『ルチア』&『フィフスエレメント』その1 ― 2000-11-14
映画に登場するオペラ作品の数々をとりあげて、
わかりやすく楽しく紹介するコラムです。
この映画もう一回見直してみよう、オペラっておもしろいんだね、って
少しでも思っていただけると嬉しいです。
映画を見たらオペラも見ようよ
第6回 宇宙人オペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』
~2214年、地球のオペラ界は宇宙人に征服される!?
スペシャル対談その1
今回は宇宙人のオペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』ということで、SFを語らせるならこの人、「SF魂100まで」(※mao2netに連載されていたSF映画コラム)のゴシマカズヒロ氏とおしゃべりしてみようと思います。普段のように脱線しまくりの会話になると思うけど許してね。
映画を見たらオペラも見ようよ(川北祥子):ゴシマさんはクラシック愛好家っていうわけじゃなさそうなのにやたらといろんな曲に詳しいけど、映画に出てくるクラシックやオペラってどう?
SF魂100まで(ゴシマカズヒロ):映画の中でクラシックが流れて、オレとかそれがなんて曲かなんてわかんないんだけど、すごい印象的なシーンってあるじゃん。別に、感動的に盛り上がるところじゃなくて、ああ、これが映画の醍醐味、って感じ。曲名が出てくるのは、『グッドモーニング・バビロン』の『泥棒カササギ』、『帝都物語』の『こうもり』。
オペラ:私はわかっちゃう事のほうが多いからつい曲とリンクさせようと思いながら見ちゃうんだけど、そういうの関係なくて凄いって思ったのは『ショーシャンクの空に』の『フィガロの結婚』。あとオペラじゃないけど『タンポポ』の『レ・プレリュード』は絶品だと思う。
SF魂:『タンポポ』はすごいねえ。
オペラ:ラーメンが完成するところはゾクゾクしたよねえ。クラシックはつまんないっていう人たくさんいるけど、そういう人達もけっこう知らないうちにクラシック(やオーケストラ)に感動したり、かっこいいなって思ってること多いと思うんだ。 特に映画では。
SF魂:『がんばれベアーズ』の『カルメン』もピッタリフィット。映画と一体化して、テーマ曲として確立してるのって気持ちいいよね。でも、あとから『カルメン』を単独で聞いても、『がんばれベアーズ』を思い出しちゃうのが嬉しいやら悲しいやら。
オペラ:『地獄の黙示録』の『ワルキューレ』なんかも、もう聴くだけでヘリ飛んじゃうしね。ショパンの『別れの曲』みたいに、使われた映画の題名が通称になっちゃった曲もあるし。そういうのは別格として、どうでもいい意外なところでクラシックが流れるのも嬉しい。例えばトム・ハンクスの『マネー・ピット』で、家の工事やってる大工さんがラジオか何かで『ルチア』の婚礼の6重唱を聴いてたりしてね、うわ~こんな映画に『ルチア』だあってウケて、それだけのシーンでも後で思えば大工さんがイタリア人だから全然進まないってことかなって考えたりして結局わからないんだけど。
SF魂:『グッドモーニング・バビロン』のイタリア人は働き者だったぞ(笑)
オペラ:そうでしたか。イタリアのみなさんごめんなさい。イタリアといえば『流されて』は「さすがオペラの国」って実感した。『椿姫』の一部が流れるんだけど、ビックリしたとこで「ジャジャジャジャ~ン」って『運命』が鳴り響くような古典的ギャグっていう感じの使い方。これが全国民に通じちゃうんだろうなあ。ギャグ系ではテレビの『アリー・マクビール』のベッドシーンで『カヴァレリア・ルスティカーナ』が流れてしかもスローモーションだったのがすごく浮いて笑えたな。「これは非日常のまるで映画みたいにステキなことなのよ」って無理矢理思い込もうとしてる感じがよかった。逆に『アメリカンジゴロ』の最後のモーツァルトは真実の愛って言いたかったんだろうけどギャグみたいでグッタリ。
