歌留多カフェ~小倉百人一首による歌曲集(カフコンス第65回) ― 2009-09-27
*曲目
信時潔 (1887-1965)
「小倉百人一首より」(1920-22/28)
1.月見れば
2.久方の
3.花の色は
4.淡路島
5.長からむ
6.逢ふことの
7.人はいさ
8.ほととぎす
タンスマン Alexandre Tansman (1897-1986)
「8つの日本の歌」8 Mélodies Japonaises (1918)
1.TEJAKAKJA
2.DAME ISÉ
3.SAMMA SAMMI
4.OCZIKOCZY-NO-MICUNE
5.SARUWARU-TAJU
6.FUDZIWARA-NO-TESZIUKI-ASON
7.BUNJA-NO-ASAJASU
8.BONJA RJOSEN
同「日光の哀しみ」Complainte de Nikko *ピアノソロ
〜ミニアチュア世界旅行 Le tour du monde en miniature (1933) より
山田耕筰 (1886-1965):
「幽韻(小倉百人一首より)」(1919)
1.花のいろは
2.忘らるる
3.あらざらむ
4.玉の緒よ
5.わが袖は
(信時潔「いにしえの」)
*出演
宮部小牧(ソプラノ)
藪内俊弥(バリトン)
川北祥子(ピアノ)
*プログラムコメント
本日は小倉百人一首に作曲された同時代の三つの歌曲集を並べ、女性の句を女声、男性の句を男声で演奏する。信時潔と山田耕筰は日本歌曲を代表する同世代の作曲家だが、作風だけでなく選んだ句も対照的だ。山田は女性歌人の句を集め、信時はバラエティ豊かな句を配置している。ポーランドの作曲家タンスマンは、ポーランド語に訳された百人一首から秋の句と恋の句を選んだ(本日はフランス語版で演奏)。この作品では日本の音楽の要素を取り入れてはいないが、後に日本を訪れ、宮城道雄の箏の演奏にもふれて書いた「日光の哀しみ」には、その印象が見事に表れている。
*歌詞
*信時潔『小倉百人一首より』
1.月見れば(大江千里)
月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ
我が身一つの 秋にはあらねど
2.久方の(紀友則)
ひさかたの 光のどけき 春の日に
静心なく 花の散るらむ
3.花の色は(小野小町)
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
4.淡路島(源兼昌)
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に
いく夜目覚めぬ 須磨の関守
5.長からむ(待賢門院堀河)
長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は ものをこそ思へ
6.逢ふことの(中納言朝忠)
逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
7.人はいさ(紀貫之)
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
8.ほととぎす(後徳大寺左大臣)
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただ有明の 月ぞ残れる
*タンスマン『日本の詩による8つの歌』
(詩は1, 2, 3, 1, 4, 5, 1, 2行の順に繰り返される。)
1.TEJAKAKJA(藤原定家)
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
(仏語詩大意)
魂は焦がれる
マツホへ下る波のように
私はずっとあなたを待つ
あなたのために燃え上がるものの所へ
来て願いをかなえておくれ
2.DAME ISE(伊勢)
難波潟 みじかき葦の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
いつまでも私は孤独だろう
二度とあなたに逢うことはなく
昼も夜も涙にくれる
ああ 石のように冷たい世間に
私のさすらう人生は向きあう
3.SAMMA SAMMI(大弐三位)
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
シュウ シュウ と優しく風は吹く
アリマからイノへ
そして短い草に触れ
愛するあなたの名をささやく
優しいざわめきが私の中に満ちる
4.OCZIKOCZY-NO-MICUNE(凡河内躬恒)
心あてに 折らばや折らむ 初霜の
置きまどはせる 白菊の花
ごらん 菊の花が開いて
銀色の霧氷に被われ
草原は白く染まっている
私はそれを両手いっぱいに
優しく すくい上げる
5.SARUWARU-TAJU(猿丸大夫)
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき
穏やかに 霧が峰にたちこめ
私は遠くに牡鹿の声を聞く
太陽が雲に覆われる
ああ なんと悲しく憂鬱な
秋の日の山の風景
6.UDZIWARA-NO-TESZIUKI-ASON(藤原敏行朝臣)
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通い路 人めよくらむ
スミノエに波が砕ける
その音は私には届かない
昼も夜も 私はあなたを思う
おお 愛する人 世間の目から遠く
私は逃げる ひそかな思いを隠して
7.BUNJA-NO-ASAJASU(文屋朝康)
白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
秋の風が山に吹き
草原に散らされた
真珠の糸が輝く
雲はゆっくりと通りすぎ
空は重く暗い
8.BONJA RJOSEN(良暹法師)
さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづこも同じ 秋の夕暮
心に憂いを満たし
私は野へ出た
秋の訪れが告げられる
それは亡霊のように入り込み
悼ましい苦悩をもたらす
*山田耕筰『幽韻(小倉百人一首より)』
1.花のいろは(小野小町)
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
2.忘らるる(右近)
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
3.あらざらむ(和泉式部)
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
いまひとたびの 逢ふよしもがな
4.玉の緒よ(式子内親王)
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの よはりもぞする
5.わが袖は(二条院讃岐)
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね かわくまもなし
