ナポリ楽派の音楽~A.スカルラッティ生誕350年/ペルゴレージ生誕300年記念(カフコンス第74回)2010-09-26

*曲目

A.スカルラッティ「カンタータ "君ゆえ愛に身を焦がし"」
Alessandro Scarlatti (1660-1725)
"Ardo è ver per te d'amore"
  Recitativo: Bella, s'io t'amo il sai
   美しい人よ 私が愛しているのをあなたは知っている
  Aria: Ardo è ver per te d'amore
   あなたのため 私は愛に身を焦がす
  Recitativo: T'amo, t'amo o cara
   愛している 愛しい人よ
  Aria: Quel vento che t'intorno
   風はあなたの周りを
*ソプラノ・フルート・ピアノ

ペルゴレージ「シチリアーナ」
Giovanni Battista Pergolesi (1710-36)
Sicilliana(ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 第二楽章)
*フルート・ピアノ

同「奥様女中」より
"La serva padrona" (1733)
  Aria: Aspettare e non venire
   待っているのに来ないこと(ウベルトのアリア)
  Aria: Stizzoso, mio stizzoso
   私の怒りんぼうさん(セルピーナのアリア)
  Duetto: Lo conosco quegli occhietti
   私にはわかる あなたのその眼は(二重唱)
  Aria: Son imbrogliato io già
   もう わけがわからない(ウベルトのアリア)
  Duetto: Per te io ho nel core
   あなたのために 心の中で(二重唱)
  Finale: Contento tu sarai
   あなたはきっと満足なはず(二重唱)
*ソプラノ・バリトン・ピアノ

(ストラヴィンスキー「プルチネッラ より Pupillette Fiammette」)


*出演

柳沢亜紀(ソプラノ)
藪内俊弥(バリトン)
山本葵(フルート)
川北祥子(ピアノ)


*歌詞大意

「君ゆえ愛に身を焦がし」

*レチタティーヴォ

美しい人よ 私が愛しているのをあなたは知っている
そして あなたの愛らしい眼が
私の胸に大きな炎を灯したことも

あなたは気づいている
愛しいあなたのいない場所が
私の眼には恐ろしく映り
あなたから遠く離れては平安を取り戻せないことを

だが もっと激しい痛みが もっと辛い悲しみが
私の心を苦しめているのを あなたは知らない

*アリア

私は身を焦がす そう
あなたのため 愛に
しかし心の痛みは愛ではない
嫉妬だ

それだけが
冷たい不安と残酷な悪寒で
私の魂を苦しめる

*レチタティーヴォ

愛している そう 愛している 愛しい人よ
だが 愛することに おお神よ
動揺を覚えるのだ
それは心に平安を与えず
すべての喜びを胸の中で不幸に変えてしまう

私は震える その愛らしい眼の偉大な力で
あなた自身の心をも虜にしてしまいそうな
美しく輝くあなたの顔を見ると
そして私は 心に激しく苦しい痛みを感じる

私は怖れる 稀ですばらしいあなたの美しさに
感嘆する全ての人を
そして最後には畏れてしまう
太陽 大気 風さえも

*アリア

風はあなたの周りを
いつも楽しそうに吹く
あなたの美しさに惚れてキスしに来るのだ

そして 偉大な昼の神は
あなたを光で照らして
賛美と崇拝を送るのだ

「奥様女中」より

 召使いのセルピーナは主人のウベルト(独身で金持ちの老人)から娘のようにかわいがられてきたので今ではすっかり奥様気取り。今朝もウベルトに飲物を頼まれたがもう三時間も待たせている。

*アリア

ウベルト:
待っているのに来ないこと
ベッドに入ったのに眠れないこと
尽くしているのに受け入れないこと
この三つは死ぬほど嫌だ

 ウベルトはセルピーナに文句を並べるが、セルピーナは「召使いだと馬鹿にしないで奥様のように扱ってほしい」と主張する。

*アリア

セルピーナ:
私のおこりんぼうさん
あなたは偉そうにするのね
でもそれはお利口じゃないわ
私がだめと言ったら
おとなしくして 文句を言わないこと
シッ! セルピーナはそうしてほしいの

わかって下さると信じてるわ そうよ
私のことを知ってから
長い長い月日がたっているんですもの

 セルピーナを痛い目に合わせてやりたいウベルトは、結婚相手を見つけると言ってセルピーナを追い出そうとするが、セルピーナはそれなら自分が妻になると言いだす。

*二重唱

セルピーナ:
私にはわかる あなたのその眼は
抜け目なく 物欲しそうで 意地悪で
口ではノーと言っても
イエスと合図しているのよ

ウベルト:
お嬢さん それは違います
ひどく舞い上がっておいでだ
眼も口もあなたにノーだと言っているのに
イエスに聞こえるなら夢でしょう

セルピーナ:
でもどうして? 私は美しく
優しく 理知的でないかしら?
ねえ見て 優雅で
ほら 颯爽として 気高いでしょ!