SF魂:アメリカ映画のラブシーンで、いちゃいちゃしだすとソフトフォーカスになって、変な歌がBGMになって、盛り上がってくるとスローになって、肝心のとこはストップモーション。暗転して、次のカットはもう朝だ。アメリカ人は後始末もしないで寝てしまう。大陸に暮らす人はおおらかだ。(余談)
オペラ:(暖炉も必須。余談。)いや、でも何たって格段に凄いのは『トム&ジェリー』でしょう。すべての感情や動きに音がぴったりで、もう音楽の神髄ここにありって感じ。音楽を学ぶならまず『トム&ジェリー』。他にはなんにもいらないと思う。
SF魂:さっちゃんから聞いてなるほどと思ったんだけど、『トムとジェリー』の効果音がオーケストラの楽器だってのにはビックリしたなあ。
オペラ:それに、昔のことだからナマでぶっ通しで録音したのかなあ、なんて考えるとロマンを感じるよね。
SF魂:今、どれだけの映画で行われてるか知らないけど、サウンドトラックの録音で、指揮者がスクリーンを見ながら指揮してっていうのあるじゃん、あれ格好いいよね。演奏者はみんなスクリーンに背中向けてるの。トムとジェリーの細かい動きに合わせて、指揮者が各楽器にちょこまか指揮してる様子を想像すると楽しいなあ。指揮者の動き自体がトムとジェリーみたい。(実際のトムとジェリーの効果音の録音は、楽器奏者一人一人が画面を見ながらやってたと思います。)
…やはり脱線。 というわけで『フィフスエレメント』については次回!
◇『フィフス・エレメント』THE FIFTH ELEMENT(1997仏/米)
監督:リュック・ベッソン
音楽:エリック・セラ
出演:ブルース・ウィリス/ゲイリー・オールドマン
◆『ランメルモールのルチア』LUCIA DI LAMMERMOOR(1835初演)全3幕
作曲:ドニゼッティ G.Donizetti(1797-1848)
原作:スコットの小説「ランマムーアの花嫁」
台本:カンマラーノ
川北祥子(stravinsky ensemble)
東京芸術大学大学院修了、「トムとジェリー」とB級映画とパンダを愛するピアノ奏者。
「トムとジェリー」からはクラシック音楽の神髄を、
B級映画からはお金がなくても面白いコトに挑戦する心意気を学ぶ。
パンダからは…?
わかりやすく楽しく紹介するコラムです。
この映画もう一回見直してみよう、オペラっておもしろいんだね、って
少しでも思っていただけると嬉しいです。
映画を見たらオペラも見ようよ
第6回 宇宙人オペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』
~2214年、地球のオペラ界は宇宙人に征服される!?
スペシャル対談その1
今回は宇宙人のオペラ歌手が『ルチア』を歌う『フィフス・エレメント』ということで、SFを語らせるならこの人、「SF魂100まで」(※mao2netに連載されていたSF映画コラム)のゴシマカズヒロ氏とおしゃべりしてみようと思います。普段のように脱線しまくりの会話になると思うけど許してね。
映画を見たらオペラも見ようよ(川北祥子):ゴシマさんはクラシック愛好家っていうわけじゃなさそうなのにやたらといろんな曲に詳しいけど、映画に出てくるクラシックやオペラってどう?
