『ルチア』&『フィフスエレメント』その4 ― 2000-12-16
映画に登場するオペラ作品の数々をとりあげて、わかりやすく楽しく紹介するコラムです。
この映画もう一回見直してみよう、オペラっておもしろいんだね、って
少しでも思っていただけると嬉しいです。
映画を見たらオペラも見ようよ
第6回 宇宙人オペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』
~2214年、地球のオペラ界は宇宙人に征服される!?
まだまだ続く対談その4
オペラ:『フィフス』はともかく例えば『ディーバ』、あれはポップス歌手じゃダメでしょ。逆に『ボディガード』がオペラ歌手じゃダメなようにね。「どうしてオペラ歌手なのか?」っていうのを考えると「オペラとは?」っていうのも見えてきそうに思えるんだけど。
SF魂:オペラ歌手って、オイラには「歌手」で「役者」で「芸術家」で「スター」で「浮世離れ」で「普通の人から見るとちょっとヘンかも」で「天才」な勝手なイメージがある。普通の役者は、人間を演じるけど、オペラ歌手はより、イデアを演じている気がする。(映画『ソフィーの世界』を観て、久々に泣けたので最近多用してます、「イデア」。小説よりスパッとドラマチックで良かった、映画のラスト。)かつてヘップバーンとか、アステアとかが演じていた、理想としての「映画」という物に近いのかも知れない。すごい努力しているのに、その素振りを見せずに軽やかに振る舞うオペラ歌手ってのは、アステアに通じる物があるね(ジェームズ・ボンド氏にも通じる)。
オペラ:イデアというか、歌舞伎みたいに「型」を演じるところはあると思うし、「映画」のような偶像に近いっていうのもあるかもしれない。って言うとますます近寄り難くなっちゃうかな?でも例えば映画は「銀幕」なんて呼んだりする魔法の世界だけどみんな日常的に楽しみに行くでしょ?あんな感じでオペラにも気軽に出かけてほしい(高いけど)。ゴシマさんみたいに実相寺カントク演出だからって『魔笛』を見に行ってみたりね。
SF魂:そうそう、実相寺昭雄さんって、オペラ曲をすごく効果的に使ってると思うんだけどさっちゃんどう?『ウルトラマンティガ』でも、すごかったなあ。(反芻)
オペラ:失恋した男の人が夢で怪獣になってあばれる『夢(ティガ第40話)』で、あのオペラ好きの男性が聴いてた(枕元に楽譜もあった)のが、まさしく『夢遊病の女』。夢遊病リンクでちょっと洒落てたよね。それと『蝶々夫人』の「花の2重唱」(蝶々さんが花びらをまきながら歌う)が使われた『花(第37話)』は日本的幻想的で好きだったなあ。敢えて(予算の関係か?)ピアノ伴奏の録音にしたのも、いかにもCDって感じじゃなく、ちょっとひなびた独特の雰囲気が出ててよかったんじゃないかなあ。ただ『花』は『蝶々夫人』だけにしてほしかったな。(『夢遊病の女』も流れる。使いまわし?)
SF魂:(註)実相寺監督が「ウルトラマンティガ」でオリジナル録音を使ったのは、著作権がめんどくさい&予算の関係らしいです。
オペラ:とにかく、あんまりタイプじゃない男の人でもメトの『トスカ』なんかに誘ってくれたらオペラ見るいい機会だからつきあってあげましょうね。怪獣になっちゃうと困るしね。いろいろとりとめのない話になっちゃったけど、最後にまとめるとすると『フィフス』って?
SF魂:そう、まえ話したけど、『フィフス』って「子供の頃に夢見た映画」だよね。でも、テクニックだけ大人になって、世の中をナメた高校生みたいな不愉快な感じが、ベッソンの作品を見ていると年を追うごとに強くなってくる(エラそうだね)。スピルバーグの『レイダース』とか、ティム・バートンとか「少年の心を失わない大人」はステキなのにね。これが高校の文化祭の映画だったらすごかったのにね。
オペラ:ベッソン自身16歳の時に『フィフス』を構想したって言ってるからまさに高校の文化祭映画なのかも。その時作ってればほんと凄い。最新作『ダンサー』もヤバそうだけど、怖いもの見たさもあるなあ。(私も超エラそう。)ところでこのコラムの次回はさっきも話に出た『ディーバ』なんだけど、これは五島さん絶賛でしょ?
