ドヴォルザーク「三重奏曲op.74」2013-10-16

先月のメンデルスゾーンは教育熱心な母親とバックアップを惜しまぬ父親の最強コンビによって幼少から才能を開花させましたが、ドヴォルザーク(1841-1904)は6歳から習い始めたヴァイオリンで頭角を現すものの、長男の彼に宿屋(&肉屋)を継がせようとする父親の反対にあい、経済的にも苦学生だったエピソードで知られています。無名時代には気に入らない自作を燃やして料理をするという「ラ・ボエーム」を地でいくボヘミアンでした。

「三重奏曲op.74」は1887年1月、円熟期のドヴォルザークが私的な楽しみのために作曲した小品集です。彼は自宅に間借りしているアマチュアヴァイオリン弾きの青年が教師とデュエットするのを聴き、自分もヴィオラで参加して合奏をしようと思い立って(ドヴォルザークはオルガン学校卒業後、ヴィオラ奏者としてキャリアをスタートした)、4楽章から成る三重奏曲を1週間で書き上げます。

が、テルツェット(小三重奏曲)と名付けたこの作品もアマチュア青年には演奏困難だったようで、ドヴォルザークはすぐに、より易しい新たな三重奏曲にとりかかり、「ミニアチュール(バガテル)op.75a」(と、そのヴァイオリンとピアノ用編曲「ロマンティックな小品op.75」)が10日後に完成、ようやく合奏が実現することになりました。

もしドヴォルザークが最初から青年の技量を正確に把握していたら?と考えると、op.74は嬉しい誤算から生まれた名曲と言って良いのかもしれません(笑)


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今週末の演奏メニュー

2013年10月20日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第105回
弦楽三重奏のひととき〜Les violons de l'automne

モーツァルト(偽作)「鏡のカノン」
モーツァルト「ディヴェルティメント第3番k.anh229(439b)」
ドヴォルザーク「弦楽三重奏曲op.74」

島﨑祐子(ヴァイオリン)
荒井智子(ヴァイオリン)
神永枝理子(ヴィオラ)

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