代用コーヒーの生みの主はナポレオン? / カフノーツ#082004-03-07

カフノーツはコーヒーにまつわる短いお話をあれこれご紹介します。 コーヒーでも飲みながらのんびりお読みください。


 ヨーロッパでも日本でも、戦争や政情不安定な時代には、コーヒー豆の輸入さえままならず、それでもコーヒーを飲みたい人々のために代用コーヒーが開発されました。

 チコリ、麦芽、大麦、ライ麦、サトウキビ、干しいちじく、南京豆、大豆、どんぐり。並べていくと、まるで自然食のメニューのようですが、これらが代用コーヒーの主な素材でした。日本ではこれに加えて、甘藷やゆり根という素材も試みられたようです。代用コーヒーの開発が最も盛んだったフリードリッヒ大王時代のドイツでは海草まで試みたという話もあります。海草コーヒーがいったいどんな味だったのかは興味のあるところですが、代用コーヒーの中でいまにいたるまで残っているのはたんぽぽのコーヒーとチコリのコーヒーくらいのものでしょうか。これらはノンカフェインのやさしい味わいのコーヒーとして、現代では人気のようです。でもやはりコーヒー好きの人たちには、あの濃厚な味わいがなければコーヒーとはいいがたいですね。

 もともと代用コーヒーを生み出すきっかけとなったのは、ナポレオンによる大陸封鎖。コーヒー豆を手に入れることのできなくなったドイツでは、コーヒー飢餓にあえぎます。しかし、必要は発明の母。少なくてもたくさん飲めるコーヒーのお湯割りを考案したドイツ人は、カップ底の小花が見えるマイセンのコーヒーカップを生み出したり、代用コーヒーをつくりだしたり、さまざまな工夫が行われました。そして、結局は自国フランスでさえコーヒーが飲めなくなったため、フランス民衆は激怒。ナポレオンは国民の信頼を失います。自らもコーヒー好きで、軍隊の飲物としてコーヒーを導入した彼なのに皮肉な話です。最後に追いやられたセント-ヘレナ島で、ナポレオンはコーヒーを満足に飲むことはできたのでしょうか?(カフコンス第8回「花と昆虫に寄せて」プログラム掲載。)

【参考文献】臼井隆一郎『コーヒーが廻り世界史が廻る』(中公文庫)平野雅章他編『食の名言辞典』(東京書籍)日本コーヒー文化学会編『コーヒーの事典』(柴田書店)

西川公子 Hiroko Nishikawa
ウェブやフリペの企画・編集・ライティング。プレイステーションゲーム『L.S.D.』の原案、『東京惑星プラネトキオ』『リズムンフェイス』のシナリオなど。著作に10年分の夢日記をまとめた『Lovely SweetDream』。最近は老人映画研究家。

花と昆虫に寄せて(カフコンス第8回)2004-03-07

*曲目

マルティヌー「花々の中の蝶」
Bohuslav Martinu (1890-1959)
Butterflies in flowers (1920)
(ピアノソロ)

ブリテン「2つの昆虫の小品」
Benjamin Britten (1913-76)
Two insect pieces (1935)
  The Grasshopper バッタ
  The Wasp 蜂
(オーボエ&ピアノ)

マスネ「2つの小品」
Jules Massenet (1842-1912)
Deux pièces (1907)
  Papillons noirs 黒い蝶
  Papillons blancs 白い蝶
(ピアノソロ)

フランセ「花時計」
Jean Françaix (1912-97)
L'horloge de flore (1961)
  3h Galant de jour セストルム
  5h Cupidone bleue コヤグルマギク
  10h Cierge à grandes fleurs ゲッカビジン
  12h Nyctanthe du Malabar マラバールジャスミン
  17h Belle de nuit オシロイバナ
  19h Géranium triste ゼラニウムトリステ
  21h Silène noctiflore ツキミセンノウ
(オーボエソロ&クラリネット&ピアノ)

(ドリーブ「ラクメ より 花の二重唱」)


*出演

福井貴子(オーボエ)
中秀仁(クラリネット)
川北祥子(ピアノ)


*プログラムコメント

 「虫の声を音楽と感じるのは日本人だけだ」という説があるが、そのためもあってか昆虫を題材にした西洋音楽作品は、歌詞ならともかく特に器楽では稀少な気がする(有名な「熊蜂の飛行」もオペラの1シーンだし、比較的多く登場する「蝶」は仮面舞踏会のマスクを指す場合もある)。ブリテン(英)の「2つの昆虫の小品」はバッタと蜂(原題waspはスズメバチ類)そのものを描いた異色作。「花々の中の蝶」はマルティヌー(チェコ)が友人画家の蝶コレクションに感銘を受け書いた小品。「黒い蝶/白い蝶」はマスネ(仏)お得意の対照的な2曲セット。
 「花時計」とは、18世紀の博物学者リンネが考案した、開花時刻の違う花を寄せ植えにしてその様子から時間を知るという時計(時計の文字盤に花をあしらったものではない)。フランセ(仏)はリンネの花時計から3時〜21時の7つの花を選び、オーボエ独奏とオーケストラの為の作品に仕立てた。本日はオ−ケストラの部分をクラリネットとピアノで演奏する。


*カフノーツ

#08 代用コーヒーの生みの主はナポレオン?