SF魂100まで(ゴシマカズヒロ):映画の中でクラシックが流れて、オレとかそれがなんて曲かなんてわかんないんだけど、すごい印象的なシーンってあるじゃん。別に、感動的に盛り上がるところじゃなくて、ああ、これが映画の醍醐味、って感じ。曲名が出てくるのは、『グッドモーニング・バビロン』の『泥棒カササギ』、『帝都物語』の『こうもり』。
オペラ:私はわかっちゃう事のほうが多いからつい曲とリンクさせようと思いながら見ちゃうんだけど、そういうの関係なくて凄いって思ったのは『ショーシャンクの空に』の『フィガロの結婚』。あとオペラじゃないけど『タンポポ』の『レ・プレリュード』は絶品だと思う。
SF魂:『タンポポ』はすごいねえ。
オペラ:ラーメンが完成するところはゾクゾクしたよねえ。クラシックはつまんないっていう人たくさんいるけど、そういう人達もけっこう知らないうちにクラシック(やオーケストラ)に感動したり、かっこいいなって思ってること多いと思うんだ。 特に映画では。
SF魂:『がんばれベアーズ』の『カルメン』もピッタリフィット。映画と一体化して、テーマ曲として確立してるのって気持ちいいよね。でも、あとから『カルメン』を単独で聞いても、『がんばれベアーズ』を思い出しちゃうのが嬉しいやら悲しいやら。
オペラ:『地獄の黙示録』の『ワルキューレ』なんかも、もう聴くだけでヘリ飛んじゃうしね。ショパンの『別れの曲』みたいに、使われた映画の題名が通称になっちゃった曲もあるし。そういうのは別格として、どうでもいい意外なところでクラシックが流れるのも嬉しい。例えばトム・ハンクスの『マネー・ピット』で、家の工事やってる大工さんがラジオか何かで『ルチア』の婚礼の6重唱を聴いてたりしてね、うわ~こんな映画に『ルチア』だあってウケて、それだけのシーンでも後で思えば大工さんがイタリア人だから全然進まないってことかなって考えたりして結局わからないんだけど。
SF魂:『グッドモーニング・バビロン』のイタリア人は働き者だったぞ(笑)
オペラ:そうでしたか。イタリアのみなさんごめんなさい。イタリアといえば『流されて』は「さすがオペラの国」って実感した。『椿姫』の一部が流れるんだけど、ビックリしたとこで「ジャジャジャジャ~ン」って『運命』が鳴り響くような古典的ギャグっていう感じの使い方。これが全国民に通じちゃうんだろうなあ。ギャグ系ではテレビの『アリー・マクビール』のベッドシーンで『カヴァレリア・ルスティカーナ』が流れてしかもスローモーションだったのがすごく浮いて笑えたな。「これは非日常のまるで映画みたいにステキなことなのよ」って無理矢理思い込もうとしてる感じがよかった。逆に『アメリカンジゴロ』の最後のモーツァルトは真実の愛って言いたかったんだろうけどギャグみたいでグッタリ。
SF魂:アメリカ映画のラブシーンで、いちゃいちゃしだすとソフトフォーカスになって、変な歌がBGMになって、盛り上がってくるとスローになって、肝心のとこはストップモーション。暗転して、次のカットはもう朝だ。アメリカ人は後始末もしないで寝てしまう。大陸に暮らす人はおおらかだ。(余談)
オペラ:(暖炉も必須。余談。)いや、でも何たって格段に凄いのは『トム&ジェリー』でしょう。すべての感情や動きに音がぴったりで、もう音楽の神髄ここにありって感じ。音楽を学ぶならまず『トム&ジェリー』。他にはなんにもいらないと思う。
SF魂:さっちゃんから聞いてなるほどと思ったんだけど、『トムとジェリー』の効果音がオーケストラの楽器だってのにはビックリしたなあ。
オペラ:それに、昔のことだからナマでぶっ通しで録音したのかなあ、なんて考えるとロマンを感じるよね。
SF魂:今、どれだけの映画で行われてるか知らないけど、サウンドトラックの録音で、指揮者がスクリーンを見ながら指揮してっていうのあるじゃん、あれ格好いいよね。演奏者はみんなスクリーンに背中向けてるの。トムとジェリーの細かい動きに合わせて、指揮者が各楽器にちょこまか指揮してる様子を想像すると楽しいなあ。指揮者の動き自体がトムとジェリーみたい。(実際のトムとジェリーの効果音の録音は、楽器奏者一人一人が画面を見ながらやってたと思います。)
…やはり脱線。 というわけで『フィフスエレメント』については次回!
◇『フィフス・エレメント』THE FIFTH ELEMENT(1997仏/米)
監督:リュック・ベッソン
音楽:エリック・セラ
出演:ブルース・ウィリス/ゲイリー・オールドマン
◆『ランメルモールのルチア』LUCIA DI LAMMERMOOR(1835初演)全3幕
作曲:ドニゼッティ G.Donizetti(1797-1848)
原作:スコットの小説「ランマムーアの花嫁」
台本:カンマラーノ

東京芸術大学大学院修了、「トムとジェリー」とB級映画とパンダを愛するピアノ奏者。
「トムとジェリー」からはクラシック音楽の神髄を、
B級映画からはお金がなくても面白いコトに挑戦する心意気を学ぶ。
パンダからは…?
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