信時潔 (1887-1965)
「小倉百人一首より」(1920-22/28)
1.月見れば
2.久方の
3.花の色は
4.淡路島
5.長からむ
6.逢ふことの
7.人はいさ
8.ほととぎす
タンスマン Alexandre Tansman (1897-1986)
「8つの日本の歌」8 Mélodies Japonaises (1918)
1.TEJAKAKJA
2.DAME ISÉ
3.SAMMA SAMMI
4.OCZIKOCZY-NO-MICUNE
5.SARUWARU-TAJU
6.FUDZIWARA-NO-TESZIUKI-ASON
7.BUNJA-NO-ASAJASU
8.BONJA RJOSEN
同「日光の哀しみ」Complainte de Nikko *ピアノソロ
〜ミニアチュア世界旅行 Le tour du monde en miniature (1933) より
山田耕筰 (1886-1965):
「幽韻(小倉百人一首より)」(1919)
1.花のいろは
2.忘らるる
3.あらざらむ
4.玉の緒よ
5.わが袖は
(信時潔「いにしえの」)
*出演
宮部小牧(ソプラノ)
藪内俊弥(バリトン)
川北祥子(ピアノ)
*プログラムコメント
本日は小倉百人一首に作曲された同時代の三つの歌曲集を並べ、女性の句を女声、男性の句を男声で演奏する。信時潔と山田耕筰は日本歌曲を代表する同世代の作曲家だが、作風だけでなく選んだ句も対照的だ。山田は女性歌人の句を集め、信時はバラエティ豊かな句を配置している。ポーランドの作曲家タンスマンは、ポーランド語に訳された百人一首から秋の句と恋の句を選んだ(本日はフランス語版で演奏)。この作品では日本の音楽の要素を取り入れてはいないが、後に日本を訪れ、宮城道雄の箏の演奏にもふれて書いた「日光の哀しみ」には、その印象が見事に表れている。
*歌詞
*信時潔『小倉百人一首より』
1.月見れば(大江千里)
月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ
我が身一つの 秋にはあらねど
2.久方の(紀友則)
ひさかたの 光のどけき 春の日に
静心なく 花の散るらむ
3.花の色は(小野小町)
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
4.淡路島(源兼昌)
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に
いく夜目覚めぬ 須磨の関守
5.長からむ(待賢門院堀河)
長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は ものをこそ思へ
6.逢ふことの(中納言朝忠)
逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
7.人はいさ(紀貫之)
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
8.ほととぎす(後徳大寺左大臣)
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただ有明の 月ぞ残れる
*タンスマン『日本の詩による8つの歌』
(詩は1, 2, 3, 1, 4, 5, 1, 2行の順に繰り返される。)
1.TEJAKAKJA(藤原定家)
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
(仏語詩大意)
魂は焦がれる
マツホへ下る波のように
私はずっとあなたを待つ
あなたのために燃え上がるものの所へ
来て願いをかなえておくれ
2.DAME ISE(伊勢)
難波潟 みじかき葦の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
いつまでも私は孤独だろう
二度とあなたに逢うことはなく
昼も夜も涙にくれる
ああ 石のように冷たい世間に
私のさすらう人生は向きあう
3.SAMMA SAMMI(大弐三位)
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
シュウ シュウ と優しく風は吹く
アリマからイノへ
そして短い草に触れ
愛するあなたの名をささやく
優しいざわめきが私の中に満ちる
4.OCZIKOCZY-NO-MICUNE(凡河内躬恒)
心あてに 折らばや折らむ 初霜の
置きまどはせる 白菊の花
ごらん 菊の花が開いて
銀色の霧氷に被われ
草原は白く染まっている
私はそれを両手いっぱいに
優しく すくい上げる
5.SARUWARU-TAJU(猿丸大夫)
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき
穏やかに 霧が峰にたちこめ
私は遠くに牡鹿の声を聞く
太陽が雲に覆われる
ああ なんと悲しく憂鬱な
秋の日の山の風景
6.UDZIWARA-NO-TESZIUKI-ASON(藤原敏行朝臣)
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通い路 人めよくらむ
スミノエに波が砕ける
その音は私には届かない
昼も夜も 私はあなたを思う
おお 愛する人 世間の目から遠く
私は逃げる ひそかな思いを隠して
7.BUNJA-NO-ASAJASU(文屋朝康)
白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
秋の風が山に吹き
草原に散らされた
真珠の糸が輝く
雲はゆっくりと通りすぎ
空は重く暗い
8.BONJA RJOSEN(良暹法師)
さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづこも同じ 秋の夕暮
心に憂いを満たし
私は野へ出た
秋の訪れが告げられる
それは亡霊のように入り込み
悼ましい苦悩をもたらす
*山田耕筰『幽韻(小倉百人一首より)』
1.花のいろは(小野小町)
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
2.忘らるる(右近)
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
3.あらざらむ(和泉式部)
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
いまひとたびの 逢ふよしもがな
4.玉の緒よ(式子内親王)
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの よはりもぞする
5.わが袖は(二条院讃岐)
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね かわくまもなし
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