん
  3.Enfant de troupe 兵隊さんの子分
Nuit d'étoiles / Cocardes

<フルート 石橋>
ダマーズ「演奏会用ソナタ」
Jean-Michel Damase (1928-2013)
Sonate en concert (1952)
  Prelude 前奏曲 / Rigaudon リゴードン /
  Aria アリア / Intermezzo 間奏曲 / Aria アリア /
  Sicilienne シシリエンヌ / Gigue ジーグ
Sonate en concert

<ピアノ 川北>
アイアランド「桜の木」
John Ireland (1879-1962)
The cherry tree (1937)
The cherry tree

<ソプラノ 柳沢>
ドリング「シェイクスピアによる歌曲」より
Madeleine Dring (1923-77)
Shakespeare songs (1944)
  1.Blow, blow thou winter wind 吹け 冬の風よ
  2.Come away, death 来たれ 死よ
  3.Under the greenwood tree 緑の木陰で
Shakespeare songs

<クラリネット 大橋/ファゴット 江草>
ピアソラ「20年前」「20年後」
Astor Piazzolla (1921-92)
Hace 20 años / 20 años después (ca.1974)
Hace 20 años / 20 años después

<フルート 石橋・中村>
ドップラー「アンダンテとロンド」
Franz Doppler (1821-83)
Andante et rondo (ca.1850-70)
Andante et rondo


*出演

石橋美時(フルート)
江草智子(ファゴット)
大橋裕子(クラリネット)
川北祥子(ピアノ)
中村淳(フルート)
柳沢亜紀(ソプラノ)
渡辺有里香(ソプラノ)


*プログラムコメント

 新年おめでとうございます。2003年1月にスタートしたカフコンスは、おかげ様で今年20周年を迎えました。ご来場くださった方々、会場の方々、皆様に深く感謝申し上げます。今後ともご贔屓の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は記念ガラコンサートと銘打ち、二人の若いフルーティストのソロとデュオを中心に、年長者たちは「20にちなむ」というお題で演奏いたします。

 * * * * *

 「牧神の午後への前奏曲」は言わずと知れたオーケストラの名曲でドビュッシーの出世作です。冒頭Cisの音は現代のフルートにおいてトーンホールと呼ばれる音の出る穴が小さく、また全ての指を離すためとても不安定な音色となり微睡みの世界へと誘います。
 牧神の象徴であるパンの笛をイメージするフルートが曲全体を通し重要な役割を担っており、また彼の印象派たる所以かつ音楽的な特徴といえる波のようなグラデーションも聞き所です。本日はフルートとピアノのみでオーケストラのような濃淡や明暗を表現できるよう演奏します。<中村>

 * * * * *

 「星の夜」はドビュッシーが20歳の年に全作品中はじめて出版されたメロディアスな歌曲で、「リボンの飾り」はプーランクが20歳で書いた初期の作品です。
 ドビュッシーの歌曲作品がだんだんと老成していくのに対し、プーランクの歌曲作品は後期になるにつれ変化するというより、もともといくつもの作風を抱えていて、詩に合わせてモードを選んでいるように思います。「リボンの飾り」も50歳で作曲されたと言われても全く疑わないでしょう。
 ジャン・コクトーの詩は文章というより単語の羅列で、そこにつけられたのはメロディーというより音の並びです。単語は連想ゲームやしりとりのように次の単語に繋がり、3曲の題名もしりとりになっています。<渡辺>

「星の夜」(バンヴィル)

*星の夜 あなたのヴェールの下
あなたのそよ風と香りの下
ため息をつく竪琴
私は過ぎ去った愛を思い描く

穏やかな憂いが心の奥に生まれる
夢見る森で愛が震えるのが聞こえる

*星の夜〜

ふたりの泉で空のように青いあなたの眼差しを思う
この薔薇はあなたの呼吸、この星はあなたの瞳

*星の夜〜

「リボンの飾り」(コクトー)

1. ナルボンヌの蜂蜜
心を使ってごらん。
道化師たちが黄金のフンから花と咲く
眠ること! 一蹴りすると飛んでいく
「おらと遊んどくれ」
モアブ人、青十字の女性。キャラバン。
バニラ、ペッパー。タマリンドのジャム。
船乗り、襟、飾り房、口ひげ、マンドリン。
リノリウムのだまし絵。ありがとう。
映画、斬新なミューズよ。

2. 子守りさん
テクラ、我々の黄金時代よ。
 パイプ、カルノー、ジョフル。
私はすべての神経痛持ちに申し出る…
キリン、結婚式。ギュスターヴの挨拶。
グノーのアヴェ・マリア、つつましい乙女、
マイヨールの歌、旅行クラブ、蓄音機。
はり紙、フルカラー犯罪。機械じかけのピアノ、
ニック・カーター、ひどい話だ!
自由、平等、友愛。

3. 兵隊さんの子分
コルネット一本の曲、ポルカ。
ソフトキャラメル、すっぱいキャンディー、はっか飴
幕間。木靴の匂い。
太鼓叩きに殺されたサテンの美しい獲物。
ハンブルク、小ジョッキ、木いちごのシロップ
自らの手を使う鳥刺し。
幕間の寸劇、青い軍服。
空中ブランコが死に香を捧げる。

 * * * * *

 20世紀フランスの作曲家ダマーズの「演奏会用(コンセール風)ソナタ」はフルーティストに人気のレパートリーで、ダマーズが今の私と同い年の時に作曲されました。題名はソナタですが、いくつかの舞曲で構成されたバロック時代の組曲(コンセール)の形式で書かれていて、それぞれキャラクターの異なる舞曲、明るくユーモアのある旋律と鮮やかな転調が魅力的です。私は終盤でやってくるシシリエンヌ(ゆるやかな8分の6拍子の舞曲)の、温かくてどこか懐かしいような音楽が、特にお気に入りです。<石橋>

