カフェコンセールの歌姫vol.5(カフコンス第84回)2011-07-10

*曲目

サティ「シテールへの船出」*ヴァイオリン・ピアノ
Erik Satie サティ (1866-1925)
Embarquement pour Cythère (1917)

同「乗合バス/やさしく」*ソプラノ・ピアノ
L'omnibus automobile (1902)
Tendrement (ca1900)

ドゥーセ「イゾルディーナ」*ピアノ
Clément Doucet (1895-1950)
Isoldina

ミヨー「劇場の6つの歌」*ソプラノ・ピアノ
Darius Milhaud (1892-1974)
Six chansons de théâtre (1936/38)

同「"屋根の上の牛" によるシネマファンタジー」*ヴァイオリン・ピアノ
Cinéma-Fantaisie d'apres "La Boeuf sur le toit" (1919)

(ミヨー「カラメル・ムー」*ソプラノ・ヴァイオリン・ピアノ)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
道橋倫子(ヴァイオリン)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 「シテールへの船出」は1995年にフランス国立図書館で発見された未完のサロン用小品。本日は発見者による補筆版で演奏する。「乗合バス」「やさしく」はサティが伴奏者を務めていた歌手(・俳優・作家)イスパの詩によるカフェコンセール用シャンソン。
 「屋根の上の牛」はミヨーがブラジルの印象をロンド風にまとめたもので、ミヨーはこれをチャップリンの映画の伴奏に使いたいとも考えたが、結局コクトー台本によるバレエとして初演され、その舞台が禁酒法時代のアメリカのバーだったことから、後にミヨーらの通うバーが店名を「屋根の上の牛」と改めた。この店はパリで初めてジャズが演奏された場所とも言われ、当時、ドゥーセ(クラシックから転身したジャズピアニスト)らが演奏していた。「劇場の6つの歌」はミヨーの手がけた劇音楽からの抜粋による歌曲集。


*歌詞大意

「乗合バス」ヴァンサン・イスパ

おぞましい7月14日のこと
ピガール広場は暑かった、非常に暑かった
大きな気球がひとつ、音も立てずにおごそかに旋回していた
空のたったひとつの国道を
喉が渇く、非常に渇く陽気だった、そして小さな噴水は
下から上へと吹き上げる運命の奴隷

9時35分頃のこと
甘美な夜が優雅に降りてきて
小さな噴水は水盤の上で涙を流していた
私は広場の真ん中を通り過ぎるのを見た
一台の乗合バスを、聞いてくれ
みみずくの大きな緑と赤の目をくっつけたバスを

バスはカラだったが「満員」と張り紙が
青地に文字があかあかと浮かび上がっていた
私はこの怪物を駆け足で追いかけた
まるでカバのように
女子供、犬に巡査たちや
代議士やその他の多くの動物たちを踏みつぶしていく怪物を

とうとうオペラ座広場でバスは止まった
そして私はバスが石膏の入った袋でいっぱいになっているのを見た
この袋は、運転手は私に言った、この袋は
気難しい乗客の代わりなのさ
ぼくらは20ヶ月以上も試している
この袋は乗客と同じくらいの重さでね

ではなぜ、私は親切な運転手に言った
見ず知らずの歩行者を踏みつぶしてきた運転手に
なぜ大切な人々よりこの袋なんだい
そりゃあ、運転手は私に答えた、いわくありげに
そりゃあ、分かるだろう、事故を起こさないためさ
乗客が無事でいられるように

「やさしく」ヴァンサン・イスパ

*やさしく澄んだ愛を
あなたが忘れてしまわないように
ここに私の心、震える心
私の幼い哀れな心がある
そしてここに、あなたが咲かせた青ざめた花がある
あなたのために死んでしまいそうな私の魂だ
そしてとても穏やかなあなたのまなざしのために

私の魂は礼拝堂だ
そこで夜も昼も
あなたの不滅の美しさの前で
膝まづいて私の忠実な愛を祈る
闇と神秘の中で
私は愛を込めて歌う
甘美な祈りを、とても軽薄な異教の祈り
それはあなたの魅惑的な名

*やさしく澄んだ愛を
あなたが忘れてしまわないように〜

バラが咲いた
私の心の庭で
その愛のバラは
花で作られたかわいらしいあなたの唇ほど赤くはない
あなたのひどく残酷な手に
私は恋焦がれる
あなたは一番美しい花をむしることも摘むこともできる
この庭はあなたのものだから

*やさしく澄んだ愛を
あなたが忘れてしまわないように〜

『劇場の六つの歌』

*ジョルジュ・ピトエフ
「お前は私から逃れられない」op.151 (1936) より

1.
私の手をとって
ジプシーの老女は占った
彼女は予言した
お嬢さん 気をつけな!

彼は悪い男 とても悪い男
彼はひどい男 とてもひどい男
とてもとてもとてもとても
悪くてひどい男だよ

2.
ちっちゃな1歩 2歩
子犬が走っていく
はるかに遠く続く道を
子犬はドーヴァーをめざす

ちっちゃな1歩 2歩
子犬が走っていく
道で小川を見つけた
おお! そして大きくジャンプした

ちっちゃな1歩 2歩
子犬が走っていく
道で夜を見つけた
おお! そしておやすみを言った

*ジュール・シュペルヴィエル
「最初の家族」op.193 (1938) より

3.
私は網にかかり
何の希望もない
広大に広がる空も
私の息を詰まらせる

私が夜に何をしたというのか
夜はその重さで私の胸を締めつける
おまえはもういないのか
それほどに弄ばれた若さよ

星よ 救っておくれ
秘めた恋から
月よ 扉を開いておくれ
さもないと私は死んでしまう

4.
順番に! 動物たち
不調に効く薬を持ってきました
食べたとたんに
効き目を感じますよ!

牛よ これはおまえの乳房に
馬よ もっとうまくいななけるように
ライオンよ おまえのたてがみに
それから蛇よ おまえの幸せのために
象よ おまえのラッパに
おまえの羽根に 鳥よ
空想の獣よ これはおまえの詩想のために!

食べたとたんに
効き目を感じますよ!

*アンリ・レネ・ルノルマン
「天の狂女」op.149 (1936) より

5.
私の友 白鳥
氷の囚人たち
解き放たれよ
魔法から

6.
白い 夏の日
羽根のない鳥はどこへ行く?

白い 夏の夜
羽根のない鳥は何をする?

知り 忘れ 話し 泣き
荒れた地で青い花を摘む

白い 夏の日
羽根のない鳥はどこへ行く?

白い 夏の夜
羽根のない鳥は何をする?


*ブログ

2011-07-11 ご来場ありがとうございました
2011-07-10 カフェコンセールの歌姫vol.5(カフコンス第84回)
2011-07-09 アンコール予告
2011-07-07 星に願いを?
2011-07-01 今日は何の日?(サティ命日)
2011-06-27 アンチ巨人は巨人ファン?
2011-06-22 今日は何の日?(ミヨー命日)