SF魂:『ディーバ』は、高校の時に、地方局の深夜映画で、偶然に観てすげーショックを受けました。「お金持ちじゃないのにかっこよくて、しかも汚くない」という、ジェームズ・ボンドでもショーケンでもない、普通だけどカッコイイ主人公(感情移入度高)、スゴイステキなオペラさん、チャイナさん(サイゴンさんかも)、ナグラ(テープレコーダー)、エレベーター、サンドウィッチ、モビレット。うーん、10年くらいあの映画観てないんだけど、今観たらどう感じるのかなあ。なんか少年の日の記憶にふれる感じでドッキドキだなあ。その次の日はタビアーニ兄弟の「カオス・シチリア物語」だった。思い出しただけで鳥肌で大根がおろせそうになる。至福の二日間だった…
(ゴシマ氏さらに熱弁中ですが)ゴシマさん、お忙しい中ありがとうございました。「SF魂」も楽しみにしてます。私のベスト1『サイレントランニング』も早く取り上げて下さいね。というわけで次回はずばり『ディーバ』です。
SF魂:全然関係ないけど、『ディーバ』って、あのおじさん(ゴロティッシュ)の活躍する一連のシリーズ小説のなかの一編らしい。知ってた?知ってた?
オペラ:そうなの?原作があるとは聞いてたけど、サンドイッチのオジサンが主人公とは…
(話は果てしなく続く…)
◇『フィフス・エレメント』THE FIFTH ELEMENT(1997仏/米)
監督:リュック・ベッソン
音楽:エリック・セラ
出演:ブルース・ウィリス/ゲイリー・オールドマン
◆『ランメルモールのルチア』LUCIA DI LAMMERMOOR(1835初演)全3幕
作曲:ドニゼッティ G.Donizetti(1797-1848)
原作:スコットの小説「ランマムーアの花嫁」
台本:カンマラーノ
川北祥子(stravinsky ensemble)
東京芸術大学大学院修了、「トムとジェリー」とB級映画とパンダを愛するピアノ奏者。
「トムとジェリー」からはクラシック音楽の神髄を、
B級映画からはお金がなくても面白いコトに挑戦する心意気を学ぶ。
パンダからは…?
この映画もう一回見直してみよう、オペラっておもしろいんだね、って
少しでも思っていただけると嬉しいです。
映画を見たらオペラも見ようよ
第6回 宇宙人オペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』
~2214年、地球のオペラ界は宇宙人に征服される!?
まだまだ続く対談その4
オペラ:『フィフス』はともかく例えば『ディーバ』、あれはポップス歌手じゃダメでしょ。逆に『ボディガード』がオペラ歌手じゃダメなようにね。「どうしてオペラ歌手なのか?」っていうのを考えると「オペラとは?」っていうのも見えてきそうに思えるんだけど。
SF魂:オペラ歌手って、オイラには「歌手」で「役者」で「芸術家」で「スター」で「浮世離れ」で「普通の人から見るとちょっとヘンかも」で「天才」な勝手なイメージがある。普通の役者は、人間を演じるけど、オペラ歌手はより、イデアを演じている気がする。(映画『ソフィーの世界』を観て、久々に泣けたので最近多用してます、「イデア」。小説よりスパッとドラマチックで良かった、映画のラスト。)かつてヘップバーンとか、アステアとかが演じていた、理想としての「映画」という物に近いのかも知れない。すごい努力しているのに、その素振りを見せずに軽やかに振る舞うオペラ歌手ってのは、アステアに通じる物があるね(ジェームズ・ボンド氏にも通じる)。
オペラ:イデアというか、歌舞伎みたいに「型」を演じるところはあると思うし、「映画」のような偶像に近いっていうのもあるかもしれない。って言うとますます近寄り難くなっちゃうかな?でも例えば映画は「銀幕」なんて呼んだりする魔法の世界だけどみんな日常的に楽しみに行くでしょ?あんな感じでオペラにも気軽に出かけてほしい(高いけど)。ゴシマさんみたいに実相寺カントク演出だからって『魔笛』を見に行ってみたりね。
SF魂:そうそう、実相寺昭雄さんって、オペラ曲をすごく効果的に使ってると思うんだけどさっちゃんどう?『ウルトラマンティガ』でも、すごかったなあ。(反芻)
オペラ:失恋した男の人が夢で怪獣になってあばれる『夢(ティガ第40話)』で、あのオペラ好きの男性が聴いてた(枕元に楽譜もあった)のが、まさしく『夢遊病の女』。夢遊病リンクでちょっと洒落てたよね。それと『蝶々夫人』の「花の2重唱」(蝶々さんが花びらをまきながら歌う)が使われた『花(第37話)』は日本的幻想的で好きだったなあ。敢えて(予算の関係か?)ピアノ伴奏の録音にしたのも、いかにもCDって感じじゃなく、ちょっとひなびた独特の雰囲気が出ててよかったんじゃないかなあ。ただ『花』は『蝶々夫人』だけにしてほしかったな。(『夢遊病の女』も流れる。使いまわし?)