ウベルト:
(ああ! 彼女は私がどうなるか試しているのだ)
えい! 行ってしまえ えい! 馬鹿者

セルピーナ
(うまくいきそうだわ)
さあ旦那様 決心して
私の愛情はあなたへのもの
私と結婚するべきだわ

ウベルト:
ああ 何とわけのわからない話だ!

 セルピーナは召使い仲間を軍人に変装させ、婚約者だとウベルトに紹介して別れの挨拶をする。策略と知らないウベルトは悩む。

*アリア

ウベルト:
もう わけがわからない
心の中に何かがあるけれど
何と呼ぶのか自分ではわからない
愛なのか 哀れみなのか

もう一つの声が聞こえる
ウベルト よく考えろ と

私はイエスとノーの間にいる
望むのと望まない間に
そしてさらに混乱する
ああ! この先もっと哀れで不幸に
されてしまうのだろうか!

 セルピーナの策略でひと騒動の後、誤解の解けたセルピーナとウベルトは晴れて結ばれる。

*二重唱

セルピーナ
あなたのために 心の中で
愛のハンマーが いつも鳴っているのよ

ウベルト
君のために 心の中で
愛の太鼓が いつも強く打っているんだ

セルピーナ:
ねえ 聞いて ティピティ ティピティ…

ウベルト:
聞こえたよ そう 本当だ
君も聞いて タパタ  タパタ…

セルピーナ:
本当ね 聞こえたわ

セルピーナ / ウベルト:
でも こんな事があるのだろうか?
わからないわ / 私もわからない
愛しい夫よ! / 愛しい妻よ!
ああ 神様!
そう うまく考えついたものだ!

愛しい方! / 大切な人!

*二重唱(フィナーレ)

セルピーナ:
あなたはきっと満足なはず
私を愛してくれるわね?

ウベルト:
心が満足しているのがわかる
君を愛するよ

セルピーナ:
本当のことを言って

ウベルト:
これが真実だ

セルピーナ:
まあ! そうは見えないわ

ウベルト:
疑わないで ああ!

セルピーナ / ウベルト
ああ優しい旦那様! / 最愛の奥さん!
こうして あなただけが私を喜ばせてくれる


*ブログ

2010-09-26 ペルゴレージとプルチネッラ
2010-09-26 ナポリ楽派の音楽~A.スカルラッティ生誕350年/ペルゴレージ生誕300年記念(カフコンス第74回)

ペルゴレージとプルチネッラ2010-09-26

9/26のアンコールはストラヴィンスキーの「プルチネッラ」から「Pupillette Fiammette」。もちろんペルゴレージ原曲です。

アンコール曲探しでペルゴレージの全作品リストを見たら意外に作品数が少なく、初めて短命だったと知りました。なんと26才で亡くなっています。じゃあ天才だったんだと急に思うのも変なのですが、早逝なイメージのシューベルトも31才、モーツァルトだって35才、彼らが26才までの作品しか残していなかったらと考えてしまいます。そして短命作曲家をもっと探してみたくなって曲探しから脱線(笑)滝廉太郎は23歳だったんですね。

さてペルゴレージに戻り、アンコールは「プルチネッラ」の「原曲」をお聴きいただこうということに。「あの」ストラヴィンスキー的な「プルチネッラ」で聴き慣れているペルゴレージ作品の原曲はどう違うのか,という企画です。でも「Il Flaminio」「Lo Frate 'nnamorato」「Adriano in Siria」などの楽譜を入手してみると、意外に「プルチネッラ」は原曲にかなり忠実とわかりました。そういえばペルゴレージ偽作の「Se tu m'ami」も、最後にあの下降形で笑わせてくれる以外は原曲通りですよね(余分な音もちょっと入っているだけで?)。ストラヴィンスキーloveな私でさえストラヴィンスキーが挿入したに違いないと思ってしまうモティーフも、意外にオリジナルだったりします。「Pupillette Fiammette」(ちなみに結局ストラヴィンスキー版を演奏)もこの通り↓

ストラヴィンスキー「プルチネッラ」から「Pupillette Fiammette」
Stravinsky's Pupillette Fiammette

ペルゴレージ「Lo Frate 'nnamorato」から「Pupillette Fiammette」
Pergolesi's Pupillette Fiammette

一度「プルチネッラ」全曲を原曲と比較してみたいです。(原曲を全曲並べて演奏してみたいですが、カフコンスでは編成的に無理そうです...)