カフェコンセールの歌姫vol.4(カフコンス第72回)2010-06-27

*曲目

シェーンベルク「キャバレーソング集」
Arnold Schönberg (1874-1951)
Brettl-Lieder (1901)
  Galathea ガラテア
  Gigerlette ギガレッテ
  Der genügsame Liebhaber もの分かりのよい恋人
  Mahnung 忠告
*ソプラノ・ピアノ

ボウルズ「笑劇のための音楽」より
Paul Bowles (1910-99)
Music for a farce (1938)
  3.Allegretto: Tempo di Quickstep
  5.Lento: Tenpo di Valse
  7.Presto
*ピッコロ・トランペット・パーカッション・ピアノ

シェーンベルク「キャバレーソング集」
  Einfältiges Lied 単純な歌
  Jedem das Seine それぞれにそれぞれのものを
  Arie aus dem Spiegel von Arcadien
   "アルカディアの鏡" からのアリア
*ソプラノ・ピアノ

同「夢遊病者」
Nachtwandler (1901)
*ソプラノ・ピッコロ・トランペット・スネアドラム・ピアノ

(ボウルズ「Tempo di Quickstep」bis)


*出演

渡辺有里香(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)

ゲスト:
山本葵(ピッコロ)
松山萌(トランペット)
須長竜平(パーカッション)


*歌詞大意

「ガラテア」(Frank Wedekind)

ああ どんなに望んでいることか
ガラテア 美しい娘
お前の頬に口づけするのを
あまりに愛らしいから

私に与えられた至上の喜びだ
ガラテア 美しい娘
お前の髪に口づけするのは
あまりに魅力的だから

私が死ぬまで 決してとめないでおくれ
ガラテア 美しい娘
お前の手に口づけするのを
あまりに魅力的だから

ああ どんなに私が焦がれているかお前は知らない
ガラテア 美しい娘
お前の膝に口づけするのを
あまりに魅力的だから

そして私は何でもするだろう
いとしいガラテア 美しい娘
お前の足に口づけするためなら
あまりに魅力的だから

しかしお前のくちびるには
決して口づけしない
ただ夢だけが 魅力に満ちた
お前のくちびるに口づけするのだから

「ギガレッテ」(Otto Julius Bierbaum)

ギガレッテ嬢は
私をお茶に招いてくれた
彼女の装いは
雪のように白かった

まるで
ピエロのように見えて
賭けてもいいが 修道士でさえも
ギガレッテを
満足そうに眺めるだろう

私を迎え入れた部屋は
赤い部屋で
黄色いロウソクの火が
下がっていた

そして彼女はいつものように
生き生きとして聡明だった
私は決して忘れない
ワインレッドの部屋
花のように白い彼女を

それから四頭の馬車で
二人で遠乗りして
陽気という名の場所を
散策した

二人が手綱も
行き先も行き方も見失わぬように
興奮した四頭の引く
馬車のうしろには
キューピットが座っていた

「もの分かりのよい恋人」(Hugo Salus)

私の恋人は黒猫を飼っている
柔らかくしなやかなビロードのような毛をした猫を
そして私はてかてかのハゲ頭で
ぴかぴかつるつると銀のように光っている

私の恋人は肉づきのよい女性で
一年中寝椅子に寝転がり
猫をなでてばかりいる
なんたることか
 ビロードの柔らかい毛がお気に入りなのだ

ある晩恋人を訪ねると
ひざの上に にゃんこが寝ていて
一緒に蜂蜜ケーキをつまんでいる
私がそっと髪に触れると身震いした

でも彼女と愛し合いたくて
彼女も私にあえぎ声を上げさせたいので
ハゲ頭の上に猫を乗せるのだ
すると彼女は猫をなでてにっこりするのだ

「忠告」(Gustav Hochstetter)

お嬢さん 見栄をはっちゃいけない
蝶なんか捕まえずに
ふさわしい男をさがさないと
キスがうまくて
自分の力で
温かい巣を作ってくれるような男を

お嬢さん 愚かじゃいけない
夢心地にさまよわずに
よく目を見開いて!
夫にぴったりの男がやってくるかどうか
もし現れたら長く考え込まずに
パチン! と罠を閉じないと

いとしいお嬢さん 利口じゃなくちゃ
お前の花の盛りを利用するのさ!
そして忘れちゃいけない
無計画にふらふらと人生を過ごしていたら
オールドミスになってしまうことを

忘れちゃいけない…

「単純な歌」(Hugo Salus)

王様が散歩に出かけた
ただの男が散歩に出かけるように
笏も持たず冠もかぶらず
まるで普通の人の子のように

すると突然強い風が吹いた
全く普通の風だったが
誰かも知らずに
王様に襲いかかった

頭からは帽子を引きはがし
屋根のむこうに放り出し
二度と見えなくしてしまった

それ見たことか! 思った通りだ!
言っただろう!
馬鹿なことをしたものだ!

