ベッリーニとベートーヴェン2016-06-11

今回の「ソプラノ・ホルン・ピアノによるベッリーニ特集」では、3人それぞれのソロも挟むことにしました。ホルンで演奏するのは学生時代の習作「オーボエ協奏曲」から「Allegro polacca」です。(ホルンといえばドニゼッティのレクイエム※前出のバスのアリア「Oro supplex」のホルンソロもあり、男声が加わればワーグナーの「ノルマ」アリア※前出も?と思ったのですが、二重唱も入れたくなって収拾がつかなくなりそうなので、ここは器楽曲で...)

「オーボエ協奏曲」は単一楽章で、オーケストラによる短い導入部「Allegro」と、ゆったりと美しい「Larghetto」、ポロネーズ風ロンド「Allegro polacca」の3部分から成ります。自筆譜には「音楽院学生ベッリーニ、1823」と書かれており、1941年にチレアがベッリーニの習作をいくつかまとめて出版した際に世に出たものと思われます。その中で一番人気を得たのがこの協奏曲で、現在ではトランペットやホルンでも演奏されます(経緯は不明)。

さて今回取り上げるのは軽快なロンドの部分ですが、どんな時にも「美しい旋律」にばかり注目が集まってしまうのがベッリーニで、この曲も「Larghettoの旋律がアリアのように美しい」というだけで片付けてしまわれがちです。習作は仕方ないとしても、オペラですら「旋律以外に特筆すべきものはない」と不当に決めつけられているように思えますし、ストラヴィンスキーの「ベッリーニとベートーヴェンは2大B」という賛辞でさえ、裏に「旋律はすばらしいがベートーヴェンのような構築性はない」という皮肉を感じてしまいます。

しかし旋律の評価が先行しているのは本人も自覚していたはずで、だからこそ作曲に時間をかけて、一作ごとに進化していったとも考えられるのではないでしょうか。そもそもベッリーニは作曲家の父と祖父を持ちながら10代から活躍したわけではなく、本格的に学んだのも1819年にナポリの王立音楽院に入ってからで、25年の卒業作のオペラを認められて26年の2作目でようやく劇場デビューしています。その後は27年の3作目でスカラ座デビュー、と躍進していくものの、「生まれながらにして苦労もせずに美しい旋律を書けてしまったイメージ」とはちょっと違う気がするのですが...

そう思うと音楽院入学前の作品も聴いてみたくなりませんか?(つづく)


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今月の演奏メニュー

2016年6月26日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第121回
ベッリニアーナ・カフェ

ベッリーニ「"カプレーティとモンテッキ" より おお幾度か」sop,hr,pf
同「Tecum principium」sop,pf
同「協奏曲 より Allegro polacca」hr,pf
ヘンツェ「ルーシー・エスコット・ヴァリエーション」pf
ニコライ「ベッリーニの "夢遊病の女" による協奏的変奏曲」sop,hr,pf

柳沢亜紀(ソプラノ)
笠間芙美(ホルン)
川北祥子(ピアノ)

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