 * * * * *

 「桜の木」の楽譜には20歳の青年を主人公としたハウスマンの詩「一番愛おしい木」の一節が引用されています。人生70年のうちの20年はもう戻ってこない、桜を見るのに50回の春では足りない、という詩です。イギリスの詩と曲の、日本の桜にも通じる2分間の風景をお楽しみいただけたらと思います。<川北>

 * * * * *

 今年生誕100年のイギリスの作曲家ドリングの、先の12月の特集でも取り上げました「シェイクスピアによる歌曲」から、今回は彼女が20歳の学生の時(1944年の誕生日前)に大学内で自身のピアノにより初演した3曲をお送りします。シェイクスピアの劇中歌というとリュートを弾きながら歌う小唄のイメージがありますが、ドリンクの歌曲はまるでアリアのようにドラマティックなものとなっています。<柳沢>

「シェイクスピアによる歌曲」より

1. 吹け 冬の風よ (お気に召すまま・2幕7場)

吹け 冬の風よ
お前はそれほど冷たくない
人間の不義理ほどには

お前の歯はそれほど痛くない
なぜならお前の姿は見えないから
たとえお前の息が荒くとも

*ヘイ ホー 歌え 緑の柊に
友情はどれも作り物 愛はどれも愚か
そして ヘイ ホー 柊よ
この暮らしこそ喜びだ

凍れ 冷たい空よ
お前はそれほど噛み付いて来ない
忘れられた恩ほどには

お前は水を歪ませるが
お前の刃はそれほど鋭くない
思い出されることのない友ほどには

*ヘイ ホー〜

2. 来たれ 死よ (十二夜・2幕4場)

来たれ 死よ
そして 悲しい糸杉の中に私を横たえておくれ
消え去れ 息よ
私は心無い娘に殺されたのだ

白い装束に イチイを刺して
用意しておくれ
私の死は 誰とも
分かち合えないのだ

芳しい花の一輪さえも
私の黒い棺に投げ入れないでおくれ
友人の一人にさえも 哀れな私の亡骸を
見送らせないでおくれ

何千もの溜息を抑えて
私を横たえておくれ おお
恋人が決して私の墓を見つけず
決してそこで泣くことがない所へ

3. 緑の木陰で (お気に召すまま・2幕5場)

緑の木陰で 僕と横になりたい人
楽しい歌を 小鳥と歌いたい人は
ここへおいで!
ここに敵はいない 冬と荒天を除けば

野望を捨てて 太陽の下で暮らしたい人
食べる物だけ求め 得られた物だけで満たされる人は
ここへおいで!
ここに敵はいない 冬と荒天を除けば

 * * * * *

 20にちなむ曲ということでピアソラの「20年前」と「20年後」を抜粋したデュオを演奏いたします。ジャズバリトンサックス奏者のジェリー・マリガンとピアソラ自身の演奏によるアルバム「SUMMIT」に収録されている2曲です。ピアソラはこの頃に「リベルタンゴ」を完成させており、それを聴いたマリガンがとても感銘を受けアルバム共作に至ったようです。
 ピアソラは最初にこの「20年前」と「20年後」を作り、アルバムA面B面の最初にそれぞれ配置しており全体がノスタルジックなトーンと時の流れを感じるような構成に。タンゴとジャズのコラボレーション、マリガンの深いバリトンサックスの響き、今でも愉しめる名盤です。選曲しながら私もこのアルバムを聴き入ってしまいました。<大橋>

 大学生の時からカフコンスに参加し、第◯回、◯周年、令和改元などさまざまな節目をお客様と一緒に、その時々のユニークなプログラムでお祝いできたことを嬉しく思います。今回は20周年の記念にアストル・ピアソラの「20年前」「20年後」を演奏いたします。
 バンドネオンとバリトンサックスの共演は2人がイタリアで活動していたことから実現したようですが、マリガンは「ピアソラが、私の演奏を初めて聴いて以来、20年もの間、私とアルバムをつくることを夢見ていたことがわかった」と懐古しています。20年というタイトルはそこから来ているのかもしれません。
 2分ずつの短い演奏ですがクラリネットとファゴットの共演を楽しんでいただければ幸いです。<江草>

 * * * * *

 せっかくフルートが2人いるのだから!ということで二重奏も実現させていただきました。アンダンテの美しいかけ合いと、後半の軽快で競るようなロンドを楽しんで聴いていただけたら幸いです。<石橋>

 「アンダンテとロンド」はフルート兄弟として大活躍していたドップラー兄弟がヨーロッパ全土を演奏旅行していた時に作曲されました。またドップラー研究家A.アドリアンにより、近年この曲はソナタの第3、4楽章だったことが分かっています。石橋さんとは同学年という事もあり、華やかなこの曲を息のあった演奏でお届けします。<中村>


*ブログ

2023-01-15 通算3000人目のお客様
2023-01-11 ご来場ありがとうございました
2023-01-08 カフコンス成人の日・20周年ガラコンサート(カフコンス第154回)
2023-01-07 カフコンスの成人の日は20歳で明日です!
2023-01-05 ガラコンサート(器楽編)
2023-01-03 ガラコンサート(ソプラノ編)
2023-01-01 謹賀新年
2022-12-29 ガラコンサート(フルート編)
2022-12-23 20周年に寄せて
2022-12-18 W杯とカフコンス