冠もかぶっていない王様が
普通の人の子のように
愚かな人々の間を歩けるはずがないのだ

「それぞれにそれぞれのものを」(Colly)

平らな閲兵場
カスパルは中央で
馬に高くまたがり
周りには王に公爵
向かいには観客
連隊がブンブンブンと
なまけずに行進している

空気は太陽をたっぷり吸い込み
鉄兜に銃剣がぴかぴかと
輝き きらめき 光る
日陰になった桟敷の席で
プラヴォー! ばんざい! ふざけたりおどけたり
オペラグラスに光るまなざし
あちこちでご機嫌取り

私の横には 誰だか
魅力的で きゃしゃ過ぎず
すばらしくシックな女性
冷やかに見つめられても
ひそかに喜んでしまい
腰は親しげに
音楽に合わせて揺れる

カスパル 君は自分にふさわしいものを手に取れ
軍隊を正しく導いて
自分自身と我々を防護するのだ
でも 愛する人よ
さあここから急いで出よう
壁の向こうに小さな広場があるから
誰からも離れたところに

そこで僕ら二人 寝そべるのだ
僕とお隣さん
遠くから大騒ぎが聞こえてくる
兵士でいるのはなんと楽しいのだろう
兵士でないのはなんと楽しいのだろう
もし静かに二人っきりなら
僕らが…などなど

「"アルカディアの鏡" からのアリア」(Emanuel Schikaneder)

多くの女性と接してから
私の胸はとてもあたたかく脈打つ
あちらこちらで ぶんぶんと
まるでみつばちの群れのように
彼女の情熱が私と同じくらいで
彼女の眼が美しく澄んでいると
私のちいさな心臓はずっと
ハンマーのように鼓動する
ぶん ぶん ぶん…

できればたくさんの女性が欲しい
もし神様が許してくれるなら
モルモットのように
やみくもに踊るだろう
これがこの世の人生なら
楽しく過ごしたいのだ
ウサギのように野を駆けまわり
胸はいつも脈打っているだろう
ぶん ぶん ぶん…

女性を大切にするすべを知らない人は
冷たくも温かくもなく
氷のかたまりのように
ひとりの娘の腕の中で横たわっている
でも もう私はそういう男ではないので
彼女のまわりを飛びまわる
私の胸は彼女の胸を陽気にトントンたたき
ぶんぶんと鳴らす
ぶん ぶん ぶん…

「夢遊病者」(Gustav Falke)

太鼓たたきよ 太鼓をたたけ
ラッパ吹きよ 吹きならせ
彼らがベットから飛び起きて
助けて! ミハエル 助けて! と叫ぶように
プップカ タンタカ…
三角帽で ぐるぐるまわれ

こんなふうにおいらは
月明かりの通りをすすむ
愉快に二人の娘にはさまれて
洗濯女とアイロン女
左にルイスヒェン 右にはマリー
それに 前には音楽隊

でも その家のそばでは
君らに話した家のことだが
お願いだから休んでおくれ
お墓のように黙るんだ
シーッ 静かに…
そおっと その家をひとまわり

おいらの短気なヘンリエッテは
この小さな家に住んでいる
騒いで彼女をベットから追い出したりしたら
おいらたちの目玉をえぐり出すだろう
シーッ 静かに…
そおっと その家をひとまわり

またまた楽しい 音楽隊!
危険はもはや過ぎ去った
太鼓をたたけ おばちゃんたちがみな
また窓のそばに来るように
プップカ タンタカ…
三角帽で ぐるぐるまわれ

そう こうやっておいらは
月明かりの通りをすすむ
愉快に二人の娘にはさまれて
洗濯女とアイロン女
左にルイスヒェン 右にはマリー
それに 前には音楽隊