会議は踊り、ウィーン菓子も踊る / カフノーツ#072004-01-11

カフノーツはコーヒーにまつわる短いお話をあれこれご紹介します。 コーヒーでも飲みながらのんびりお読みください。


 ウィーンは、コーヒーだけでなく甘いお菓子でも有名な街です。代表的なウィーン菓子が数多く生み出されたのは、「会議は踊る。されど会議は進まず」と評されたウィーン会議以降のことだそう。イギリス・プロイセン・オーストリア・ロシアの国々が、敗戦国フランスの処分について裏取引外交を画策したウィーン会議の様子は、映画「会議は踊る」にも楽しく描かれています。一日の3/4は舞踏会と宴会だったといわれたこの会議は、実際約9ヶ月の長きにわたって続けられ、各国代表はその宴席の最後に供された数多くのウィーン菓子を堪能しました。それもそのはず、当時のハプスブルグ宮廷にはお抱えの料理部門とは別に、宮廷菓子部門という専門職まであったのですから。芸術品とでもいえるようなマジパンでできた装飾菓子、何種類ものトルテやシュニッテ、シャーベット、ワッフル、メレンゲ、スフレ。宮廷菓子職人たちは、魔法のように次々と菓子を考案していき、ウィーン菓子の多くの技法をこの頃には確立させました。このウィーン菓子の誘惑に翻弄されたためかどうかは別として、結局ウィーン会議はオ-ストリア優位の好結果に終わりました。

 いまではもうあたりまえすぎるほど有名なお菓子ザッハ・トルテも、この時代に考案されたものです。時の宰相メッテルニヒが、賓客のために特別な菓子を用意せよと命じて、16才の料理人フランツ・ザッハーによって作られたのがこのお菓子。ジャムをサンドイッチしたチョコレート入りのスポンジをチョコレートで包んで、ホイップクリームと一緒にいただきます。この日はじめてザッハー・トルテをいただいた記念すべき賓客も、きっと大満足だったにちがいありません。こう考えると政治とウィーン菓子は、とても親密な関係にあるのかもしれませんね。

 甘いお菓子は、人を幸福にさせるもの。政治家だけでなく、誰でも、きっと気に入ってしまうはずです。コーヒーの大親友でもあるお菓子。今日は一緒にいただいてみませんか?(カフコンス第7回「木管五重奏によるウィンナワルツとポルカ」プログラム掲載。)

【参考文献】ニナ・バルビエ・エマニュエル・ペレ『名前が語るお菓子の歴史』(白水社)関田淳子『ハプスブルグ家の食卓』(集英社)

西川公子 Hiroko Nishikawa
ウェブやフリペの企画・編集・ライティング。プレイステーションゲーム『L.S.D.』の原案、『東京惑星プラネトキオ』『リズムンフェイス』のシナリオなど。著作に10年分の夢日記をまとめた『Lovely SweetDream』。最近は老人映画研究家。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログのタイトルにもなっているカフェコンサートの名前は?(カタカナ5文字でお答えください。)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://cafconc.asablo.jp/blog/2004/01/11/5682709/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。