SF魂:(註)実相寺監督が「ウルトラマンティガ」でオリジナル録音を使ったのは、著作権がめんどくさい&予算の関係らしいです。
オペラ:とにかく、あんまりタイプじゃない男の人でもメトの『トスカ』なんかに誘ってくれたらオペラ見るいい機会だからつきあってあげましょうね。怪獣になっちゃうと困るしね。いろいろとりとめのない話になっちゃったけど、最後にまとめるとすると『フィフス』って?
SF魂:そう、まえ話したけど、『フィフス』って「子供の頃に夢見た映画」だよね。でも、テクニックだけ大人になって、世の中をナメた高校生みたいな不愉快な感じが、ベッソンの作品を見ていると年を追うごとに強くなってくる(エラそうだね)。スピルバーグの『レイダース』とか、ティム・バートンとか「少年の心を失わない大人」はステキなのにね。これが高校の文化祭の映画だったらすごかったのにね。
オペラ:ベッソン自身16歳の時に『フィフス』を構想したって言ってるからまさに高校の文化祭映画なのかも。その時作ってればほんと凄い。最新作『ダンサー』もヤバそうだけど、怖いもの見たさもあるなあ。(私も超エラそう。)ところでこのコラムの次回はさっきも話に出た『ディーバ』なんだけど、これは五島さん絶賛でしょ?
SF魂:『ディーバ』は、高校の時に、地方局の深夜映画で、偶然に観てすげーショックを受けました。「お金持ちじゃないのにかっこよくて、しかも汚くない」という、ジェームズ・ボンドでもショーケンでもない、普通だけどカッコイイ主人公(感情移入度高)、スゴイステキなオペラさん、チャイナさん(サイゴンさんかも)、ナグラ(テープレコーダー)、エレベーター、サンドウィッチ、モビレット。うーん、10年くらいあの映画観てないんだけど、今観たらどう感じるのかなあ。なんか少年の日の記憶にふれる感じでドッキドキだなあ。その次の日はタビアーニ兄弟の「カオス・シチリア物語」だった。思い出しただけで鳥肌で大根がおろせそうになる。至福の二日間だった…
(ゴシマ氏さらに熱弁中ですが)ゴシマさん、お忙しい中ありがとうございました。「SF魂」も楽しみにしてます。私のベスト1『サイレントランニング』も早く取り上げて下さいね。というわけで次回はずばり『ディーバ』です。
SF魂:全然関係ないけど、『ディーバ』って、あのおじさん(ゴロティッシュ)の活躍する一連のシリーズ小説のなかの一編らしい。知ってた?知ってた?
オペラ:そうなの?原作があるとは聞いてたけど、サンドイッチのオジサンが主人公とは…
(話は果てしなく続く…)
◇『フィフス・エレメント』THE FIFTH ELEMENT(1997仏/米)
監督:リュック・ベッソン
音楽:エリック・セラ
出演:ブルース・ウィリス/ゲイリー・オールドマン
◆『ランメルモールのルチア』LUCIA DI LAMMERMOOR(1835初演)全3幕
作曲:ドニゼッティ G.Donizetti(1797-1848)
原作:スコットの小説「ランマムーアの花嫁」
台本:カンマラーノ

東京芸術大学大学院修了、「トムとジェリー」とB級映画とパンダを愛するピアノ奏者。
「トムとジェリー」からはクラシック音楽の神髄を、
B級映画からはお金がなくても面白いコトに挑戦する心意気を学ぶ。
パンダからは…?
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